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宮部みゆき『ソロモンの偽証』第I部

『ソロモンの偽証』の第I部「事件」は、クリスマスの朝に発見された少年の死がさまざまな波紋を呼ぶ、宮部みゆきの5年ぶりの現代ミステリーです。

石井 千湖

執筆者:石井 千湖

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宮部みゆき『ソロモンの偽証』第I部「事件」

宮部みゆき作『ソロモンの偽証』の刊行が始まりました。全三部作で公式サイトによれば学校を舞台にした法廷ミステリーになるようです。

1990年12月25日、東京下町にある城東第三中学校で死体が発見された、というのが事件の発端。亡くなったのは2年A組の生徒、柏木卓也。自殺で決着すると思われましたが、殺人の目撃者を名乗る告発状が送られてきて――。卓也の死はさまざまな悪意の起爆剤となり、学校を混乱の渦に巻き込んでいきます。

一人ひとりに存在感がある

関係者の一人ひとりが丁寧に描写されているところが本書の大きな魅力です。例えば、刑事の娘で学級委員の藤野涼子。聡明な彼女は誰とも親しくなかった卓也の死に涙する同級生や、告発状に翻弄される大人たちを冷静に観察します。そして、自分も含め、非常事態にあらわになる人間の醜悪な一面を発見する。ほかの登場人物も札つきの不良少年とか、太っているけど気が優しい子とか、造形は一見類型的なのですが、細かいエピソードに魂が宿っているのです。

誠実な校長先生がどんどん窮地に追い込まれ、新たな死者が出るなど、読んでいてやりきれない部分も多い。それだけに、ふだんは目立たない子が、苦しんでいる友達を救うために勇気を出して行動する場面が光ります。

第I部の最後で、涼子は卓也の死の真相をつきとめると宣言。いったい何をするつもりなのか? ちらっと現れた「対岸を見てきたような目」をした少年のことも気になる! 9月21日(金)発売の第II部が楽しみです。

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