「建築家は高い、お高くとまっていて使いにくいと思われがちですよね。だけど大手のハウスメーカーの商品には、その会社の維持費や住宅展示場への投資、営業マンたちの給与、莫大な宣伝費などが乗っかっているわけですからけっして安いとはいえません。むしろ建築家と工務店を組み合わせたチームの方が安くできるはずなんです。でも、一般の人が建築家と出会う場というものがない。そこでそんな場というか、橋渡しができないかと考えたのが、このネットを利用した設計コンペシステムなんですね」
そのシステムというのは比較的単純なもの。本気で家を建てたいという明確な意志を持って、指定された条件を同社に送り、スタッフと細かい条件や予算の打ち合わせをして1カ月待つというもの。すると、同社に参加している有志の建築家たちから設計プランが集まってくる。それを3案ぐらいにしぼって直接建築家との折衝が始まるというわけです。もちろん、ここでウィークエンドホームズの役割が終わるわけではなく、家が完成する最後の段階までつき合ってくれる。この「最後まで」という面倒見のよさが同社の特徴だそうです。
同社の意図に賛同し、みずからもコンペに参加している建築家の遠藤克彦さんは言います。
「じつは仕事がなくて困っている才能ある建築家はたくさんいるんです。そんな眠った才能をデビューさせるチャンスという意味でも、コンペに参加することでまだ未熟な若手建築家たちがお金の管理を学んだり、プレゼンテーションの技術を磨いたりするという意味でも、意義ある試みだと思います」
事実、最初は適当に図面を書いて送ってきていた参加者たちも、CGを駆使したすぐれた設計案が選ばれたりするのを見て、どんどん勉強していいものを出すようになってきたとか…。
「多くの人たちは、入ってすぐが玄関と2階への階段、右手にリビング、その奥がキッチン、階段の下がバス・トイレ、2階が寝室と子ども部屋という既成の間取りにとらわれてしまってるところがある。私たちのところに集まった設計案を見れば、いかに家というものがイメージの広がりを持つものかがわかるはずです。こういうシステムの登場で日本の住宅シーンは一変すると私は思いますよ」(大場さん)
建て主にとって、こんなに幸福なシステムはないと思うのは私だけでしょうか?
ウィークエンドホームズでは、いま東京の練馬で建築家が集まってある区画に“アートビレッジ”をつくる計画も持ち上がっていると言います。複数の建築家たちが腕を競ってつくる“村”は、そのまま新しい形態の住宅展示場となるかもしれませんね。