感染症/黄色ブドウ球菌感染症(蜂窩織炎・蜂巣炎)

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の基礎知識(2ページ目)

メチシリン耐性ブドウ球菌感染症は、メチシリンという抗菌薬が無効であるブドウ球菌による感染症です。メチシリン耐性ブドウ球菌をMRSAと書きます。このメチシリン耐性ブドウ球菌について説明します。

清益 功浩

執筆者:清益 功浩

医師 / 家庭の医学ガイド

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌は、入院患者から検出される黄色ブドウ球菌の50~70%で見られます。外来でも10~30%です。 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌が増えてきた理由の1つに、抗菌薬の乱用が言われています。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌は、アメリカ、イギリスで多く、オランダ、北欧で少ないです。

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌は、増殖する力は弱いので、通常の免疫を持っていれば、感染症にならずにすみませんが、免疫不全、免疫力が下がっている高齢者で感染症を起こします。

病院内で感染する場合を、院内感染と言い、主に高齢者に多く発生します。多くの抗菌薬に耐性で、様々な毒素を産生し、様々な臓器に感染症を起こし、難治性です。

一方、医療機関以外での感染する場合、市中感染と言い、主に若年者や子どもに多く発生します。効果のある抗菌薬もあり、毒素を産生しにくく、皮膚感染が多く、治りやすいです。

しかし、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌での感染症は、通常の抗菌薬に効果が無く、一部の抗菌薬しか効果がありません。バンコマイシン、テイコプラニン(タゴシッド)、アルベカシン(ハベカシン)、リネゾリド(ザイボックス)、ダプトマイシン(キュビシン)がこのメチシリン耐性ブドウ球菌に使用されます。これらの抗菌薬の特性を考えて使用します。例えば、ダプトマイシンは肺炎に効果が悪い、バンコマイシンは腎毒性がありますから、病気に応じた抗菌薬が使用されます。

病院での感染を防ぐために、院内感染予防が行われています。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌は接触感染が多いため、手洗いが大切です。肺炎の場合は、飛沫感染もありますので、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌の検出された部位によって、隔離状況が変わってきます。

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌の予防と治療

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手洗いは非常に重要です

抗菌薬が効かない耐性菌を作らないことが大切です。そのためには、まずは、適切な抗菌薬を、適切な量で適切な期間に使用することです。感染経路の多くは、接触感染ですので、手洗いをしっかりとすることです。飛沫感染予防にマスクを使用します。衣服につくブドウ球菌を拡大させないためにガウンをします。

■治療
下記の抗菌薬を使用します。
バンコマイシン
肺炎、肺化膿症・肺膿瘍、膿胸、菌血症、心内膜炎、骨髄炎、関節炎、髄膜炎

テイコプラニン(タゴシッド)
肺炎、肺化膿症・肺膿瘍、膿胸、菌血症、皮膚感染症

アルベカシン(ハベカシン)
肺炎、肺化膿症・肺膿瘍、膿胸、菌血症

リネゾリド(ザイボックス)
肺炎、肺化膿症・肺膿瘍、膿胸、菌血症、皮膚感染症

ダプトマイシン(キュビシン)
菌血症、皮膚感染症、心内膜炎

とはいえ、抗菌薬では治療できない場合、感染した部分を除く外科手術になることもあります。そのため、感染予防が大切です。

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