デビューそうそう「ばか売れです」
昨年の東京モーターショーで日本に登場した、レンジローバー史上で最小&最軽量のコンパクトSUV。2008年に発表されたLRXコンセプトの市販モデルとして、クロスクーペ・デザインを受け継いだ。国内では4WDモデルのみだが、本国などでは2WD(FF)モデルなども用意されている
あらたなスペシャリティカーの誕生だ。言ってみれば、ミニやシトロエンDS、アルファロメオ、アウディTTあたりが本当のライバルじゃないだろうか……。イヴォークは、ありそうでなかった(というか日本車が以前に失敗した)領域にチャレンジし、成功を収めつつある。
某ディーラー社長は、「ばか売れです」とデビューそうそうに宣言。近くのディーラーに電話して聞いてみたら、今からオーダーしても1年は待つ覚悟が必要らしい。
なるほど、あの超ユニークなハンサムルックスに、泣く子も黙るレンジローバーブランド、そして時代性のある小ぶりなサイズとお値段、とくれば、やたら豪華に大きくなって逆に貧乏くさくなってしまった国産コンパクトSUVに代わって、人気を集めるのも当然だ。
レンジローバーという英国王室ご用達のブランド性のみならず、輸入クロスオーバー車という分野全般に対する憧れも、日本の“背高グルマ”ファンには根強くあったのかも知れない。それが、イヴォークで爆発した。
とはいえ、冷静に考えてみれば、ランドローバーブランドで登場してもおかしくなかったモデルだ(事実、コンセプトカーは“LRX”だった)。コイツが本当に、レンジローバーブランドのプレミアム性を高めるorキープしてくれるのかどうかについても、少なからず疑問が沸く。
おそらく。“ランドローバー”としては、レンジローバーブランドの揺るぎなき強さを認識したうえでの、世界戦略価格車であったのだろう。そして、空力ボディや燃費スペシャル仕様の存在(本国)をみれば、ランド&レンジローバーの無骨&オフロードという“時流に反した”ブランドイメージを、ひとまず最新トレンドにのせておきたかったという切羽詰まった事情も、なるほど理解できる。
さらに、(新しいモノ好き、格好重視の)新興市場で期待されるばく大な台数と利益。それはもちろん、将来のビジネス展開、たとえば次期型レンジローバー、への原資稼ぎであるだろう。激戦必死のプレミアムSUVセグメントにおいて、これからも末永く“砂漠のロールスロイス”であり続けるために……。