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森美術館で「メタボリズムの未来都市展」開催中

現在、六本木の森美術館で「メタボリズムの未来都市展」が開催中です。1960年代に日本が世界に向けて発信した建築運動「メタボリズム」の全容を、500点以上の資料と最新のCG映像を駆使して再現した展覧会です。

執筆者:川畑 博哉

現在、六本木ヒルズの森タワー53階の森美術館で「メタボリズムの未来都市展:戦後日本・今甦る復興の夢とビジョン」が開催中です。1960年の「世界デザイン会議」を機に誕生した建築運動「メタボリズム」の思想と全容を明らかにする初めての展覧会です。
建築家や関係者が所有する初公開の模型、スケッチ、図面、写真、記録映像に加え、本展のために新たに製作された最新のCG映像など、500点以上の貴重な資料によって再現した、これまでに例のない充実の建築・デザイン展です。
また、若手建築家によるシンポジウム、展示会場でのトークセッションやツアー形式のギャラリートークなどの連動イベントも開催されます。この機会にぜひ、日本が世界に向けて発信したメタボリスト達の未来都市を体験しにお出かけ下さい。
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会期:2012年1月15日(日)まで 会期中無休
開館:10:00-22:00 火曜日10:00-17:00
2012年1月3日(火)は22:00まで開館
いずれも入館は閉館時間の30分前まで
入場料:一般1,500円 学生(高校・大学生)1,000円
子供(4歳-中学生)500円
会場:森美術館 東京都港区六本木6-10-1
六本木ヒルズ森タワー53階

4つのセクションでメタボリズムを知る

展示会場は、導入部の〈メタボリズムの誕生〉、メインの〈メタボリズムの時代〉、同時代の芸術と大阪万博を紹介する〈空間から環境へ〉、大阪万博以降の海外での展開の〈グローバル・メタボリズム〉の4つのセクションで構成されています。
セクション1の〈メタボリズムの誕生〉では、1938年から1958年の戦中戦後の建築年表と共に、メタボリズムの誕生に大きな影響を与えた丹下健三の戦災復興計画《広島ピースセンター》や、1959年の伊勢湾台風によって壊滅的被害を負った農村の復興計画である黒川紀章の《農村都市計画》などのプロジェクトや、菊竹清訓の自邸として有名な《スカイハウス》と共に、1960年に出版されたメタボリズムの宣言書『METABOLISM/1960-都市への提案』が展示されています。
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1. 記録映像が組み込まれた建築年表(左)と《広島ピースセンター》の模型。その背後は磯崎新のフォトコラージュ《電気的迷宮》。
2. 手前は黒川紀章《農村都市計画》、左奥は菊竹清訓《スカイハウス》の模型。

巨大CGで未来都市を体験する

セクション2の〈メタボリズムの時代〉は、まず丹下健三らの《東京計画1960》から始まります。
この東京の都市機能を東京湾に拡張するという壮大な海上都市計画と共に、高層ビル群を空中回廊で繋いだ《築地再開発計画》や、DNAの二重螺旋構造から発想した黒川紀章《東京計画1961―Herix計画》、磯崎新の樹状都市《空中都市―新宿計画》《空中都市―渋谷計画》、菊竹清訓《海上都市》、槇文彦《ゴルジ構造体〈高密度都市計〉》などの、空想とも思えるこれら未完の都市計画がパネルと模型で表現されています。
なかでも圧巻なのが、本展のために新たに製作された大スクリーンのCG映像。メガストラクチャーが創り出す東京の未来をヴァーチャルに体験できます。
さらにメタボリズムの思想を実現させた、丹下健三《静岡新聞・静岡放送東京支店》《山梨文化会館》や黒川紀章《中銀カプセルタワー》、菊竹清訓《出雲大社庁の舎》《ホテル東光園》、大谷幸夫《国立京都国際会議場》、槇文彦《代官山ヒルサイドテラス》などの、貴重な模型や図面や記録映像が所狭しと展示されています。
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1. 丹下健三《東京計画1960》の模型と《築地再開発計画》のCG映像。 2.《東京計画1960》のCG映像。
3. 黒川紀章《東京計画1961―Herix計画》のCG映像。
4. 映像は栄久庵憲司《シャンデリア都市》。
5,6. 模型が50点以上置かれた会場。
7. 六本木ヒルズ前の公共空間で《中銀カプセルタワー》のカプセルの実物を展示。

環境とアートとメタボリズム

セクション3の〈空間から環境へ〉では、建築や都市計画にとどまらず、「環境」というキーワードでメタボリズムと深く関わっていたデザインやアートを紹介しています。
その代表的なものとして、1966年に銀座松屋デパートで催された展覧会「空間から環境へ」展を、粟津潔(デザイン)、山口勝弘(彫刻)、一柳彗(音楽)、東松照明(写真)、磯崎新(建築)など実物の作品で再現しています。
さらにメタボリズムと、こうした芸術諸分野が結晶した1970年の「大阪万博」を、都市や建築の視点から紹介しています。
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1. 磯崎新が会場デザインを担当した展覧会「空間から環境へ」の再現。 2. 大阪万博のの模型や記録映像の展示風景。

世界に展開するメタボリズム

セクション4の〈グローバル・メタボリズム〉では、大阪万博以降に世界にその活躍の場を広げたメタボリスト達の活動を展示しています。
丹下健三のマケドニアの首都の震災復興計画《スコピエ都心部再建計画》、槇文彦のシンガポールの近作《リパブリック ポリテクニック》、黒川紀章から磯崎新に引き継がれた中国の《鄭州市鄭東新区如意型区域都市計画》など、いまなお都市のスケールで展開されている大型プロジェクトを通して、メタボリズムがどのように世界の建築界に寄与したのかを検証しています。
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菊竹清訓の《アクアポリス》の模型が置かれたコーナー。

メタボリズム・ラウンジ

展示会場を出た先の、関連書籍やシンポジウムの記録映像(10月中旬以降に展覧予定)のある「メタボリズム・ラウンジ」では、メタボリズムの影響が見られる進行中のプロジェクトを自由に見ることが出来ます。また東日本大震災の復興に関わった、栄久庵憲司率いるGK設計による緊急災害対応ユニットや、清水建設のGREEN FLOATプロジェクトなども紹介されています。メタボリズムの思想やアイデアが、現在も様々な形で建築や都市デザインに活かされていることを知ることが出来ます。

関連イベントも盛りだくさん

来年1月15日までの会期中には、塚本由晴、平田晃久、吉村靖孝、藤本壮介、藤村龍至ら若手建築家によるシンポジウム「メタボリズムのDNA」(モデレーター:五十嵐太郎)や、展示会場でのトークセッション(要予約、無料、要展覧会チケット)と、水曜19時からのメタボリズム研究会のメンバーと森美術館スタッフによるツアー形式のギャラリートークも開催されます。(10月12日/10月26日/11月9日/11月23日/12月7日/12月21日/2012年1月11日 予約不要、先着15名、無料、要展覧会チケット)

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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