スマートハウス・エコ住宅/スマートハウス・エコ住宅の基礎知識とトレンド

スマートシティ考(2)~住宅企業の取組み事例(2ページ目)

前回は海外と日本のスマートシティ観の違いについてお話しましたが、ここで日本で行われているスマートシティ像をイメージしていただきやすいよう、今回は、日本でもいくつか先行して始まっている住宅メーカー等のスマートハウス事例をご紹介します。

河名 紀子

執筆者:河名 紀子

家づくりトレンド情報ガイド


設備以前に快適に暮らせる家と街

街並み

スウェーデンハウスのスマートシティ街並み。スマートシティの定義は企業によって異なることもあるので質問するなどして消費者側も理解しておこうマートシティについて理解しておこう

スウェーデンハウスは今年4月、スマートシティ「スウェディッシュガーデン印西牧の原」(千葉)の現地見学会を行いました。同社の考えるスマートハウスとして、完成した分譲住宅の住宅性能とエネルギー使用量のシミュレーションデータが公表され、併せてその集合体である同社のスマートシティの考え方が発表されました。

「スウェデッシュガーデン印西牧の原」が位置するのは、UR都市機構が北総線印西牧の原駅(千葉県)北エリアで開発しているニュータウン内。「WONDER SREEN PROJECTまちづくりかいぎしつ」を街区コンセプトに、子育てと環境に配慮した理想的な街づくりが複数の住宅会社とともに展開されています。

実演

引渡し全棟で行っている高性能保証表示システムについて実演を交えながら説明する小島常務

スウェーデンハウスは30年前の創業当初から、寒さの厳しいスウェーデンの気候にも対応できる高気密高断熱住宅を提供。

その気密断熱性能は30年前と変わらないということからも、いかにいち早く世界レベルの環境性能を日本で提供してきたかが分かりますが、今回はこうした「30年前から変わらない構造躯体の環境性能」を再訴求するための取り組みといえそうです。

C値

引渡し前には気密測定士により住宅の隙間を表すC値を1邸1邸測定。「数値は小さいほど高性能で、1を上回ることはない」と同社。

つまり、現在の住宅業界ではスマートハウス=「蓄電池」「HEMS」搭載というイメージが印象的ですが、まずは同社の考える本来のスマートハウス像として、蓄電池やHEMSといった最新設備を搭載する前の環境性能をまず数値で「見える化」する狙いが今回の公表には込められているとみられます。

実際、今回のスマートシティに建つ建物も、ほぼ構造躯体性能だけで1990年比CO265%削減率を達成しており、「コストの高い創エネシステムや蓄電池を導入する前に、その住宅に高い断熱気密性能があることを見極めることが大切」と同社。

街並み

子育てと環境に配慮した千葉の開発分譲地にある「スウェデッシュガーデン印西牧の原」

同社では1999年より「全棟高性能保証表示システム」を導入し、設計段階でQ値、引渡し前にC値を提示し、高い性能を実証しそれを顧客に伝える活動を行っています。今回の見学会でもQ・C値測定が報道陣の前で実演されました。

これらの試みは、スマートグリットが完備する時代に向けた途中段階とみることもできますが、現時点で実現可能なことを組み合わせ、エネルギー問題を解決するコミュニティを現実に作り出していこうとする住宅メーカーの果敢な挑戦は注目されます。

こうした動きの支流が集まって大きな流れとなり、消費者や業界全体の意識を喚起し、また新しい社会の方向性をつくっていくことになるかもしれません。今後の展開が待たれます。



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