メチシリン耐性黄色ブドウ球菌
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌は、入院患者から検出される黄色ブドウ球菌の50~70%で見られます。外来でも10~30%です。 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌が増えてきた理由の1つに、抗菌薬の乱用が言われています。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌は、アメリカ、イギリスで多く、オランダ、北欧で少ないです。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌は、増殖する力は弱いので、通常の免疫を持っていれば、感染症にならずにすみませんが、免疫不全、免疫力が下がっている高齢者で感染症を起こします。
病院内で感染する場合を、院内感染と言い、主に高齢者に多く発生します。多くの抗菌薬に耐性で、様々な毒素を産生し、様々な臓器に感染症を起こし、難治性です。
一方、医療機関以外での感染する場合、市中感染と言い、主に若年者や子どもに多く発生します。効果のある抗菌薬もあり、毒素を産生しにくく、皮膚感染が多く、治りやすいです。
しかし、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌での感染症は、通常の抗菌薬に効果が無く、一部の抗菌薬しか効果がありません。バンコマイシン、テイコプラニン(タゴシッド)、アルベカシン(ハベカシン)、リネゾリド(ザイボックス)、ダプトマイシン(キュビシン)がこのメチシリン耐性ブドウ球菌に使用されます。これらの抗菌薬の特性を考えて使用します。例えば、ダプトマイシンは肺炎に効果が悪い、バンコマイシンは腎毒性がありますから、病気に応じた抗菌薬が使用されます。
病院での感染を防ぐために、院内感染予防が行われています。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌は接触感染が多いため、手洗いが大切です。肺炎の場合は、飛沫感染もありますので、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌の検出された部位によって、隔離状況が変わってきます。
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌の予防と治療
手洗いは非常に重要です
■治療
下記の抗菌薬を使用します。
バンコマイシン
肺炎、肺化膿症・肺膿瘍、膿胸、菌血症、心内膜炎、骨髄炎、関節炎、髄膜炎
テイコプラニン(タゴシッド)
肺炎、肺化膿症・肺膿瘍、膿胸、菌血症、皮膚感染症
アルベカシン(ハベカシン)
肺炎、肺化膿症・肺膿瘍、膿胸、菌血症
リネゾリド(ザイボックス)
肺炎、肺化膿症・肺膿瘍、膿胸、菌血症、皮膚感染症
ダプトマイシン(キュビシン)
菌血症、皮膚感染症、心内膜炎
とはいえ、抗菌薬では治療できない場合、感染した部分を除く外科手術になることもあります。そのため、感染予防が大切です。