クーペより圧倒的に優しくて、モダン
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最高出力570ps/最大トルク540Nmを発生する直噴4.5リッターV8エンジンを搭載。7速F1デュアルクラッチトランスミッションを組み合わせ、最高速は320km/h、0-100km/h加速は3.4秒未満とされる
ルーフを開けみれば、背後に棚引くサウンドがダイレクトに届くぶん、勇ましさのボリュウムもずいぶんと上がる。同時に、フェラーリの最新モデルに乗っているんだ! という、心のボルテージもはしゃぐ子供のようにイッキにあがって…。
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オープンでの走行に合わせアクセルのマッピングやマルチリンクサスの減衰力を改良。電子制御ディファレンシャルのE-DiffとトラクションコントロールのF1-Tracが統合制御され、走行時の安定性やコントロール性能を高めている
それにしても、なんという爆音か。走行モードをスポーツにすると、ただただ爆音をそこらじゅうに響かせるためだけのマシンに乗っているような気分だ。それこそ、街中が“なんだなんだ”と爆音を発する主を探して、振り向く。近所迷惑も甚だしいが、爆音マニアにはたまらないはず。
真骨頂は、もちろんハードドライビングだが、ここでもオープンの方がより自然に振る舞ってくれると思った。クローズドにすると、たとえばレーンチェンジをするような場面での動きに若干、トリッキーさが見え隠れしてしまう。ところどころ、トートツな挙動が出てくるのだ。オープン走行なら、適度なしなりも加わって、アクセルペダルを踏み込む右足も、常に自信いっぱいでいられる。
それにしても、やっぱり速い。そして、扱いやすい。だから、もっともっとという気分になる。そうなればなるほど、いったいどこでこのクルマのパフォーマンスを全て引き出せばいいというのか、という矛盾が頭をよぎるが、そんなことを考えることじたい、野暮ってものだ。“凄い性能”を頭にインプットしておき、爆音をとどろかせて、街中をゆっくり走るのも楽しいぜ、なんて思える非合理的な感性の持ち主にしか、しょせん、スーパーカーなんて乗れないものなのだから。