さらに金利が下がれば…
実は、ここ数年、住宅市場では「買い時」議論が注目されてきました。消費税が増税される可能性もその原因のひとつですが、一番の理由は住宅ローンの金利が下がってきているからでしょう。住宅ローンの金利水準の変遷を見ると、ピーク時と言われる1990年の住宅金融公庫の固定金利は5%台、都市銀行の住宅ローンの変動金利が7~8%前後でした。バブル崩壊後、金利は下がり続け、現在は35年間固定の金利で借りることができる住宅ローン「フラット35」となりました。「フラット35」はここのところ2~3%台前半の金利になっていて、さらに長期優良住宅など条件付きの融資「フラット35S」では、当初の10年間の金利を1%引き下げる優遇措置が受けられます。
住宅ローンの金利が下がると、支払わなければならない総額でどのくらい違うものなのか、正確な数値は住宅ローンのサイトなどによくでているのでそちらを参考にしていただくとして、ある試算では、借り入れを3500万円としたときの「フラット35」金利2.9%での支払い総額と、「フラット35S」当初の金利1.71%、11年目以降2.41%、21年目以降2.71%の場合、支払い総額で500万円以上の差が出るとしています。
つまり、増税前に駆け込むことも大切ではありますが、それ以上に住宅ローンの金利が重要だということ。金利の低い住宅ローンを利用できれば、消費税の増額分はカバーできることになります。
増税後の景気低迷の可能性を考える
今後の住宅ローンの金利について予測するのは難しいところですが、景気低迷がさらに続き、デフレの圧力がいっそう高まれば、金利がさらに下がる可能性が全くないとは言い切れません。また、今回の消費税増税が景気に悪影響を及ぼしたり、デフレをさらに進める可能性もあります。それによって、駆け込み需要が終わった住宅業界の冷え込みも加わって、更なる価格低下や、税制上の優遇措置、現状より有利な条件の住宅ローンが登場するかもしれません。消費税の増税が家計に与える影響はかなり大きなものだと予想されます
このように、消費税増税は、直前が「建て時」「買い時」と思える一方で、増税そのものが購入を見送る要因にもなります。確かに3年後の10%は、住宅購入にとっては大きな金額です。けれども、増税前に家を建てたいばかりに時間的な制約が迫る中で慌てて建築に走ることは、必ずしもよい結果をもたらすとは限りません。
今、まさに家づくりを計画している人は少し急いで増税前に新居が完成するように進める努力をしたほうがいいかもしれません。しかし、全く計画がない人はもちろん、かなり先だと考えていた人が急ぐのはおすすめしません。わが家にとって、現在優先すべきは何なのかを考えたうえで、自分の「建て時」「買い時」を見極めてほしいと思います。