痛み・疼痛/痛みの原因・痛み治療

慢性痛治療薬の種類、作用、副作用

慢性痛治療薬の種類、作用、副作用について解説します。痛み止めだけを漫然と飲んでいても、長引いた痛みには効きません。慢性痛治療薬の治療原則を知り、副作用を少なくし、痛みを自己管理していくことで、慢性痛から解放される方法を解説します。

富永 喜代

執筆者:富永 喜代

医師 / 痛みの治療・麻酔ガイド

慢性痛、痛み止め、副作用

漫然と痛み止めだけを飲んでいても、慢性痛は治りません。いろいろな薬を組み合わせ、自分で痛みを管理する、セルフメディケーションの考え方が大切です

3カ月以上続く、辛い痛み。痛み止めだけ飲んでも、痛みは取れません。慢性痛では、改善しない症状への焦り、痛みを分かってもらえない孤独感など、心理面への治療も必要です。また、薬物治療と並行して、患者さんの治療目標を明確にし、仕事や社会生活の向上を目指すことも大切です。今回は、痛み止めだけでは治らない、慢性痛で投与される薬物治療薬について説明します。

慢性痛治療薬の種類

慢性痛治療に使用される薬は、以下の3種類です。

■ 非オピオイド鎮痛薬
■ オピオイド鎮痛薬
■ 鎮痛補助薬

この3種類の治療薬の作用機序、副作用、薬剤名などを説明します。

非オピオイド鎮痛薬

非オピオイド鎮痛薬には、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs ; nonsteroidal anti-inflammatory drugs)と、アセトアミノフェンの2種類があります。

■非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs : nonsteroidal anti-inflammatory drugs)

NSAIDsは、炎症を抑える作用が強いことが特徴です。ロキソニン、ボルタレン、セレコックス、ロルカムなどが代表薬です。急性痛や軽症~中等度の痛み治療に用いられます。炎症を抑えるNSAIDsは、手術後痛や外傷にはよく効きます。しかし、炎症を伴わない痛み、例えば、帯状疱疹後神経痛や三叉神経痛、糖尿病性神経障害などには効きません。
NSAIDsは、副作用として胃腸障害、例えば、胃炎や胃潰瘍、腸管出血などを併発します。また、血小板の働きを抑え、出血傾向のリスクを高め、長期連用をすると、腎機能障害を起こします。慢性痛に対して長期間連続投与すると、副作用が起こりやすくなるため、注意が必要です。

■アセトアミノフェン


アセトアミノフェンは、炎症を抑える作用はありませんが、胃腸障害などの副作用が少ないことが特徴です。その高い安全性から、妊婦や小児にも使用されます。 海外では、成人の場合、一日4gまで服用できますが、日本では、1.5gに制限されています。アセトアミノフェンでも、長期連用の場合には、腎機能障害や肝臓障害の可能性があります。

オピオイド鎮痛薬

オピオイド鎮痛薬は、体内のオピオイド受容体に作用する鎮痛剤です。高度の痛みにも用いることができます。弱オピオイドから、強オピオイドまで、さまざまな種類があり、コデイン、フェンタニル、モルヒネ、トラマドールなどが代表薬です。その副作用は、吐き気、便秘、めまいなどです。

鎮痛補助薬

鎮痛補助薬は、鎮痛薬の補助目的で投与される薬です。抗うつ薬、抗けいれん薬、抗不安薬、抗不整脈薬、局所麻酔薬などが挙げられます。海外では、鎮痛薬の副作用を減少させる目的で、慢性痛に対して積極的に使用します。また、NSAIDsが効かない、さまざまな神経痛に使用される場合もあります。しかし、日本では保険適用が無いため、代わりにオピオイド鎮痛薬を投与しています。

慢性痛薬物治療のポイント

慢性痛は、痛みと心理的、社会的要因が複雑にからみ合っています。ですから、痛みだけを治療目的とした鎮痛剤投与だけでは、治療成績は向上しません。病気の治療を行いながら、抑うつ、不安などの治療に加え、生活の質を上げ社会復帰を可能にする、包括的な治療が求められます。

慢性痛薬物治療の原則

慢性痛を薬で治療する場合には、以下の原則を守り、積極的に治療参加しましょう。

1.  服用してきた薬の内容と治療内容、治療期間を詳しく主治医に説明すること
2. 自分なりの治療目的を決め、目的達成に向けて治療内容を主治医と相談すること
3. 痛みの強さと薬の副作用について主治医に相談しながら、症状に合わせて調節してもらうこと
4. 絶対安全な薬はなく、副作用を知り、自分で管理していく根気を持つこと

慢性痛は自分で管理して治す、セルフメディケーションの考え方を持つことが重要です。医師は、慢性痛コントロールのサポーターでしかありません。長期間続く痛みを上手に自己管理するためには、慢性痛治療薬の特徴を知り、移りゆく症状に合わせて、薬を処方してもらうことが大切です。

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※当サイトにおける医師・医療従事者等による情報の提供は、診断・治療行為ではありません。診断・治療を必要とする方は、適切な医療機関での受診をおすすめいたします。記事内容は執筆者個人の見解によるものであり、全ての方への有効性を保証するものではありません。当サイトで提供する情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社、各ガイド、その他当社と契約した情報提供者は一切の責任を負いかねます。
免責事項

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます