小田原の一夜城は、16世紀に豊臣秀吉が北条氏との戦のために密かに築城し、まるで山中に一夜にして現れたように見せて敵方を驚かせたと伝えられる場所。そんな由緒ある史跡を後ろに控えたこの早川地区には、古くからの柑橘栽培農家が暮らしていました。
しかし、現在多くの農家が、後継者不足など、先行きの見えない将来に悩んでいます。早川の農家も例外ではなく、このままだと農業を廃業しなくてはならないかも・・といった状況もありました。鎧塚シェフは、そんな農家の方々と手を携え、早川ブランドの農産物を「ヨロイヅカ」から発信するお菓子や料理として多くの方に知ってもらい、付加価値を高めていくという事業構想を提案し、一緒に頑張っていきましょう、と説得していかれたそうです。
鎧塚シェフは、素材の生産者とできるだけ近い目線で、共に歩もうとする思いの強い方です。何しろ、遠く離れたエクアドルに、自らがオーナーとなりオーガニックのカカオ農園を持つほどの熱意の持ち主なのです。
そんな鎧塚シェフは、小田原・早川だけのことを考えているのではなく、日本の農業全体の衰退を何とかしたいと思っていらっしゃいます。そのため、日本全国の農家が作った素材を使った商品を考案し、このファームを拠点に広く発信していきたいとお考えなのだそうです。
限定スイーツは、ホールのパウンドケーキで、かぼちゃの種を上にのせ生地もかぼちゃ風味たっぷりの「パウンド・ポティロン」(1700円)。クッキーで、ライ麦粉を使った「農園風サブレ」や「そば粉サブレ」(各550円)など、他にもまだまだあります。これらに使われる素材も、いずれは、ファームで栽培された作物になっていくのでしょうね。
塩味のケーク・サレ「ケーク・オリーブ」(200円/ホール1200円)もお薦めの一つ。オリーブ、ドライトマト、バジルやローズマリー、タイム、マジョラムなどのハーブが使われ、ワインもお好きな鎧塚シェフらしく、お酒にも合いそうな通向けの一品です。
実は既に、オリーブの木も畑に植えられて、順調に成長しています。ファーム生まれのオリーブやハーブ入りのケークが登場する日も遠くなさそうですね。更に鎧塚シェフ曰く、将来はオリーブオイルまで採ることができたら……と、夢は広がっていきます。
これまでのパティスリーにはなかった、独自のコンセプトを持って始められた「一夜城ヨロイヅカ・ファーム」。
生産者の方々とともに、今後も続けられる鎧塚シェフの挑戦に、注目していきたいですね。
<ショップデータ>
「一夜城 Yoroizuka Farm」(いちやじょう ヨロイヅカ・ファーム)
住所:神奈川県小田原市早川1352-110
電話:0465-24-3150
営業時間:パティスリー10時~19時
レストラン:ランチ11時半~L.O. 14時半/ディナー 18時~21時(L.O. 19時)
カフェタイム10時~L.O. 16時 ※ランチタイム除く
マルシェ(産地直売所):10時~17時
定休日 火曜
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