中国ネット市場は世界最大のネット市場
中国ネット検索の超新星、奇虎360(QIHU)
インターネット企業が稼ぐ方法は大きく分けて2種あります。いずれにしても優れた「無料のサービス」を提供し、ネット上に多くの人が集まることで収益の機会を得ることは鉄則です。収益タイプの一つは広告収入であり、この分野では無料の検索エンジンを提供してシェア8割を持つバイドゥ(米ナスダック上場:BIDU)が圧倒的です。もう一つはオンラインゲームで課金することです。こちらの方法ではQQというインスタントメッセンジャーサービスを無料で提供するテンセント(香港上場:00700)が圧倒的な集客力(8億に迫る登録者)により、有料のゲームサイトへ誘導し、ゲーム収入ナンバーワンとなっています。バイドゥの時価総額は389億米ドル、テンセントは573億米ドルです。時価総額1兆円を超える中国ネット企業はこれら2社のみであり、後の企業は1/10以下のサイズでしかなく、2社の独走状態です。
中国ネット検索の超新星、奇虎360(QIHU)
中国のネット企業は広告とゲームのこれら異なる2社で決まりかと思われましたが、ここに来てQihoo 360 Technology(奇虎360科技、米ナスダック上場:QIHU)という、まだ時価総額27億ドルのネット企業が、巨人2社が牛耳る市場に風穴を開けるべく、急浮上してきました。中国ネット業界に風穴を開けるかもしれない企業としては時価総額37億ドルで中国版ツイッター(マイクロブログ)最大手のシーナ(米ナスダック上場:SINA)にも注目しましたが、もう一社追加したいと思います。奇虎360(チホ)の武器もやはり無料のサービスによる圧倒的な集客力であり、同社が開発したセキュリティーソフトウェアは4億2500万人が使用している国内ナンバーワンのものです。さらに顧客が集うプラットフォームとして、同社独自のブラウザー(ウェブ閲覧ソフト)を無料で提供し、2億7千万人のユーザーを持ちます。このブラウザーのシェアは、これまで圧倒的一位だった、あのマイクロソフトのインターネットエクスプローラーを最近抜き、中国トップとなりました。
さらに最近の同社株を押し上げた要因として、2012年8月16日にso.360.cnという同社独自の検索エンジンを立ち上げ、これを同社のブラウザーの初期設定とした事があります。従来、同社製ブラウザーで何か検索する際の初期設定はグーグル(香港経由)となっていましたが、これが今回外れ、自社独自の検索エンジンが初期設定画面に表れるようになりました。顧客はこれが気にいらなければバイドゥなどの検索エンジンに変更することもできるのですが、サービス開始以来、同社の検索エンジンは広告がなくすっきりとしており、軽くて使いやすいと好評なため、初期設定のまま使用するユーザーが多いようです。これでますますグーグルの中国でのシェアは低下すると思われます。元々30%以上あったグーグルのシェアは、2010年に中国政府の検閲問題でグーグルが中国本土から撤退(香港は残す)して以来半減していましたが、さらに減ると見られます。そしてグーグル撤退で8割近いシェアを得ていたバイドゥの株価が、奇虎360の検索サービス開始によって大きく下がっています。