「手術は痛くない?」「入院は必要?」 手術を受けられる患者さんからは、色々な質問が出てきます
翼状片の手術に関する質問
Q. 手術はどのように麻酔をするのですか? 痛くないですか?A. 点眼で麻酔をします。最初しみますが、そのうちしみなくなってきます。手術中は痛みは全くありませんが、人によっては少しちくちく感じることがありますので、そのときはお伝え下さい。麻酔を追加します。
Q. 入院は必要ですか?
A. 必要ありません。
Q. 両眼の場合、手術は二度することになるのですか?
A. はい。両眼を同時に手術すると両眼眼帯になってしまい、歩けませんからね。それに、いかに翼状片の手術が安全といえども、万が一なにかあるかもしれません(病院に来る途中で交通事故にあう確率よりは低いと思いますが……)。なので、片方をやって、大丈夫なことを確かめてからもう片方をやるのが我々プロの眼科医のやり方です。
Q. 片眼の両側に翼状片が2つできているのですが、1度に手術していただけますか?
A. できます。
Q. 「翼状片を取り去って、その部分に他の部分からもってきたきれいな結膜を植え込みます。」とありますが、きれいな結膜をとってきた部分は取り去ったままの状態で問題ないのでしょうか? 結膜って再生するということなのですか?
A. 何も考えずに取ると問題が発生するのですが、結膜がきれいに再生して問題が起こらないように手術するのがプロのテクニックです。技術は企業秘密とさせて下さい。
白内障・緑内障がある場合の翼状片手術に関する質問
Q. 私は35歳なのですが、先日眼科検査で白内障が発覚しました。視界に問題なく自覚症状は全くないです。もし将来的に白内障の手術が必要になった際、瞼裂斑や翼状片の手術をしたことで何か支障がありますか?A. 全くありません。というより、特に翼状片の場合は、将来白内障手術はやりやすくなります。角膜上の邪魔なものがなくなり、中が見やすくなるからです。
Q. 左目に関しては視野が少し狭いため、将来緑内障になる可能性もあると言われました。翼状片や瞼裂斑を手術すると、そのことも何か支障はありますか?
A. 上方からきれいな結膜をとって、そこはきれいに再生するのですが、厳密に言うと何もいじってない状態よりもやや硬くなります。そこが緑内障手術(トラベクレクトミー)で使う部分なので、将来手術が必要になるかもしれないというようなひどい緑内障の方は、翼状片の手術を受けないことをお勧めします。主治医の先生に確認してみてください。
翼状片の術後に関する質問
Q. 術後は痛くないですか?A. 人によっては痛みが出ることがあります。術後処方でカバーします。
Q. 眼帯はいつまでするかを教えてください。
A. 術後眼帯をして帰り、そのままにしておいて、翌日とって、点眼を開始します。その後は眼帯の必要はありません。目が赤くなるので、隠すために眼帯をしたい場合は、ご自由にどうぞ、です。
Q. 術後の注意点を教えてください。
A. 手術の日は眼帯をつけたまま寝ます。次の日、眼帯をはずし、その後は眼帯をする必要はありません。術後は1週間、感染を防止するために、目に水が入らないように気をつけてください。顔は、可能なら拭くだけのほうがいいです。頭を洗うときは仰向けで、美容院や散髪屋さんで洗ってもらうのがベストです。炎症が強くならないよう、お酒は控えめにしてください。1週間を過ぎたら完全に普通の生活で大丈夫です。目薬は重要なので、ちゃんとつけてくださいね。
Q. いつから仕事に復帰できますか?
A. 仕事復帰は患者さんにお任せしていますが、術後3日間ぐらいは休まれることをお勧めします。目が赤いので接客業は1ヶ月ぐらいはちょっとやりづらいかもしれないですね。
Q. 術後の通院はどうなりますか?
A. 術後はステロイド点眼が必須なので、副作用による眼圧上昇をチェックするために、半年は2週間に1回程度は定期健診が必要です。平日が厳しい方は土曜日を使ってください。こちらの病院の場合、土曜日は大高はいませんが、土曜日の担当の先生は診察にとても慣れていますから。
Q. 術後はやはり眼は赤くなりますか?
A. 術後は一時的に術前よりも赤くなります。だいたい1ヶ月ぐらいでだいぶいい感じになってきたなぁ、ぐらいになり、3ヶ月たてば、やってよかった~、となります。案外時間がかかるなぁ、とお考えになるでしょうが、翼状片がどれだけの時間をかけてできてきたかを考えると、それを治すのに数ヶ月かかるのは仕方ないと考えていただければありがたいです。
Q. 術後、コンタクトレンズはいつから可能ですか?
A. 綺麗に治すためには一生つけないでくださいと断言したいのですが、最低でも3ヵ月後からにしてください。コンタクトは翼状片の原因にもなるものなので、たとえ3ヶ月経過してからでも、コンタクトをつければ、それだけ手術の部分が充血が残った状態で治る可能性が高くなります。あとは自己責任でお願いします。
翼状片の術後に起こりうるリスク・再発に関する質問
Q. 術後に起こりうる他の問題を教えて下さい。A. まず、目の奥は皮膚とつながっているので、術後に皮膚に内出血が見られることがあります。特に私は眼の奥にある根っこからしっかり取るようにしていますので、皮膚に内出血しやすいです。通常1~2週間で消えます。手術翌日より、お化粧で隠していただいて問題ありません。
また、術後にまぶたがややあがりづらくなることがあります。これまでの例では、全員3~6ヶ月で自然治癒しています。
あとは、裸眼視力が下がることがあります。翼状片は角膜を引っ張ってゆがめて、乱視を発生させています。このひっぱりを除去すると乱視が減って、通常は裸眼視力が上がるはずなのですが、翼状片がある状態で裸眼視力が1.0とか1.2とかある人は、翼状片を取ると微妙なバランスがくずれて、裸眼視力が下がることがあります。下がる程度は人によります。通常矯正視力には影響は出ません。
Q. 再発はしませんか?
A. 残念ながら再発する可能性はゼロとは言い切れません。うちで1000人に1人ぐらいの確率でしょうか。
翼状片とレーシック手術に関する質問
Q. コンタクトとレーシック、翼状片や翼状片術後の目にはどちらがいいですか?A. コンタクトより、レーシックのほうが翼状片や翼状片術後の目には良いといえます。レーシックが目に良いか悪いか、20年ぐらいの間は問題ないようですが、それ以降の事に関しては自己判断でお願いします。
Q. 翼状片とレーシックの手術は、どちらを先に受けた方がいいですか?
A. 翼状片を先にやっておいた方が良いと考えます。うちらはどちらが先でもいいのですが、翼状片が先のほうが、レーシック手術がやりやすくなるので、レーシックの先生に喜ばれると思います。というのは、
1. 翼状片はレーシックの邪魔になる
2. 翼状片手術をやると、乱視や近視などの度数が変わることがある
という2つの理由からです。どちらが先でも、手術と手術の間は3ヶ月以上あけてください。
Q. 翼状片の術後、レーシックはいつから受けられますか?
A. 翼状片術後3ヶ月からです。
Q. 術後、なるだけきれいに治したいので、コンタクトをやめてレーシックを考えています。先生どう思いますか?
A. 翼状片のことだけを考えると、コンタクトよりレーシックのほうが良いことは間違いないです。レーシックを受けた目が将来にわたって大丈夫かどうか、その判断は自己責任でお願いします。私自身はレーシックを受けて十数年、今の所やってよかったと思っていますが、何十年後とかにはどうなるかわからないし、それを割り切れる人だけに受けてほしいです。新しい手術とはそういうもんです。
翼状片とコンタクトレンズに関する質問
Q. 術後はいつからコンタクトレンズを入れられますか?A. 3か月から許可していますが、コンタクトは翼状片の大敵です。コンタクトを入れると、入れないよりも確実にきれいな治癒の妨げになります。あとは自己責任ですね。すこしぐらい充血が残ってしまうとしても、やはりコンタクトを入れる生活をしたいと考えるのは自由です。
Q. コンタクトはソフトとハード、どちらが良いですか?
A. 術前も術後も含めて、どちらも翼状片に対してはおもいっきり悪いです。ソフトは当たりは柔らかいですが大きいので白眼にがっちり当たるし、ハードは小さいので白眼に当たりにくいですが、当たりが硬いので当たった時のダメージが強いし、どっちもどっちと考えます。
その他の質問
Q. なぜ翼状片手術は先生方みなさんあんまりやりたがらないのですか?A. 正直なところ、あまり儲からないのに、手術が手間がかかるとか、再発するリスクがあるとか、患者さんには手術を受けたのに充血が残ったと言われてしまうことがあるからとか……何かとめんどくさいから、だと思います。
翼状片手術は、初発で4万円台、再発でも6万円台という診療報酬です。白内障手術の場合は12万円台で、しかも翼状片を1件やる時間で白内障なら2件できますから、医師といえど病院を経営面でもしっかり運営していかなくてはならないので、利益面を少し考えるのなら、翼状片ではなくて白内障手術をやりたいと思うものです。私も白内障手術は非常に得意としておりますので、翼状片手術を少し倦厭してしまう先生方の気持ちはよくわかります。
病院で先生にいやそうな顔をされたとか、軽く扱われたといった経験を患者さんから聞くことがありますが、その理由はすべてここにあると思います。
なぜ翼状片の診療報酬がかくも悲劇的に安いかと言えば、「翼状片はぶちっと取るだけで3分で終わる。再発はほとんどするものだが、しかたがないだろう」といまだに多くの先生が考えているし、ぶちっと取るだけならこの値段で十分だろ、ということなんでしょう……。まぁ、これも仕方がないです。