糖尿病/A1C・血糖値管理・血圧計・血糖測定器

血糖自己測定は最初の血の一滴でする?それとも2番目?

糖尿病治療において「知識は力なり」を実感することがままあります。血糖自己測定では、手を石けんで洗ってからよく乾かし、最初の穿刺で得た血液で行うと誤差も少なく正確に測ることができます。しかし、外出先などで手を洗えない時などはどうすればいいのでしょうか?今回はそんな疑問にお答えします。

執筆者:河合 勝幸

自己血糖測定

フルーツを扱った手は二番血液でも不正確になります。必ず手を洗ってください。

糖尿病治療において「知識は力なり」を実感することがままあります。血糖自己測定では、手を石けんで洗ってからよく乾かし、最初の穿刺で得た血液を測定するのが正確です。でも、手を洗えない時は?どうしましょうか。その場合は、最初の血の一滴をティシュで拭きとって、そのまま続けてもう一度必要なだけの採血をして、2番目の血液を測定するのがより正確になるようです。
インスリン治療の人はこの知識を活かす場面が必ずありますね。

このありがたい研究をしてくれたのは、Johanna Hortensiusらのオランダの医療チームです。[Diabetes Care March 2011]
血糖自己測定は患者自身で行うので、慣れすぎてぞんざいになったり、不慣れで痛みを感じる程深く穿刺してしまう人もいるでしょう。

オランダでも測定には一番血液を使うのか、二番血液を使うべきかの合意は医療現場にはないそうです。
日本では二番血液(変な表現ですが、the second drop of bloodのことです。適切な言葉があったら教えてください)を使うように勧めることはないように思いますが、オランダでは次のような3通りの推奨がありました。

(1) 手を石けんを使ってよく洗い(あるいは消毒して)、よく乾かしてから一番血液を使うこと。

(2) 手を洗えない場合は、一番血液を拭きとった後の二番血液を使うこと。

(3) (1)のように石けんでよく洗った後も、二番血液を測定すること。

さらに、十分な血滴を得るために指先を強く搾らないようにも指導されています。

実験は1型と2型の糖尿病患者123人、いずれもインスリン治療で血糖自己測定を行なっており、全員が18歳以上でした。
手を石けんで洗った後の一番血液、二番血液の測定値を基準にして、さらに次のような状況下で一番血液、二番血液を採取し、それぞれの血糖値の変化を調べました。

a. 洗ってない手

b. 手を洗ってから、フルーツを取り扱った後の手

c. 手を洗ってからフルーツを取り扱い、もう一度石けんで洗った手

d. 指に強弱二通りの圧力をかけて採血

フルーツを扱うのは、指に付いたブドウ糖の影響を調べるためですから、かなりオーバーに、被験者はリンゴを四分割して更に半分に切り、バナナの皮をむいてから手で2つに折りました。

綿密な観察なので結論だけを書きますと、やはり、ぬるま湯で手を石けんで洗った後の一番血液がより正確でした。私は清潔第一の習慣だと思って軽視していましたが、ただの衛生上の問題だけではなかったのです。
手が洗えない(消毒できない)場合も、見た目にも汚れがなくて、糖分を含んだ物に触れていなければ、一番血液をティッシュで拭きとった後の二番血液が正確でした。
また、指先を強く搾って採血するのは、やはり血糖値の信頼度が低下するようです。

当然といえば当然の結果ですが、外出時に「一番搾り」ではなく「二番絞り」を測定するのは日常生活でも使えるアイデアです。何げなくミカンの皮をむいた手から採血するようなことも、大いにあり!ですからね。

血糖測定器の正確さについて

アメリカ糖尿病協会(以下ADA)は家庭用の血糖測定器が普及してきた1986年から数回にわたって測定誤差を小さくするようにメーカーに要望していますが、いまだに実現していません。
その代り、必要な採血量もごく微量になり、自動化が進んだために手技によるミスは大きく改善しました。患者による測定値はよくなっています。

簡易血糖測定器は今のところ国際標準として20%の誤差のマージンが要求されていますが、FDA(米・食品医薬品局)も、ADAのように誤差5%以内とまでは言わないものの、より正確さを高めるようにプレッシャーをかけています。

医療における測定・分析の機器は正確さや精度に関心が向けられますが、同時に臨床においてどの位の正確さが求められているか?という観点も必要です。
この答えはとても難しく、特に家庭用の簡易血糖測定器では、テストをするのが熟練した検査技師で、理想的なコンディションの下で行えばそれなりの正確さが得られるのでしょう。
しかし、現実は、昼夜を問わず、時と場所も選べず、劣悪なコンディションの下で糖尿病合併症のハンデがある人─例えば視力障害のある人─が血糖測定を行なっているのです。
求める正確さが立場によって異なるようです。

合併症予防には血糖コントロールが大切なことを科学的に示したDCCTでは、1980年代の初期モデルの血糖測定器を用いましたが、それでも血糖コントロールに大きなインパクトを与えました。
この数年は、簡易血糖測定器の正確さにあまり関心が寄せられなくなったところを見ると、もうハードウェアには大きな問題はないのでしょう。それよりも手の汚れとか、センサーの取り扱いミスなど、利用者によるトラブルが測定値に影響します。ADAは少なくとも年1回は医療チームに自己測定法をチェックしてもらうように勧めています。いつの間にか自己流になってしまうのです。

ところで、血糖測定には酵素反応が利用されていますから、チップと測定器の温度管理がポイントです。
同じ室温にするようにします。冬季の低温と結露には特にご注意!
測定器の電極チップ挿入口の近くに温度センサーがありますから、ここを持つクセがあると異常値になることがあります。

ADAに倣って、年1回は取扱説明書を読み直しましょう。

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