もっとも大事な「雇用統計」
外国為替市場で取引されている通貨のなかで、最も大きな部分を占めているのは、基軸通貨である米ドルです。したがって、さまざまな通貨が存在しているのは事実ですが、結局のところ為替レートの動きを左右するのは、米国の通貨・金融政策、および景気動向ということになります。
特に外国為替市場の参加者が大挙して参加し、お祭り騒ぎのようになるのが「雇用統計」の発表時です。毎月第一金曜日、サマータイム期間中だと午後9時半、それ以外だと午後10時半に発表されます。米国経済は、GDP全体のうち8割が個人消費で占められているため、雇用情勢が景気全般に大きな影響を及ぼします。そのため、雇用統計が注目を集めるのです。
注目点は「非農業部門雇用者数」で、この数字が市場の事前予想に対して上回ったのか、それとも割り込んだのかということで、為替レートが大きく動きます。
実際の数字が、事前予想に対して上回るとドル買い、下回るとドル売りになり、その動きは、両者の数値のかい離が大きくなるほど顕著になります。
ただし、雇用統計を材料にして為替レートが大きく動くのは、ほんの一瞬の話です。その結果をきっかけにしてトレンドが形成されていくこともありますが、大きく動くのは、指標発表時から数分程度ですので、個人にはなかなか乗りにくいところがあります。
したがって、指標発表直後はとりあえず様子を見て、その後、マーケットが落ち着いてから、トレンドを見てポジションを取るようにした方が無難です。
注目材料は常に変わる
外国為替市場で注目される経済指標は、その時々によって移り変わっていきます。たとえば今は、確かに雇用統計が注目されていますが、かつては米国の貿易収支が市場の注目を集めていました。つまり、米国の貿易赤字が増えるとドル売り、貿易赤字が縮小するとドル買いという構図が出来上がっていたのです。また、それに伴って、日本の貿易収支も注目されていました。このように、経済指標はその時々の世界経済の注目材料を反映し、常に移り変わっていきます。
ちなみに日本の経済指標ですが、かつてバブル経済が華やかだった時期こそ、日本の経済指標が市場参加者の間で注目されていましたが、今は日本の経済指標発表時に為替レートが大きく動くというケースは、ほとんど見られません。それだけ、日本経済に対する関心度合いが薄れているということです。
なお、米国雇用統計以外では、ユーロの動向に影響を及ぼす、ドイツのIFO景況感指数などが、市場参加者の注目を集める傾向が見られます。