麦の穂出る:5月31日~6月5日頃
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子が靴の土ほこり麦の穂が出た(北原白秋)
青麦に沿うて歩けばなつかしき(星野立子)
鮎(あゆ)/六月一日はアユの解禁日。初夏から夏一杯が旬で、初夏は香鮎、脂ののるのが八月、秋の落ち鮎と言われそれぞれに美味。又、魚へんに占うと書いて鮎とも。昔は戦況や、豊作・凶作のを占うの用いられていたとか。
鮎匂い鮎の山河を恋いわたる(川本臥風)
ふるさとはよし夕月と鮎の香と(桂信子)
真子鰈(まこがれい)/日本各地の内湾の砂底に住みつき、特に大分県日出(ひじ)の城下カレイが有名ですね。カレイの中では口が小さいため「くちぼそ」とも呼ばれます。やっぱり刺身か?さっぱりした味で身が厚く歯ごたえがあり、食感は一級品。その他塩焼でも、煮付でも、から揚げでも…… とにかく食らおう。
海中に真清水湧きて魚育つ(高浜虚子)
春市場バケツの中で鰈跳ね(つとむ)
蟷螂生まる:6月6日~10日頃
カマキリのことですね。鎌切り、斧虫、拝み虫とも。英語でもやっぱりprayingmantis(祈り虫)。中国の故事(蟷螂の斧)にちなんだものです。斉の荘公が猟に出たとき、カマキリが前足を振り上げて車に向かって来た…… 自分の力が弱いことも知らず、強い者に反抗する、はかない抵抗の意。でも、こんな凄いこともやってのける。
雌が雄食うかまきりの影と形(西東三鬼 )
ゆさゆさと風に身を漕ぐ蟷螂かな(野村喜舟)
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あぢさゐや仕舞のつかぬ昼の酒(大須賀乙字)
紫陽花や白よりいでし浅みどり(渡辺水巴)
茄子(なす)/初茄子の時季です。縁起のよい夢を順に並べて言う言葉で「一富士二鷹三茄子」というのがありますが、一説に駿河の名物とも言われています。他には天下を取った家康の好物を並べたという説。景色では富士山、趣味は鷹狩り、食べ物は茄子。それを夢に見てあやかろうというわけ。
うれしさよ鬼灯(ほおずき)ほどに初茄子(信徳)
洗い水はじき小ぶりの初茄子(藤田洋子 )
腐草螢となる:6月11日~15日頃
「くされたるくさほたるとなる」と読みます。腐った草が蒸れてその下から蛍が孵化してくることですね。ホタルが生息するにはきれいな水、餌となる巻き貝、産卵に必要な水草やコケ・草などが育つ土壌が必要である。つまり健康的な水と土、空気が重要ってこと。最近、あなたの近所でホタルに出会いましたか?ゆるやかに着てひとと逢ふ蛍の夜(桂信子)
かたまるや散るや蛍の川の上(夏目漱石)
蚊(か)/鳴いて刺すのは雌だと知ってました? 雄は植物の液を吸うだけ。蚊が1回に吸うことのできる血の量は、ほぼ自分の体重と同じくらい。これは体重が約2倍になり、吸ったあとの蚊は動きが少しにぶくなり…… もう、この辺で止めときましょう。
まねく蛍は手元に寄らず はらう蚊が来て身を攻める(古典都々逸)
叩かれて昼の蚊を吐く木魚哉(夏目漱石)
梅の実黄ばむ:6月16日~20日頃
梅は中国が原産で、日本には鑑賞用として持ち込まれたのが起源とされています。これを加工した日本人がエライ! 梅干し、梅酒、梅びしお、のし梅、梅ジャム、梅ジュース、砂糖漬け、梅酢となる。その上、頭痛のときにこめかみに貼る、物忘れしないためにヘソに貼る(知ってた?)、ご飯が悪くならないように弁当に入れる、とマルチプレーヤーである。梅の実の子と露の子と生れ合ふ(中川宋淵)
梅が香にのっと日の出る山路かな(芭蕉)
乃東枯る:6月21日~26日頃
「なつかれくさかれる」と読みます。乃東(だいとう)とは漢方薬に用いられる靫(ウツボ)草・空穂草の古名。初夏、茎頂に紫色の花を穂状につけますが、夏至を過ぎると枯れてしまうので夏枯草(なつかれくさ)といわれています。花は観賞用として江戸時代から親しまれていたようです。野のみちは来し方ばかり靫草(斎藤美規)
靄こめて遠森かくす靫草(富安風生)
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翡翠の一直線を見送りぬ(水須ゆき子)
はつきりと翡翠色にとびにけり(中村草田男)
紫蘇(しそ)/刺身のつま、天ぷらなどで知られていますが、実は昔から漢方の原料なんですね。効能は貧血、食欲増進、整腸に。香気爽快で食欲をすすめ、人を蘇らすのでこの名があるという。天日で干せば、ふりかけにもなるらしい。 試してみる?
紫蘇畑はギザギザの風吹きもどす(伊藤和)
雑草に交らじと紫蘇匂ひ立つ(篠田悌二郎)
菖蒲咲く:6月27日~7月1日頃
凛々しいアヤメの開花時季。古名が菖蒲(ショウブ)のため混同されがち。おまけにカキツバタというのがある。ぜ~んぶ別物です。だから花で見分けましょう。カキツバタの垂れ下がった花びらには白い模様が入っているが、ノハナショウブではこれが黄色く、又アヤメは黄色地に紫の網目模様となります。わかった?あやめ草足に結ばん草履の緒(芭蕉)
あやめふくけふもはなより草の庵(松岡青蘿)
泥鰌(どじょう)/ドジョウ、食べたことがあります?まず、丸ごと香ばしく揚げた「唐揚」は酒の肴にグッド。丸ごと作る「丸柳川鍋」は割いたドジョウとは違う口当たり。そして伝統的な「ドジョウ鍋。ごぼうと豆腐で炊き上げる最強トリオですな。
ちゅっと吸ふ泥鰌がをりて春の水(矢島渚男)
ささがしの牛蒡のそばで皆ごろし(江戸川柳)
次回は、七月:七夜月。お楽しみに!