20~30年前と今では間取りの考え方が違う!
皆さんは、20~30年前の住宅と今の住宅では間取りのあり方が大きく変化していることをご存じでしょうか。例えばそれは階段の位置にみられます。近年積極的に採用されるようになったのは「リビング階段」(1階にある場合)。これはリビング内部に階段を設けることをいいます。一方、20~30年前の住宅で標準的だったのが、玄関ホールに階段を設置するタイプ。なぜ、現在と過去では階段の配置が異なっているのでしょう。その大きな理由の一つに、リビングに階段を設置することで、家族間でコミュニケーションがとりやすくなることがあげられます。
もう一つのパターン、玄関ホールに階段がある間取りについてまず確認してみましょう。例えば子どもが帰宅した場合、家族がいるスペース、つまりリビングを素通りして自分の部屋に入ってしまうことが多くなります。そうすると、子どもの様子を把握しづらくなります。
逆にリビング階段の間取りの場合、子どもが帰宅すると必ずリビングを通ることになります。子どもと会話をする機会が必然的に増えますから、コミュニケーションがしやすくなるというわけです。これがリビング階段を採用した間取りのメリットです。
ところで、滋賀県大津市で発生したいじめ自殺事件をはじめ、暴力や引きこもりなど子どもの心の問題が改めて社会問題化しています。そうしたことは、学校だけの問題ではなく、家族間のコミュニケーション不足が要因の一つとされています。
子どもの心の問題と住宅の関係とは?
そして、その根本的な原因となるのは住宅ではないか、従来の間取りには問題があったのではないか、と住宅供給者の中にはそう反省する人たちがいます。上記にあげた間取りの工夫は、そうした問題を反省材料として今の住宅づくりに生かそうとするものなのです。さて、リビング階段の提案と同じような発想は、2階(2階建て住宅の場合)にもみられます。つまり、2階のスペースは新築当初、各部屋を仕切らないプランが増えています。例えば子どもが幼い頃は、2階は大きな一つの空間として利用。こうすれば、子どもが何をしているのか、わかりやすくなります。
子どもが中学生になる頃くらいには、独立心を養うことも大切になりますから、その時点でドアや間仕切り壁を設置して個室化する。さらに進学や就業を機に子どもが巣立ってしまったら、子ども部屋のドアや仕切りを取り払い、広めのスペースを親の趣味の部屋などに活用する…。
新築時に家族構成の変化や子どもの成長、ライフスタイルの変化を考慮した間取りにしておくというのが、よく考えられたプランです。間仕切りが多い住宅だと、子どもが部屋の中で何をしているのかわかりづらくなります。これも過去の住まいづくりの反省を生かした手法といえそうです。
そして、子どもが無事に巣立った後、使われない部屋ができてしまうことになります。せっかく高額な費用を出して家を建築・購入するわけですから、そうした状況になるのは不幸なこと。年月が経ても、使い勝手がいい住宅であることが理想的です。
現在では、新築時にしっかりと配慮しておけば、大きなリフォーム工事をすることなく、安価でドアや仕切りを取り付けたり、外したりできるようになっています。このようなことを「可変性のある間取り」というのですが、この点に配慮が行き届いているかも、ハウスメーカーや提案内容の善し悪しを見分けるカギとなります。
次のページでは、「LDK」の話から間取りについて考え方を深めていきます。