そんなカルティエが時計製作を始めたのは、19世紀後半のこと。3代目のルイ・カルティエは先見の明を持ち、数々の新しい発想とともにメゾンを飛躍的に発展させた人物です。ルイ・カルティエは20世紀初頭より時計師エドモンド・ジャガーとコラボレーションを行い、自らがデザインした時計を製作。飛行家サントスデュモンのために発案された「サントス」をはじめ、現代に続くカルティエ ウォッチの礎を築き上げました。
同じくルイ・カルティエの功績であるタンクは1919年、第一時世界大戦に用いられたルノー製装甲車(tank)からデザインの発想を得て誕生しました。アール・デコの発想を取り入れたスタイルは、後に多くのバリエーションを生み出すアイコンコレクションへと成長します。斬新なモチーフとは裏腹に、洗練された優美なスタイルは男性のみならず女性達の心をも虜にし、“タンキスト”と呼ばれる熱烈な愛好家たちをも生み出すこととなります。
「タンク」およびカルティエの時計がいつの時代も色褪せず、新鮮であり続けるその理由は、やはり秀逸なデザインセンスと妥協のないディテールにあることでしょう。たとえばタンクの特徴である角形ケース。懐中時計から続くラウンドデザインが主流であった時計のデザインに、直線のレクタンギュラー型を取り入れたカルティエの斬新な姿勢は、角形時計の新たな潮流を生み出すこととなりました。かつケースとラグを一体化させることで、より身につけやすいスリムなデザインが完成されている点にも注目です。
ローマ数字で描かれたインデックスや分を示すレイルウェイトラック、青焼きの剣型針など、“カルティエ スタイル”と呼ばれるメゾンの時計の特徴が詰め込まれているのも特徴です。
「タンク アメリカン」SM クォーツ、PGケース×アリゲーターストラップ、84万円 ©Cartier
このタンク アメリカンは、タンク サントレの特徴を受け継いだコレクションとして1989年に登場したモデル。従来のレクタンギュラーをより長く、手に沿うよう大きく湾曲させたケースはより優雅な雰囲気を醸し出しています。カルティエの“造形美”に対する揺るぎない姿勢を感じさせるタンク アメリカンは、1919年から続くタンクの系譜のなかでも、レクタンギュラースタイルの魅力を最も美しく表現した時計でもあるのです。
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