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人の環で育て届ける「なにわ黒牛」

私たちは、普段牛肉を買う時に、パック詰めにされたものしか見ることはありません。しかしもとは牛という命をいただいています。国産牛はどのように育てられているのでしょうか。大阪特産の黒毛和牛「なにわ黒牛」を取材しました。

南 恵子

執筆者:南 恵子

NR・サプリメントアドバイザー / 食と健康ガイド

大阪府内産の黒毛和牛「なにわ黒牛」

高橋牧場,阪南市,大阪市近郊

大阪市近郊、和歌山県にも近い阪南市にある高橋牧場は、緑に囲まれています。

日本の畜産業と言えば、北海道や九州、東北などが中心ですが、都会である大阪の近郊で、「なにわ黒牛」という和牛を肥育する牧場があると聞き、牧場を訪ねました。

大阪府の南西部に位置する阪南市は、市内から車で約1時間。和泉山脈に囲まれた緑豊かな山間地域に、高橋牧場があります。

『なにわ黒牛』は、黒毛和種の雌で、子牛登記書(血統証明書)を有し、大阪府内で肥育生産され、枝肉成績が3等級以上のものと定義され、平成24年4月には大阪府内の特産品である「大阪産(もん)」に認定されました。

この『なにわ黒牛』を肥育しているのが高橋牧場主である高橋正一さん、流通・管理を担当するのが株式会社Specail Food.J 代表取締役の松田武昭さんです。

新規参入から苦難を超えて

なにわ黒牛,高橋牧場,高橋正一,松田武昭

「なに和黒牛」の生産者、高橋牧場の高橋正一さん(写真左)と、流通・管理担当の株式会社Special Food.J 代表取締役 松田武昭さん(右)。

高橋さんは、家業として代々牧場を経営されていたのかと思い込んでいましたが、実は新規参入され昭和50年に肉牛わずか10頭から肥育を開始されました。乳牛+交雑牛+和牛の混合で、はじめは肥育技術がわからず、知人からのノウハウを学びながら手さぐり状態だったとか。

少しずつ牛の種類を変え、頭数も増やしていきましたが、平成3年に輸入牛の自由化が始まり、すべて和牛に切り替えて輸入牛に対抗できる肉づくりを目指されました。また平成13年に発生したBSE(牛海面脳状症)をきっかけに、家畜市場で生産履歴のしっかりした雌子牛を、岡山県の家畜市場でトップクラスの血統のものを購入されています。

ところが平成14年に、高橋さんは、脳梗塞で倒れて入院し、その翌年にも再入院したことから廃業を考え始めましたが、畜産業界で交流の深い松田さんが高橋さんに、「これまで牛飼いとして精一杯頑張ってきた中、この状態で撤退したら夢半ばで悔いが残る。健康に留意し無理しなければ断続でき、必ず目標を達成できる。今後は生産から販売まで可能な限り手伝うから」と励まされたそうです。

その縁が、「なにわ黒牛」の誕生につながりました。今では雌170頭を肥育しています。

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