歯・口の病気/歯痛・歯の異常

抜歯になる重症?歯の「ヒビ」は接着剤では治らない

何度も差し歯が外れる、治療したのに歯ぐきが腫れを繰り返すなどの経験はありませんか?見た目は僅かな「ヒビ」ですが、歯にとっては生死を分ける大問題。歯の「ヒビ」についてわかりやすく解説します。

丸山 和弘

執筆者:丸山 和弘

歯科医 / 歯の健康ガイド

すでに歯はヒビ割れだらけ?

歯のヒビ

ヒビが拡がって抜歯になるケースも多い

体の中で最も固い組織という歯のエナメル質ですが、実は固い反面、脆いといった特徴もあります。このため噛む際の衝撃が蓄積され、年齢を重ねるごとに、自然に歯の表面の細かいヒビが増えています。

歯の表面以外にも、ヒビが入りやすい場所として、根の象牙質があります。エナメル質に比べると若干柔らかさがありますが、それでもヒビが入ります。エナメル質のヒビは、目で確認する出来る大き目なヒビでも、大きな問題にならないことが多いのに対して、象牙質のヒビは、ほんの僅かなヒビでも歯の神経にダメージを与えたり、最悪の場合、抜歯になることもあります。

ヒビが入った時の主な症状

■エナメル質のヒビ
ホワイトニングをする際に、歯がしみるといった症状になることがありますが、多少のヒビは、普段は無症状のままといったケースが多いようです。比較的深いヒビで最も多い症状は、冷たいものがしみる知覚過敏です。ヒビの隙間から水などが象牙質に触れるため知覚過敏を起こします。

早期であれば原因になりそうな、噛み合わせの際の衝撃を調整するため、エナメル質を僅かに削ると知覚過敏が収まることもあります。

50歳以上では噛み合わせの衝撃が蓄積されて、大きめのエナメル質のヒビが見つかりやすくなります。噛み合わせ面のエナメル質が、突然破折することもあります。しかしこの場合、ヒビがエナメル質内で終わっていれば、歯の神経などはダメージを受けることはありません。

■象牙質のヒビ
象牙質にヒビ割れが起こると、ヒビを伝わって奥に細菌が侵入しやすくなります。歯の上部の象牙質にヒビが入れば、内部の神経に炎症を起こし「歯痛」が起こり、根にヒビが入れば、歯ぐきの奥に細菌が侵入するため「歯ぐきの腫れ」が起こります。

さらに神経を抜いてある歯に起こるヒビでよく見られるのが、被せものや差し歯が何度付け直してもよく外れる。歯周病や根の病気が、治療をしてもなかなか治らない、などの症状です。

ヒビが入った時の治療法は?

残念ながら、歯のヒビを完治させる治療法はほとんどありません。エナメル質内のヒビは、浅いもしくは無症状なら経過観察。歯の一部が欠けてしまった場合には、虫歯の治療と同じ様に治療します。具体的には小さい欠けであれば、樹脂で埋める、大きく欠けたなら、被せものを作るといった具合です。

象牙質のヒビは、歯が完全に真っ二つに割れてしまえば、即抜歯。水がひどくしみるようであれば、神経を抜くなどの治療が必要です。目で見てもほとんど確認できないほどのヒビでも、細菌にとってはただの通路でしかありません。そのため象牙質にできた歯ぐきの奥につながるヒビを、なかなか発見できず苦労することもあります。だんだんと症状が悪化したため、抜歯して初めてヒビが確認できるときもあるのです。

一般的には神経がある歯と無い歯では、ヒビの入りやすさに違いがあります。臨床経験的には、「歯の神経がある歯:歯の神経がない歯=1:9」程度で、圧倒的に神経の無い歯がトラブルを起こしやすいようです。

ヒビ程度であれば接着剤でくっつければ?と考えますが、接着時にヒビ内部を無菌状態にしにくい、接着のための乾燥状態を保てない、もし張り付けても、噛み合わせの力で接着部分や別の場所にヒビが再発してしまう可能性が高いなどの理由で、うまくいかないことが多いようです。

虫歯や歯周病が無くても痛んだり腫れたりする時は、歯に僅なヒビが入っている可能性もあります。一度病院で確認してもらうようにしましょう。

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