糖尿病/糖尿病対策の生活・運動療法

糖尿病のある現代人にとってのバランス食とは

年末年始のホリデーシーズンに入ると、糖尿病患者はアルコールとごちそうの難問に直面します。糖尿病の食事療法はカロリー控えめのバランス食が定番ですが、今回は誰でも知っている「バランス食」について考えてみましょう。

執筆者:河合 勝幸

年末年始のホリデーシーズンに入ると、糖尿病患者はアルコールとごちそうの難問に直面します。糖尿病の食事療法はカロリー控えめのバランス食が定番ですが、今回は誰でも知っている「バランス食」について考えてみましょう。

野菜と魚

野菜と魚。現代のヘルシーバランス料理です。トマトと赤ピーマンの上にある白い魚は生(なま)の塩鱈のたたきで、オリーブオイルとレモンでいただきます。(スペイン料理)

バランス食とは何かと言えば「体にいい栄養素を含んだ食品をバラエティ豊かに適量摂取すること」という答えが圧倒的に多いことでしょう。もちろん、それはそれで正しいのですが、一日3食、すべて手作りの「バランス食」を取ることなんて普通の生活ではとても出来ません。現代人のバランスのよい食生活には別の観点、優先順位が必要です。

まず、糖尿病の食事指導で閉口するのは、朝昼夕の3回の食事ごとに食品交換表を使って各食品グループの摂取量を指示されることです。これを守れと言われても、意味は分かりますが非現実的です。

なぜなら、エネルギーや栄養素の摂取量には大きな日間変動があるのが自然だからです。そうは言っても糖尿病患者は摂取した炭水化物(ブドウ糖)を体が十分に取り込めない障害を持っていますから、まず最優先すべきは食事に含まれる炭水化物の量を管理することです。
炭水化物食品とは穀類とその製品、野菜、フルーツ、乳製品、スイーツが主なものですから、これらの摂取量は一回の食事ごとに気配りする必要があります。エネルギー(カロリー)は太りすぎ、痩せすぎの人の課題ですから、多くの人にとっては二次的な目標。
他の食材はヘルシーなものを心掛けて、ごく普通の家族、友人と同じメニューで何ら差し支えありません。そういう意味では糖尿病食というものは無いも同然です。

糖尿病の食事療法は食事毎の炭水化物摂取量、一日の食品のバラエティ、週単位での体重管理(エネルギー摂取量)、月単位での微量栄養素を含む各栄養素への気配りが大切です。

こういう食品を減らそう

ヘルシーなバランス食の定義の一つに、特定の食品群を排除しないというものがありますが、現代人にはもっと減らしたほうが望ましい食品があります。それは、便利で安価なファストフードであり、加工食品、ソフトドリンクなどです。
日持ちをよくするために高度に加工することで自然の栄養素を失い、食味をよくするために油脂や塩分、砂糖などを加えることによって健康問題の一因になります。

砂糖の甘味と脂肪のうま味は加工食品を食べやすく、おいしくします。しかし、同時に高カロリーにもなってしまいます。甘味(砂糖=炭水化物)だけでも太らないし、脂肪だけでも太らない。甘味と高脂肪の組み合わせが高インスリン、高脂血症を招き、肥満へと直結します。

特にデンプンから作った「異性化液糖」は安価で、甘味が強い果糖が砂糖より少し多いのでソフトドリンクにたくさん使われますが、果糖は肝臓でブドウ糖とは別の経路でどんどん代謝されて肥満や高コレステロール血症へとつながります。

加工食品の糖分は、インスリン治療の糖尿病患者ではインスリンで対応できますが、そういう食物を好めば本来ならばフルーツや野菜が含有しているビタミンやミネラル、食物繊維などを摂取する機会を失うことにもなります。砂糖や脂肪は空っぽのエネルギーのみの食品なのです。

加工食品やファストフードの油脂は酸化しにくい飽和脂肪酸やトランス型脂肪酸が多いのも問題です。動脈硬化や心臓病のリスクを高めます。
塩分も大きな課題です。現代人は制限目標よりも2倍も多く取っています。高血圧との関係はよく知られていますが、塩分を多く取ると体のカルシウムを失うことにもなります。

もっと増やしたい食品

私たちが野菜やフルーツをもっと取りたいと思うのは当り前のことです。低脂肪、低カロリーでビタミン、ミネラル、食物繊維の宝庫ですから。でもバランス食には精白度の低い全粒穀物や豆類、乳製品、魚介類、ヘルシー油脂などにも注目しましょう。

やっと日本でも全粒粉で作ったパンやパスタが入手できるようになりましたが、食品の外観や色などはいかにもそれらしく作れますので、ラベルの成分表で確認してみましょう。
成分表のトップに書いてあるのが全粒粉なら問題ありません。成分表は使用量の多い順から書いてあるのです。

玄米食はかなり前から欧米でも注目されています。玄米を精米すると重量が90%になります。捨てた10%に微量栄養素や食物繊維が含まれています。
牛乳は飽和脂肪酸が問題視されていますが、アメリカ人のように牛肉を主食のようにしていなければ特に問題はないと思います。減脂あるいは脱脂した加工乳もあります。乳製品は現代人に不足しているカルシウムの大切な源です。

食物繊維は満腹感を高め、食後血糖値を抑えてくれます。
食物繊維は全粒穀物、豆類、野菜から各々1/3ずつ取るのがいいバランスとされています。
我が国では食物繊維は20g/日位が目標になっていますが、肥満大国アメリカでは女性が25g/日、男性が38g/日となっています。

食物繊維を上手に取るコツは意外にも朝食です。朝食は同じようなメニューでも飽きが来ませんし、栄養素を計算するまでもなく、ことさら美味を求める必要もありません。
全粒シリアルやオート麦、豆料理などを上手に組み合わせると朝食だけで7~10gの食物繊維を取ることが出来ます。
ただし、朝食の好みは個人差がとても大きいので、少しずつ変えていきましょう。

本来のバランス食の意味は3大栄養素、炭水化物、タンパク質、脂質のエネルギー比の割合だと思います。
ただ、いつも指摘しますが、血糖の源である炭水化物の構成(エネルギー比)についてはかなりの論争があります。血糖管理を容易にするために低炭水化物食にするか、ヘルシー食のために野菜などの炭水化物を高めるか、です。

私自身は2型糖尿病の進行(耐糖能の減少)に応じて炭水化物の割合を経口剤のときは減らしたり、インスリン治療になったら元に戻したりしてきました。
つまり、病態によって3大栄養素のバランスを変えながら、血糖安定とヘルシーな食事は両立できると思います。
医師、栄養士と相談しながらベストバランスを求めてください。

■関連記事
食後血糖値vs.空腹時血糖値、どちらを重視?
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※当サイトにおける医師・医療従事者等による情報の提供は、診断・治療行為ではありません。診断・治療を必要とする方は、適切な医療機関での受診をおすすめいたします。記事内容は執筆者個人の見解によるものであり、全ての方への有効性を保証するものではありません。当サイトで提供する情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社、各ガイド、その他当社と契約した情報提供者は一切の責任を負いかねます。
免責事項

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます