キレのいい変速、気筒休止も気にならず
試乗車はAMGハンドリングパッケージ仕様だった。ノーマルモデルよりも硬めのサスセッティングで、リアにはLSDが入り、コンポジットブレーキ(フロント)、パフォーマンスステアリングなどを追加で装備する“走り屋仕様”である。都内のやや荒れた路面では、さすがに硬めの乗り心地に終始した。ボディはミシリとも言わないし、不快なバタつきもないけれども、フラットでハードなテイストに徹する。感覚的には、ポルシェボクスターに近い。
右足に力をこめずクルージングしはじめると、かすかにたなびくエンジンサウンドがまるでF1マシンのピットレーン走行のように、いきなり“ボーッ”という音に変わった。このとき、ミッションのモード表示はECO4となり、つまりは4気筒で走っている状態だ。
もっとも、その状況でもエンジントルクは230Nmで、小さなロードスターを動かすには十分。そこから4000回転をいっきに超えるような踏み方をすると、瞬時に8気筒へ戻るわけだが、なるほどショックを感じることはほとんどなかった。
実をいうと、8気筒状態で低回転域をキープし、エグゾーストシステムのフラップをあえて開かない程度で走っているときが、最も耳に心地いい音が聞こえてくる。そこからいっきに踏み込んでいくと、フラップが15度、30度、最大50度まで開き、エグゾーストノートに盛大さが増してゆく。音質的には、SLS AMGのような、アメリカ人好みのマッスル系V8ノートだが、最新のAMGサウンドの中では、最も乾いた音だ。NAというのも、その要因か。
ワインディングロードに連れ込んだ。トルコンじゃちょっとツマラナイか、と思いきや、MCTに負けず劣らずキレのいい変速を見せる。コーナリング中はまるで初代SLKクラスのようにクルマが小さく感じられ、しかもその動きはいたって自由自在。多少無理めにオーバースピードでコーナーへ進入しても、トルクベクタリングブレーキのおかげでノーズが面白いように内を向いてくれる。
ホイールベースの短いスポーツカーにも関わらず、リアの踏ん張りが適度な安心感をドライバーに与えてくれていて、コーナー脱出時のフル加速を、精神的に容易にしてくれた。そして、フル加速時の豪快なサウンドたるや……。
この瞬間が、スポーツカー好きにはたまらない。