田舎暮らし/田舎暮らし・スローライフ情報

日本は季節とコラボする…… 六月:風待月

六月は旧暦で水無月。涼暮月、風待月、など風雅な異名を持っています。田舎暮らしの「旬」を教えてくれるオモシロ歳時記「七十二候」が、季節の喜びに誘ってくれます。

堀江 康敬

執筆者:堀江 康敬

田舎暮らしガイド

七十二候。一年を五日ごとに分けることで、自然界の微妙な変化を感じ取れる暦。それぞれの季節にふさわしい名を付けて時候の移り変りを表しています。詩が、動物や植物が、旬の食べ物が、あなたを季節の喜びに誘ってくれます。

麦の穂出る:5月31日~6月5日頃

画像はイメージです

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麦の穂が次第に成長し、野山の草木は花を散らして実を付け始め、陽気がだんだん良くなる時季。麦は大麦、小麦、ライ麦、烏麦などの総称です。麦はご存知、麦芽にしてビールの原料。その他パン、麦味噌、焼酎用、麦飯、麦茶用と大活躍。

子が靴の土ほこり麦の穂が出た(北原白秋)
青麦に沿うて歩けばなつかしき(星野立子)

(あゆ)/六月一日はアユの解禁日。初夏から夏一杯が旬で、初夏は香鮎、脂ののるのが八月、秋の落ち鮎と言われそれぞれに美味。又、魚へんに占うと書いて鮎とも。昔は戦況や、豊作・凶作のを占うの用いられていたとか。

鮎匂い鮎の山河を恋いわたる(川本臥風)
ふるさとはよし夕月と鮎の香と(桂信子)

真子鰈(まこがれい)/日本各地の内湾の砂底に住みつき、特に大分県日出(ひじ)の城下カレイが有名ですね。カレイの中では口が小さいため「くちぼそ」とも呼ばれます。やっぱり刺身か?さっぱりした味で身が厚く歯ごたえがあり、食感は一級品。その他塩焼でも、煮付でも、から揚げでも…… とにかく食らおう。

海中に真清水湧きて魚育つ(高浜虚子)
春市場バケツの中で鰈跳ね(つとむ)

蟷螂生まる:6月6日~10日頃

カマキリのことですね。鎌切り、斧虫、拝み虫とも。英語でもやっぱりprayingmantis(祈り虫)。中国の故事(蟷螂の斧)にちなんだものです。斉の荘公が猟に出たとき、カマキリが前足を振り上げて車に向かって来た…… 自分の力が弱いことも知らず、強い者に反抗する、はかない抵抗の意。
でも、こんな凄いこともやってのける。

雌が雄食うかまきりの影と形(西東三鬼 )
ゆさゆさと風に身を漕ぐ蟷螂かな(野村喜舟)

画像はイメージです

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紫陽花(あじさい)/鬱陶しい梅雨の外出を楽しくさせてくれるのが、この艶やかな花。色がついているのは実は「萼(がく)」で、花はその中の小さな点のような部分なんですね。 花色は土壌に影響を受け、アルカリ性には赤色系、酸性土は青色系となります。ちなみにわが家の庭は酸性。

あぢさゐや仕舞のつかぬ昼の酒(大須賀乙字)
紫陽花や白よりいでし浅みどり(渡辺水巴)

茄子(なす)/初茄子の時季です。縁起のよい夢を順に並べて言う言葉で「一富士二鷹三茄子」というのがありますが、一説に駿河の名物とも言われています。他には天下を取った家康の好物を並べたという説。景色では富士山、趣味は鷹狩り、食べ物は茄子。それを夢に見てあやかろうというわけ。

うれしさよ鬼灯(ほおずき)ほどに初茄子(信徳)
洗い水はじき小ぶりの初茄子(藤田洋子 )

腐草螢となる:6月11日~15日頃

「くされたるくさほたるとなる」と読みます。腐った草が蒸れてその下から蛍が孵化してくることですね。ホタルが生息するにはきれいな水、餌となる巻き貝、産卵に必要な水草やコケ・草などが育つ土壌が必要である。つまり健康的な水と土、空気が重要ってこと。最近、あなたの近所でホタルに出会いましたか?

ゆるやかに着てひとと逢ふ蛍の夜(桂信子)
かたまるや散るや蛍の川の上(夏目漱石)

(か)/鳴いて刺すのは雌だと知ってました? 雄は植物の液を吸うだけ。蚊が1回に吸うことのできる血の量は、ほぼ自分の体重と同じくらい。これは体重が約2倍になり、吸ったあとの蚊は動きが少しにぶくなり…… もう、この辺で止めときましょう。

まねく蛍は手元に寄らず はらう蚊が来て身を攻める(古典都々逸)
叩かれて昼の蚊を吐く木魚哉(夏目漱石)

梅の実黄ばむ:6月16日~20日頃

梅は中国が原産で、日本には鑑賞用として持ち込まれたのが起源とされています。これを加工した日本人がエライ! 梅干し、梅酒、梅びしお、のし梅、梅ジャム、梅ジュース、砂糖漬け、梅酢となる。その上、頭痛のときにこめかみに貼る、物忘れしないためにヘソに貼る(知ってた?)、ご飯が悪くならないように弁当に入れる、とマルチプレーヤーである。

梅の実の子と露の子と生れ合ふ(中川宋淵)
梅が香にのっと日の出る山路かな(芭蕉)

乃東枯る:6月21日~26日頃

「なつかれくさかれる」と読みます。乃東(だいとう)とは漢方薬に用いられる靫(ウツボ)草・空穂草の古名。初夏、茎頂に紫色の花を穂状につけますが、夏至を過ぎると枯れてしまうので夏枯草(なつかれくさ)といわれています。花は観賞用として江戸時代から親しまれていたようです。

野のみちは来し方ばかり靫草(斎藤美規)
靄こめて遠森かくす靫草(富安風生)

画像はイメージです

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翡翠(かわせみ)/「翡翠(ヒスイ)は、中国名で鳥類ヒスイ科のカワセミのこと。「翡」はカワセミの雄、「翠」は雌を指すといわれています。宝石の翡翠は、そのカワセミの美しい色をした石、という意味で名付けられたとか。

翡翠の一直線を見送りぬ(水須ゆき子)
はつきりと翡翠色にとびにけり(中村草田男)

紫蘇(しそ)/刺身のつま、天ぷらなどで知られていますが、実は昔から漢方の原料なんですね。効能は貧血、食欲増進、整腸に。香気爽快で食欲をすすめ、人を蘇らすのでこの名があるという。天日で干せば、ふりかけにもなるらしい。 試してみる?

紫蘇畑はギザギザの風吹きもどす(伊藤和)
雑草に交らじと紫蘇匂ひ立つ(篠田悌二郎)

菖蒲咲く:6月27日~7月1日頃

凛々しいアヤメの開花時季。古名が菖蒲(ショウブ)のため混同されがち。おまけにカキツバタというのがある。ぜ~んぶ別物です。だから花で見分けましょう。カキツバタの垂れ下がった花びらには白い模様が入っているが、ノハナショウブではこれが黄色く、又アヤメは黄色地に紫の網目模様となります。わかった?

あやめ草足に結ばん草履の緒(芭蕉)
あやめふくけふもはなより草の庵(松岡青蘿)

泥鰌(どじょう)/ドジョウ、食べたことがあります?まず、丸ごと香ばしく揚げた「唐揚」は酒の肴にグッド。丸ごと作る「丸柳川鍋」は割いたドジョウとは違う口当たり。そして伝統的な「ドジョウ鍋。ごぼうと豆腐で炊き上げる最強トリオですな。

ちゅっと吸ふ泥鰌がをりて春の水(矢島渚男)
ささがしの牛蒡のそばで皆ごろし(江戸川柳)

次回は、七月:七夜月。お楽しみに!

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