建築家・設計事務所/建築家住宅の実例

家具もスティショナリーも建築の一部という山中祐一郎 コンペか(2ページ目)

設計コンペで優勝し、はじめての家を建てるという29歳の建築家が誕生。山中祐一郎さんは、アルミのコンセントカバーやスポンジの椅子などのプロダクトデザインで有名な異色のアーキテクトです。

執筆者:坂本 徹也

山中裕一郎さん

コスト面はどうでしょう。
この家は単純に三角形の家で屋根も片流れなので仕上げの面(表面積)が少なくローコスト化に適した形状だといえますが、もうひとつ重要なのが断熱の方法だと言います。山中さんは、壁の中の胴縁の方向を縦にするという手法で暖められた空気を屋根に逃がす道をつくり、屋根に空気抜きをつくってつねに空気が抜けていくようにするそうです。
「これで外の空気を中に入れないようにできる。こうやって断熱をしっかりしておきながら、通風をよくすることでエアコンレスになればいいなと思ってるんですね。冬でも外気が入ってこない、外へ熱が漏れない仕組みになってますから、ふつうの暖房で効果は十分だと思います」(山中さん)
また、大工仕事が得意な山中さんは、自らの手で据え付けの家具づくりや塗装や外構工事をやってしまうつもりだとか。山中さんは、設計・施工もまったくのワンマンでこなしてマンションのリフォームもやってしまうような人なのです。ご自身の事務所の家具もみんな手づくりだとか。
「家具工事は、お施主さんにも協力してもらって全部自分でやろうと思ってます。職人さんの人数を減らすことが直接コストダウンにつながりますので。どのみち監理で現場にはしょっちゅう行きますから、その場でつくるつもりです。材料は一番慣れてるシナ材を使ってね」(山中さん)




じつは山中祐一郎は建築以外にもいろんな分野で活躍中の人でした。 彼は日本の大学を卒業後イギリスに留学し、A.A.School of Architectureに学んだことがあるのですが、そのときに「建築=建物をつくることではない」という理念と巡り会ったのだそうです。 「イギリスでは、日常生活の中にきっかけとかコンセプトになるものがあったときに、そこからいかにそれを発展させていって、最終的な結論に持っていくかという“過程”の部分を重視するんです。だから最終的にそれが建物にならないケースもあるんですね。建物としての解決ではなく、それが家具になる場合もあるし、もっと小さなスティショナリーのようなものになってもいい。あるいは極端に言えばものを書くという解決もある。それをひっくるめて全部アーキテクチャーと呼んでるんです。ようするにプロセスの構築こそがアーキテクチャーだと。だから日本語だと建築じゃなくて“構築”の方が近い。だとすると最終的にここに建築物を建てなくても建築行為は成り立つということが言えるんです。僕自身、それですごく楽になりました」(山中さん)


彼はいま、アルミ製のコンセントカバーや、工業用スポンジを使った椅子、同じスポンジを使った不思議な照明器具、アルミの圧延版でつくった折り紙のような家具などのほか、ファッションデザイナーや写真家と組んだコラボレーションアートの分野にも挑戦しています。 これからはこうしたプロダクトデザインと建築とのジャンルの壁を飛び越えた建築家が活躍する時代なのでしょうね。「建て主さんと建築家とのコラボレーションとしての家づくりをめざしたい」と言う山中さんの活躍が楽しみです。
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