企業年金の種類を知る
企業年金とは、「会社の退職金制度の一部で、年金受け取りを選択できるもの」です。本人が希望すれば一時金でまとめて受け取ることもできます(詳しくは退職金のキホン的仕組み、企業年金との関係について)。さて、企業年金の種類はいくつかありますが、大きく分けると「確定給付型」「確定拠出型」「共済型」に分けられます。退職一時金制度については、希望しても年金受け取りはできないので企業年金とは呼びません。
それでは企業年金のタイプごとに制度の種類と特徴を説明します。
企業年金3つのタイプ
■確定給付型(制度名)確定給付企業年金、厚生年金基金 (退職年金と呼ぶ場合も)
1つめのタイプは、確定給付と呼ばれるタイプです。これは過去50年近く続いている伝統的なタイプの企業年金です。仕組みを簡単にいえば、「会社が最終的に支払う(給付する)金額が確定している」ということです。
企業年金の支払いについては、「毎月積み立て」「資産運用を行い」「約束した支払いを行う」部分をすべて会社(企業年金)側が責任を負うことになります。
私たちは、支払いの条件(何歳から支払うか、10年払いや15年払いといった支払い期間はあらかじめ決まっている)、支払いの金額(勤続年数や平均給与などによって年金額が決まる)に従って、退職後に年金を受け始めることになります(ただし、経営悪化や倒産の際には何割か引き下げられることもある)。
確定給付タイプの企業年金制度は2000年まで「適格退職年金」と「厚生年金基金」の2種類がありましたが、適格退職年金については2012年3月で廃止されることになっています。今は「確定給付企業年金」という新しい制度と「厚生年金基金」制度の2つがあります。合計でおおむね1000万人が利用しています。
■確定拠出型
(制度名)確定拠出年金(日本版401k)
2つめのタイプは、確定拠出と呼ばれるタイプです。これは簡単にいえば「会社が積み立てる(拠出する)金額のみが確定している」ということです。
確定拠出年金では、資産運用については自分で運用方法を決めてお金を増やしていきます。また、支払いの方法も自分で決めることができます(60~70歳の好きなときに受け取り開始ができ、5~20年の受取期間を選ぶか一時金で受け取れるなど自由度は高い)。
自己責任型の企業年金制度などと呼ばれますが、制度の運営そのものは会社が責任を負っており、その範囲内で運用の選択等を行います。何でも好きに売り買いできるわけではありません。
なお、自己責任で運用しなければならない代わりに、資産保護の体制は整っており、自己都合で辞めても(勤続3年以上)、金融機関が破綻しても、企業が倒産(あるいは業績悪化)しても、資産を減らされることはありません。また、売却益や利息などは非課税になっているため、個人の運用として考えるときわめて有利に準備が行えます。
こちらは21世紀になって初めて誕生した制度で、現在では約400万人が利用しています。
■共済型
(制度名)中小企業退職金共済、特定退職金共済など
企業年金を独自に運営することが難しい中小企業のために用意されているのが共済制度です。会社は毎月共済制度に従業員ごとの掛金を積み立てていき、その後は共済制度側が管理・運用・給付を行います。
一度積み立てたお金は、会社に戻ることはありませんので、企業の経営悪化や倒産においても、積み立てられた掛金と加入期間にもとづく利息が辞めたときにもらえる仕組みになっています。共済型は会社とは違う外部に積み立てられるため、会社が経営悪化したり倒産しても受取金が減ることはないのです。
また、建設業や清酒(酒造)業、林業など一部の業界だけを対象にした退職金共済もあります。
なお、企業年金制度の枠組みに入れていますが、実質的には退職一時金として使われている場合がほとんどです(その意味では退職金的でもある)。
■その他
その他、ごくまれに、上記の制度を使わずに企業年金制度を実施している場合もあります。上記の制度は税制優遇等の特典があるので、企業が企業年金を実施する際には活用するのが一般的なのですが、時折独自に企業年金を実施する例がみられます。
最後は「自分の制度」だけ覚えておけばいい
いろいろな制度の概要を紹介してきましたが、「覚えきれない!」と焦る必要はありません。大事な問題は、「自分の入っている制度」だけ覚えておくことだからです。自分の働いている会社が、自分を対象にしている企業年金制度が何か、知っておくことは案外大変です。しかし調べれば分かるようにはなっています。社員を対象とした社内制度ですから、社員に何らかの情報を開示しているからです。
自分の会社に企業年金があるなら、「確定給付型」か「確定拠出型」か「共済型」か分かれば、制度の理解が一歩進んだことになります。「確定給付」と「確定拠出」を両方やっている、なんてこともあります。
まずは自分の入っている企業年金制度が分かったら、そこから自分の制度について情報収集をしてみるとよいでしょう。
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