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都市型住宅について(6) 環境と快適性への配慮

省エネや節電は住宅づくりの大きなテーマの一つです。ただ、都市型住宅の建築においては敷地や建物の狭さの克服が優先され、それらは案外軽視されがちです。今回の記事では都市型住宅について、どのようにすれば環境に優しく快適性を損なわず、かつ省エネや節電が可能になるのか、考えていきます。

田中 直輝

執筆者:田中 直輝

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再三申し上げていることですが、都市型住宅を建築することは大変難しい作業です。敷地条件が厳しく法規制も数多く、建物は小さくなるだからです。そうなると妥協しがちになるのが環境への配慮。これは建物内部の快適性はもちろん、住まい始めてからのエネルギー消費などランニングコストに反映されるので非常に重要な要素なのですが…。省エネや節電が重要視されるような世の中ですので、都市型住宅でも工夫次第で環境への配慮と快適性が追求できることをぜひ知っていただきたいと思います。

通風と採光の工夫が快適な住まいの基本

一般的に、住宅で環境や快適性に配慮するためには、通風と採光に気を配ることが必要になります。住宅内部の風通しを良くすることで、必要以上にエアコンに頼らずに暮らすことができますし、陽の光を住宅内の隅々に行き渡らせることで、不必要に照明を点けずにすみます。

模型

夏場でも快適に過ごせる住宅づくりの基本は、風の入り口と出口のある設計を行うこと。それは都市型住宅でも変わらない(クリックすると拡大します)

また、庇や開口部の位置を工夫することで、適度に日差しをコントロールでき、夏の暑苦しさを避け、涼しさを感じることも可能です。こうした工夫は、我が国では住宅に伝統的に取り入れられており、かつての都市部(江戸時代頃)では「町屋(まちや)」というスタイルが取り入れられてきました。

ですから、現在の都市型住宅もこの町屋をイメージして建築されることが多いようです。しかし昔と今では環境や事情が大きく異なっており、当然ながらかつての町屋スタイルで、現代の暮らしをカバーすることは難しいことになります。

都市型住宅が建てられるのは住宅密集地ですが、そこは住宅がびっしりと建ち並んでいる関係上、緑が少なくなりがちですし、アスファルトの道路で囲まれ、夏にはヒートアイランド現象が起こりやすい場所となります。隣家との距離も近く、例えば隣家のエアコンの室外機から出る熱も夏の暮らしをわずらわしくし感じさせる要因の一つになります。

防犯性やプライバシー確保も重要

開口部

居室の上部に開口部を設けた事例。このような場所にこのようなかたちの窓を設けることで、室内のインテリアのアクセントになり邪魔にもならない(クリックすると拡大します)

つまり、夜中に窓を開けて寝ることも難しい状況なわけです。もっとも、夜中に窓を開けて就寝するという行為自体が、現代の暮らしには適していないのかもしれません。というのは防犯の配慮も都市型住宅のポイントですし、プライバシーの確保の点でも夜中に窓を開けているというのは現代人には考えられないことです。

住宅の内部はもちろん、周辺環境も含め環境と快適性に配慮する住宅の設計手法に「パッシブデザイン」などという考え方があり、近年積極的に住宅に取り入れられるようになっています。が、このような考え方は基本的には郊外型の住宅に向いているものだと思います。

都市型住宅の世界ではパッシブデザインを取り入れようにも様々な問題があり、結局のところ通風や採光に配慮していない、締め切った住宅となってしまうことが多いようです。ですが、こうなるとエアコンなどに頼り切り、エネルギー効率の点でも思わしくない住宅となってしまい、時代のニーズに適さない住宅となってしまいます。

ここまでネガティブなことばかりを書いてきましたが、都市型住宅では環境に優しく快適性も高く、さらにエネルギー効率の良い住宅は不可能というわけでありません。工夫次第では上記のような条件を備えた住宅づくりも可能です。

次のページではその方法についていくつかご紹介します。
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