痛み・疼痛/痛みの原因・痛み治療

慢性疼痛治療薬リリカの作用・飲み方・副作用

慢性的な肩こりや腰痛など、神経が障害され長期化した痛みに対応する、代表的な治療薬・リリカ。リリカの作用機序、服用方法、副作用について、麻酔科医が解説します。慢性痛には一般的な痛み止めが効かないこと、リリカは痛い時だけ飲んでも効かないこと、自己判断で中断すると思わぬ副作用が出ることなどをぜひ知っておいてください。

富永 喜代

執筆者:富永 喜代

医師 / 痛みの治療・麻酔ガイド

慢性的な肩こり・腰痛…求められる神経障害性疼痛の治療薬

中高年層の増加とストレス社会。現代を反映する病気として、慢性の肩こりや腰痛に悩む方が増えています。最近では新聞やテレビでも、慢性の肩こりや腰痛の治療方法や治療薬情報が、数多く特集されています。今回は、神経障害性疼痛の治療薬であるプレガバリン(一般名リリカ)をご紹介します。

痛みの種類

腰痛、治療薬、副作用、肩こり、治療方法

痛みには、侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛、心因性疼痛の3種類があります。痛みの種類によって治療薬も異なり、症状に応じていろいろな薬を組み合わせて治療します

「痛み」は3つの種類に分類できます。

■侵害受容性疼痛

刺激や炎症による痛みです。ケガをしたときに感じる痛みで、ケガが治ると痛みもなくなります。

■神経障害性疼痛
ケガや病気が原因となり、障害を受けた神経が興奮し続けた状態です。障害を受けた神経から、痛みを伝達する物質が過剰に放出されることがあります。たとえ痛みの原因や元の病気が治っても、痛みが長期間続きます。少しの刺激でも強い痛みを感じたり、天気の変化や、何もしていないのに痛みを感じることもあります。

■心因性疼痛
心がストレスを受けることで、痛みを感じるようになった状態です。

しかし、長い間痛みを感じていると、痛みも単純ではありません。3種類の痛みが深くからみ合った状態、すなわち混合性疼痛になっています。

腰部脊柱管狭窄症、腰椎椎間板ヘルニア、腰痛、治療薬

侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛がからみ合った痛みが、混合性疼痛です



痛みの種類別治療薬

■侵害受容性疼痛
一般的な消炎鎮痛剤である痛み止めが、第一選択薬です。一般名ロキソニンやセレコックス、ロルカム、ボルタレンなどが代表薬です。

■神経障害性疼痛

第一選択薬は、三環系抗うつ薬、セロトニンとノルアドレナリン再取り込み阻害薬、局所リドカイン、そして、カルシウムチャンネルに作用するリリカ。第二、第三選択薬は、麻薬、抗てんかん薬、NMDA(N-メチル-D-アスパラギン酸)受容体拮抗薬などが、追加投与されます。神経障害性疼痛には、一般的な消炎鎮痛剤は効きません。

■心因性疼痛
抗うつ薬や抗不安薬などが第一選択薬です。心理療法や行動療法、運動療法など、心療内科的治療を併用する場合が多いです。

リリカの作用機序

リリカは、痛みを伝える神経伝達物質の過剰放出を抑えることで、鎮痛作用を発揮します。リリカは、神経細胞のカルシウムチャンネルに結合します。
リリカの作用機序

神経障害性疼痛では、カルシウムチャンネルから侵入したカルシウムイオンにより、神経が興奮し、神経伝達物質が過剰に放出されます


リリカが結合した部位では、カルシウムイオンの神経細胞内への流入が低下します。カルシウムイオンが作用する神経内伝達が抑制され、興奮した神経伝達物質の過剰放出が低下します。その結果、次の神経に痛みが伝わりにくくなり、鎮痛作用が発揮されます。

リリカの副作用、合併症、作用機序

リリカはカルシウムイオンチャンネルに結合して、カルシウムイオンの流入を低下させます。結果、神経伝達物質の放出が低下します


リリカの特徴

リリカは、痛い時だけ飲んでも効きません。これは、他の神経障害性疼痛治療薬にも当てはまります。神経障害性疼痛治療薬は、一定期間以上飲み続けることで、初めて効き目を発揮します。

通常、効き目が現れるまで、数日から一週間は必要です。効き目が現れるまで、医師に指導された用法、用量を守りましょう。また、自分の判断で勝手に服用を中止してはいけません。急に服用を中止すると、せっかく治まっていた痛みが戻ってきたり、頭痛、下痢などの症状が現れることがあります。

リリカの副作用

リリカの主な副作用は、めまいや眠気、ふらつきです。リリカを服用した後は、車の運転や危険を伴う機械の操作は避けます。特に、高齢の方は、転倒の可能性があるため、十分な注意が必要です。

また、アルコールによってリリカの作用が増強したり、抗不安薬や抗うつ薬の作用が強く出ることもあります。場合によっては、体重が増えることもあります。

服用は、医師とよく相談し、注意をよく守りましょう。
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