なぜレディースクリニック京野から移籍をしたのかを教えてください。

先ほど、お話しした通り、レディースクリニック京野での経験を基に自分には基礎研究が足りないという結論にたっし、クリニックを辞し、東北大学の大学院の門を叩きました。3年間、必死に勉強し、自分に足りないものを埋める日々でした。

そんな中、大学院が終わったらどうするの? と最初に聞いてくれたのが浅田先生でした。大学院が終わったらうちに来ないかと言って頂いたのがきっかけです。

名古屋駅前クリニックの培養室を作るにあたり、気を配ったことはどんなことですか?

培養室については6つのポイントがあります。 

第1のポイントは「見える化」です。
胚培養士の仕事をしながらずっと疑問に思っていたことがありました。それは培養室が外から見えないので患者さんにとっても存在感がないことでした。患者は見えない事・者への不安があり、その不安を取り除くには単純に見えるようにすることが必須だと考えました。

実際、浅田レディースクリニック勝川のラボでは培養室の表記もされていませんでした。

それではいけないのではないか、人の目に触れるべきではないのかという思いから名古屋駅前クリニックではガラス張りで中が見える培養室を作りました。業務中を見せる事を前提としたコンセプトとして日本で初めてだと思っております。
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培養室の様子です。外から見ることが出来ます。


培養室の認知度は勝川の時は23%でしたが、今では98%にまで上昇しています。

第2のポイントは「全症例完全個別培養」です。1人ずつ個別に培養することの出来るデンマーク製の培養器12台(1台6区画)を導入し、これは世界で最も多い台数を持つクリニックとなりました。

現在でも採卵から胚移植、そして胚移植後の観察まで全て完全個別培養できる施設は世界に当院(勝川・名古屋共に)だけです。

第3のポイントは「層流方式」です。
培養室の空気環境を整えるために天井の12面の吹き出し口から床の12面の吸い込み口まで縦に空気が流れる層流方式を臨床ラボでは世界で初めて導入しました。風が起きず、温度が一定になるというメリットがあります。

第4のポイントは「光」です。
天井の光と顕微鏡の光のライトをLEDにしています。LEDは紫外線と赤外線を出さないので培養環境に優しい光なのです。もちろん顕微授精に使う顕微鏡にもLEDを使っています。日本にはないのでアメリカから取り寄せました。このような光の環境に配慮しているのも世界に当院だけだと自負しております。
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全台個別培養のできる培養器です。


第5のポイントは「モニター出力・録画」です。
顕微授精や体外受精の状況を常にモニターで映し出すことが出来、それはすべて録画されているということです。

大事な卵子がどのように扱われているかを録画し、残しているということです。このポイントとして見える化の一つでもあり培養室内の特に顕微鏡下の密室性をなくすために全てモニター出力し録画可能な状態にしています。安全性と安定性の確保のための改善ということですね。

第6のポイントは「スタッフ同士の見える化」です。
仕事場はすべてガラス張りにしており、お互いの仕事の状況が目で確認出来るようにしております。そうすることにより、お互いの忙しさやその雰囲気を感じることが出来て、仕事の連携がスムーズに行えることに結びつきます。

なぜ安定した成績をあげられるのかを教えてください。

私は今の胚培養士というのは卵に手をかけすぎているのはないかと思っています。出来るだけ手をかけずに卵管の中の状況に近づけていくことが必要だと考えております。だから卵の観察も最小限度にします。

そして、手順をマニュアル化、システム化し、高いレベルで平均化するようにしています。そして業務は2名体制になっており、すべて確認をとっています。

新人はベテランとOJTを行い、3年間で10年やっている人のレベルまで育成していきます。そのために業務後に再現トレーニングをみっちりと行います。

私が新人時代に言われて本当にショックだった事を今の新人には味わわせないためにトレーニングに重きを置いています。また、新人が入ったから培養室の成績が落ちたということがあってはならないとも考えております。

部下のマネージメント・研修についてお話し頂けますか?

教育研修については浅田レディースクリニックだけを見ていてはいけないと思っております。胚培養士としてだけではなく社会人としてきちんと対応できる人材にしていかないといけません。よって、学会はもとより、他施設との交流、接遇研修など多様な研修を実施するようにしております。