血糖値と妊娠の関係が分かってきました
妊娠糖尿病とは
「妊娠糖尿病」というのは何となく気色の悪い病名ですが、糖尿病のある女性の妊娠(糖尿病合併妊娠)や、初めての妊娠検診時に診断された「明らかな糖尿病」とは別のもの。まだ糖尿病には至っていない、糖代謝異常(健常者より血糖値が高め)の状態です。しかしこの程度でも油断は禁物です。前回記事「高血糖の母体だと赤ちゃんが危険?」で紹介したとおり、胎児死亡や新生児死亡の原因と深く関わりをもつ妊娠後期から新生児期早期までの周産期の合併症を予防するために、日本でも2010年7月1日から国際糖尿病・妊娠学会の勧告に合わせて診断基準が厳しく変更になりました。
妊娠糖尿病の診断基準の変更
従来の診断基準では妊娠糖尿病の頻度は約3%でしたが、基準変更後は12%と4倍に増えました。アメリカでも同様に診断基準が変わりましたので、以前は2~10%くらいとされていた妊娠糖尿病の頻度が、現在は18%と推定されています。スクリーニングは主に産科で行われますが、これだけ妊娠糖尿病の妊婦が増加すると、多くの内科医・栄養士が診断と治療に関与すると思います。どういう流れで診断と治療が行われるか、私たちも理解しておきましょう。
妊娠糖尿病の検査
国際糖尿病・妊娠学会では次のようなスクリーニングを勧めています。- 糖尿病のある女性の妊娠については計画と準備が必要です。
- 妊娠前に糖尿病と分かっていない女性には、初回妊婦検診で空腹時血糖値(妊婦は前夜20時以降の食事はしないようにする)、ヘモグロビンA1C、随時血糖値(食事をした人)を測定する。
- 空腹時血糖値 126mg/dl以上
- HbA1C(JDS・の日本式) 6.1%以上
- 確実な糖尿病網膜症がある
- 随時血糖値 200mg/dl以上
上記のような「明らかな糖尿病」ではないがが、空腹時血糖値が92~125mg/dlの場合は妊娠糖尿病と診断して治療を開始する
空腹時血糖値が92mg/dl未満であればとりあえず大丈夫なので、インスリン抵抗性が強くなる妊娠24~28週頃に再度、より正確なブドウ糖75g負荷テスト(以下75gOGTTとする)を行う。
- 妊娠24~28週におけるスクリーニングは、妊娠後に上記の「明らかな糖尿病」または「妊娠糖尿病」と診断されていない全ての妊婦に75gOGTTを行います。この時、空腹時血糖値が126mg/dl以上あれば「あきらかな糖尿病」と診断。
- 空腹時血糖値 92~125mg/dl
- 1時間値 180mg/dl 以上
- 2時間値 153mg/dl 以上
これらの3ポイントすべてが基準値に達していない場合には「異常なし」とされます。
妊娠糖尿病の場合は胎児の成長に不可欠なカロリーと栄養素を含んだ食事計画が指導されます。食事と運動だけでは十分な血糖コントロールができないときはインスリンを処方されることがあります。
妊娠糖尿病は出産すれば解消しますが、高血糖が続けば2型糖尿病と診断されることもあります。アメリカでは5~10%の妊娠糖尿病がそのまま2型糖尿病に移るようです。
妊娠糖尿病を経験した女性の35~60%は10年、20年後に2型糖尿病を発症すると推測されています。ヘルシーな食事と体重維持、1日30分のエクササイズを守って、3年に1度の糖尿病スクリーニングが勧められています。
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