メルセデスらしいライドフィールを優先
立体駐車場問題をクリアすべく、日本市場へ導入されるのは20mmローダウンして車高を1540mmとした仕様である。パッケージによって、16インチから18インチまで3つのタイヤサイズが用意された。いずれもメルセデスとしては初めて、ランフラットタイヤが標準で装備される。試乗車は17インチを履くスポーツだった。
先代よりもアグレッシブな佇まいである。なかなか人の目をひくようで、特にメルセデスに限らず欧州車オーナーの視線をよく感じた。Bクラスなんて今さら珍しくもないだろう、と思うのは新車慣れしたこちらだけというわけで、旧型よりも圧倒的にスポーティな雰囲気のデザインが人の気を引きつけるというわけか。
ごくフツウに、乗り込みを特に意識することなく、座席につく。クロスオーバー車なみにステップアップする感覚のあった先代とは、そこからして違った。着座姿勢は端正な垂直型で、とても座りやすい。それにしても、ダッシュボード周りの質感の高さには目を見張るものがあった。スポーティなデザインはもちろんのこと、レザー調のステッチ入りアルティコ(人工皮革)仕立てが、ことによるとCクラス以上の見栄えを提供してくれているのだ。3スポークのステアリングホイールの触り心地もいい。
新型エンジンのフィーリングには、効率重視がきっちりと現れていた。決して気持ちよくは回らないけれども、低回転域でそれと気付かせずに力をだすタイプだ。縁の下の力持ち系、である。やや薄味な回り方をするのは、ダウンサイジング・エンジンらしいヘルシーさの現れ。
DCTの変速は質感重視だ。VW-アウディのように張り切ってシュパシュパ段換えしよう! なんていう歯切れの良さはない。あくまでもスムースさと滑らかさを重視している。そういう意味では、DCTらしい小気味良さには欠けているとも言えるが、そこはメルセデスらしいライドフィールを優先した、ということだろう。
最もご機嫌なのは高速クルージング
コンパクトクラスでは初のレーダー型衝突警告システム“CPA”を標準化。これは衝突の危険を察知してドライバーに警告を行い、警告後にドライバーのブレーキ操作が十分でないと判断するとアダプティブブレーキアシストにより制動力を補う、というもの
街中の使い込まれたアスファルト路面では、突き上げを直に感じて、どこか収まりきらない不快な印象を時折もった。けれども、流れにのって速度が上がっていくにつれて、フラットで落ち着きのあるライドフィールを取り戻してゆく。ハンドリングは明らかにスポーティさを増しており、手応えは旧型よりもいっそう乗用車然としたものに。
スポーツツアラーというだけあって、Bクラスに乗っていて最もご機嫌だったのは、高速クルージング時だった。流れをいともかんたんにリードするかと思えば、しっかりと安定した走りをみせる。街中での落ち着きのなさがウソのよう。
デイリーユースでも中長距離移動がフツウというヨーロッパ車の流儀というものだが、おそらく、もう少し熟成すれば、街中での乗り心地も落ち着いてくるはず(事実、海外で試乗したときに比べても、若干、良くなっていた気がする)。なんといっても、ほとんど全刷新のフルモデルチェンジだ。さすがのメルセデスも完成度100%とはいかない。高速なんてほとんど使わない、という人は、もう少し待った方がいい。