健康に育ち、おいしい肉となるための配合飼料にこだわる
牛の月齢に応じて、また季節等も配慮し、しっかりした骨格づくり、健康な体をつくるために、オリジナル飼料を配合しています。
その知識や人脈で高橋さんをサポートし、お二人で肉のおいしさを決める配合飼料を研究し、確立されました。
粗飼料は、稲わらを中心に乾草や穀類をブレンドし、牛の成長や反芻動物である牛の性質を活かし、しっかりした骨格づくりができるように配慮されています。
高橋さんによると、例えば子牛を購入してつれて帰った後の約2週間が、最初の関門なのだそうです。というのは、牛の環境がかわるとストレスから餌の食いつきも悪くなるのです。初めは稲わら中心の栄養成分が薄めのものから始めて、徐々に食べられる量や稲わらと乾草の割合を変えていき、元気をつけてあげるのがポイントだとか。
またとうもろこしや穀類のような濃厚な飼料の比率を多く与えすぎると、食物繊維が足りず、センマイという胃で反芻できなくなってしまいます。ですから、健康な体と骨格を作る飼料が、成長段階に応じて必要となります。
さらに肉として食べるには、美味しくなければなりません。牛肉のおいしさは、よく「さし」という言葉が使われるように、脂肪交雑を評価されていました。しかし現在は、筋肉脂肪の融点やオレイン酸などの脂肪酸の割合などに新たな評価方法が見直されています。
筋肉中の繊維が細かくてうま味成分が多く含まれる雌にこだわり、またおいしさを追求し、科学的にも裏付けされた飼料を使って育てることで、「なにわ黒牛」は脂がしつこくなく、口溶けがよいのが特長です。
*私も、後日「なにわ黒牛」をいただいてみました。そのおいしさは、ブログでご紹介しました。
できるだけ自然な有り様で牛を育てる
高橋牧場の牛は、のんびり横たわっている姿が見られます。
高橋牧場の牛は、確かにおだやかな様子でした。「出荷間際の大きく成長した牛は、特にのんびり横たわっている方がいいんや」と、我が子を見るように目を細めて説明してくださる高橋さん。これまでのお話で、私たちが想像する以上に、動物はとてもナイーブで、精神的なことも含めて世話をしていかねばならないことが理解できました。
栄養を過剰に与えて短期間で大きく育てた牛の肉は硬くなりがちですが、高橋牧場では、肉牛になるまでの生後月齢が約30ヶ月までじっくり育てることで筋肉繊維が軟らかく、ヒレやロースはもちろん、もも肉なども甘くおいしいと好評を得ています。肥育期間が長くなると、それだけ餌代などの経費もかかるわけですが、健康に、自然な形で育てることが、おいしい肉になるというポリシーを貫いておられます。
ついついご馳走としては、牛肉のヒレやロースなど、特定の部分ばかりを買い求めてしまいがちですが、まるごと命をいただくには、いろいろなお肉の部位をおいしくいただくように、消費者である私も工夫しなければ、と思いました。