ラストは衝撃の結末……文句なしの名作「宿命」
私は東野作品をほとんど読んでいるので、その中でおすすめを挙げてみました(もっとたくさんありますが…)。高校時代の初恋の女性と心ならずも別れなければならなかった男は、苦闘の青春を過ごした後、警察官となった。男の前に十年ぶりに現われたのは学生時代のライバルだった男で、奇しくも初恋の女の夫となっていた。刑事と容疑者、幼なじみの二人が宿命の対決を果たすとき、余りにも皮肉で感動的な結末が用意される。
こんな「宿命」のストーリー、設定からして緊迫感、興奮感でいっぱいです。自分のかつての恋人が、自分の最大のライバルである男の妻として再開する……、もちろんライバルにも……一気に読める内容です。
そしてラストは東野圭吾氏らしい衝撃の結末で、文句なしの名作です。映像化もされています。
ただ素晴らしいのは、単なる構成、設定、展開、結末だけではありません。主人公の揺れ動く心情が巧みに描かれていて、そこにどんどん吸い込まれていきます。心情の描写という観点から見ると、この作品は群を抜いていますね。
愛、憎しみ、感動、嫉妬、怒り、喜び、幸福、悲壮……、これでもかというほどの感情が万華鏡のように色を変え、形を変え、脳裏に浮かんできます。そして自分の当初抱いた感情がこんな形となるとは、その結末には鳥肌さえ立ちます。
人の感情とは、自分だけでコントロールできないこと、思い通りには整理できないこと、しかしそれが必ずしも不幸にはつながらないことも多いことを教えてくれている気がします。
人と人との繋がりに決して無駄なものはないのだから、出会う人たちを軽視せず、抱いた感情を大切にし続けることが何か大切なことを結びつくことを、東野圭吾氏は描いてくれています。この作品は犯人探し、謎の解明、最後の大どんでん返しと、どの面をとっても抜きん出ています。
あと、「天使の耳」は短編集としてはかなりおすすめです。トリックや、物語の構成は本当に鳥肌が立ちます。東野圭吾氏の作品をほとんど読んでいる人の中では、「宿命」と「天使の耳」はかなり評価が高いので、ぜひまず読んでみて下さい。
そして下記のサイトでは、東野さんの作品の内容と感想がかなり詳細に書かれているので、とても参考になると思います。
http://keigohigashino-fan.com/