骨・筋肉・関節の病気/その他の骨・筋肉・関節の病気

外反母趾の症状・原因・治療・リハビリ

外反母趾は女性に多い病気です。原因のほとんどがハイヒール着用。症状としては足の変形、疼痛、母趾の付け根の腫脹、足底のタコなどです。矯正装具、鎮痛薬などにより痛みの軽減は得られますが、足の変形を治療するには手術が必要です。手術で変形を治療するためには骨切りと骨の固定が必要で、治療が完成して骨癒合するのにだいたい半年間ほどの期間が必要です。一時的に車椅子、松葉杖の使用などのリハビリが必要となります。

井上 義治

執筆者:井上 義治

形成外科医 / 皮膚・爪・髪の病気ガイド

外反母趾とは


足指の母趾(第一趾)が外反した状態、つまり指先が外側を向いた状態のこと。若い時のハイヒール着用が原因のほとんど。女性が男性の10倍多い疾患。ハイヒール以外では慢性関節リウマチ、膠源病などが原因となることも。



以下の記事は実際の患者さん(68歳・女性・Aさん)のケースを元に、その体験を加工して記載してあります。Aさんは外反母趾を発症しました。外反母趾の症状、診断、治療、手術、手術費用などの理解を深めて下さい。

術前

手術前のAさんの右足 母趾が大きく変形しています



外反母趾の症状


Aさん、2009年10月に近くの整形外科のクリニックを受診しました。「20歳前後から仕事でハイヒールを約15年間履いていました。ときどき足の痛みはありましたが、仕事で革靴をはく必要があったので、我慢して履いていました。40歳ごろから母趾が変形し外側を向くようになりました。母趾の付け根が靴にあたり痛みもでるようになりました。テープを母趾につけて矯正しました。痛みは多少和らぎましたが、変形はもどらないし徐々に進行してしまいました。最近では見た目もよくないので、サンダルも履けません。なんとか形を整えることはできますか。」

母趾付け根の疼痛、付け根の腫脹、足の変形、足底のタコなどが外反母趾の症状です。

外反母趾の診断


■単純X線(レントゲン)
2009年10月にAさんがクリニックで撮影した単純X線写真です。

右足単純X線像

右足単純X線像 外反母趾角を測定します


単純X線写真は放射線被爆量も少なく、費用もわずか。その場で撮影も終了し当日説明をうけられるので、整形外科では必ず施行します。

この写真で足の第1中足骨の軸と第1基節骨の軸の間の角度を外反母趾角(HV角)と呼び、この角度で重症度を判定します。

■外反母趾角 20度~30度  ----  軽症
■外反母趾角 30度~40度 ----  中等症
■外反母趾角 40度以上 ------  重症

Aさんの場合外反母趾角は32度と中等度の外反母趾と診断されました。

外反母趾の治療・リハビリ

■鎮痛薬
ボルタレン、ロキソニンなど非ステロイド消炎鎮痛薬(NSAIDと省略されます)。

ボルタレンは、1錠15.3円で1日3回食後に服用。副作用は胃部不快感、浮腫、発疹、ショック、消化管潰瘍、再生不良性貧血、皮膚粘膜眼症候群、急性腎 不 全、ネフローゼ、重症喘息発作(アスピリン喘息)、間質性肺炎、うっ血性心不全、心筋梗塞、無菌性髄膜炎、肝障害、ライ症候群など重症な脳障害、横紋筋融 解症、脳血管障害胃炎。

ロキソニンは、1錠22.3円で1日3回食後に服用、副作用はボルタレンと同様。

どちらの薬でも胃潰瘍を合併することがありますので、胃薬、抗潰瘍薬などと一緒に処方されます。5年間、10年間の長期服用で腎機能低下などの副作用があ りますので、注意が必要。稀に血液透析が必要となる場合もあるので、漫然と長期投与を受けることはできる限り避けて下さい。

鎮痛薬の問題点は数ヶ月以上の服薬で胃腸症状、腎機能低下が高率に発生しますので、急性期を過ぎたら主治医と相談し、減量ないし休薬を考えましょう。

■シーネ・装具
非手術的な治療として、夜間に装具をつけて外反母趾の治療を行う方法があります。疼痛の軽減効果は認められますが、変形を治療する効果はないようです。

装具

夜間に装着して外反母趾の治療を行う 装具

■観血的整復固定術
完成した外反母趾の変形を直すには手術しかありません。
Aさんは外観が気になるためクリニックの紹介で総合病院の整形外科を受診して手術を予定しました。
全身麻酔で47分間の手術でした。

術後単純X線像

術後単純X線像 骨の固定は2本のピンを使用


術後

術後の足の状態 外反母趾が矯正されています


外反母趾の外観が矯正されてAさんは満足です。手術後2週間は車椅子ですごしましたが、その後は松葉杖を使用し右足に体重がかからない状態で退院となりました。合計27日間の入院です。治療に要した費用は30万円でしたが、高額医療のため2ヵ月後に22万円が健康保険からもどってきました。

半年後、骨が癒合したのをレントゲンで確認して骨固定に留置した2本のピンを除去する手術をうけました。手術は局所麻酔で通院で手術を受けました。

ピン除去後

ピン除去後の単純X線 骨癒合が完成しています

2回目の手術は入院も必要なく金銭的な負担もわずかでした。足の変形が矯正され自由にサンダルをはいて外出ができるよになり、Aさんは満足です。

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