と予感させる都心型SOHO
西森陸雄さんが新しく建てられた恵比寿の都心型SOHOを見学してきました。大通りを一歩入った細い路地に面して建つこの物件は、いそがしく活躍するマーケッターの建て主さんが「エイヤッ」で建ててしまった仕事場兼仮住居です。敷地面積約70平米という狭さのうえ、かなりいびつな地形なため、かえってその建築物としてのユニークさが引き立ちました。
つくりとしては、1Fが貸し会議室、2Fがオフィス、3Fが生活空間となっています。下から順に見ていきましょう。1Fの貸し会議室は、一見してふつうの会社などにある地味めで機能的なそれではなく、丸いガラスのテーブルが中央にあり、壁面の一部が大きなミラー張りという、ちょっと変わったもの。それもそのはず、建て主さんはマーケッターという職業柄、女子高生などを集めてリサーチをしたりすることが多いそうなのですが、ここはそのための秘密基地なのです。つまり、ここに集まった女子高生たちが試作品を見て自由にディスカッションしたり、最近気になる流行もののトレンドについてヒントになるようなブレストをやったりするためにつくられた特別な会議室というわけ。だから壁全体に貼られたミラーはじつはマジックミラーで、その奥には暗い小部屋があって、そこには企業の商品開発者や広告代理店のクリエイターなどが陣取って消費者の生の肉声を聞けるという仕組みになっているのです。たしかに、女子高生をはじめとする若い女性に集まってもらうなら、都心の大きな会社の会議室に呼ぶより、渋谷から一駅の恵比寿から徒歩圏内のここなら数倍便利。小さくてお洒落だし、奥にはウッドデッキの坪庭などもあって、ほっと一息つきたくなるような空間に仕上がっています。
2Fはほんとに機能的なだけのシンプルなSOHO、3Fはこれまた白一色のシンプルなリビングとベッドルームとバスルームになっています。大きな開口部からは陽光がさんさんと差し込み、ここはここでちょっぴり贅沢な都心の隠れ家となっています。建築を担当した西森陸雄さんは言います。
「建て主さんは、雑誌で僕のことを知ってダイレクトに依頼してきてくれました。聞けば建物としての機能もコンセプトも一風変わっているし、地形はいびつだし、予算はきびしいし、これはおもしろいものになるなと直感しました。1Fの会議室や階段室をガラス張りにしたので、夜になるとそこから洩れる照明がとても綺麗ですよ」
聞けば建て主さんは神奈川にちゃんとした住居があって、ここはウィークディ用の仕事場兼住居だとか。こんな素敵な空間で思いっきり仕事をして、夜は恵比寿や広尾のナイトライフを楽しむ。なんともウラヤマシイ生活ではありませんか。時代の寵児マーケッターっていい仕事なんですねえ。