梅王国、和歌山へ

色とりどりの梅酒たち

色とりどりの梅酒たち

梅酒の季節だ。
ずらり並んだ梅酒たち。
これ、すべて同じメーカーの商品。
“通常商品”“季節限定商品”“業務用商品”など、すべていれると30種類以上にもなる。これだけあると、ああもう、どれを飲んでいいのか迷っちゃうのである。

全国梅生産量の60%を占める梅王国、和歌山県。とくにスモモのようなフルーティーさと甘酸っぱさをもつ大粒の「南高梅」は最高品質の梅として全国区の人気を誇っている。この南高梅を使った商品たちは、同県海南市に本拠地を置く中野BC株式会社の梅酒たちなのだ。現在、梅酒の全国シェア4%、ベスト10にも入る企業。梅酒の生産量は1260kl、清酒もあり900kl。従業員(パートを含め)180名という規模の人気酒造メーカーである。梅の季節まっさかりの6月中旬、梅酒の仕込み蔵と収穫が始まったばかりの梅農家を訪ねた。

中野BC(株)の「BC」って、なに?

昭和7年醤油製造の「中野商店」から始まり、昭和36年より酒造業開始。地方の酒造蔵としては比較的新しい。酒造事業のほか、梅関連の食品、栄養機能食品、化粧品の製造販売を手がけ、関連企業ではスポーツクラブや介護施設、ホテル運営に不動産事業と実にフットワークの軽い経営体制である。ここ数年、東京でも梅酒をベースとしたカクテル梅酒やその名も和歌山らしい「紀伊国屋文左衛門」といった清酒を見かけることが多く、ふと蔵名を見ると「中野BC(株)」と書いてある。

最近よく見るなぁ、この「中野BC」。
ふむ、「中野BC」か。
「BC」ねぇ……。
ん?「BC」??
この「BC」っていったいなに?
「紀元前のこと」
「違うやろ」

3代目になる代表取締役専務中野幸治さんにうかがえば「BCはバイオケミカル・クリエーション」の略なのであった。意味は「生化学の創造」。なるほどこれで酒造りだけではなく、梅果汁や栄養機能食品の製造、化粧品にも携わっている理由がわかった。ここはお酒のサイトなので詳細は省くが、アトピー性皮膚炎、花粉症に効果のある錠剤なども開発していて、個人的にはとても興味があり思わず突っ込んで質問してしまった。ご興味のある方は、こちらをどうぞ。

さて、梅酒の話。
この時期に最盛期を迎える梅酒蔵を見学した。案内してくださるのは梅酒杜氏の山本佳昭さん。広い敷地には朝入荷されたばかりの梅が山積みで、甘酸っぱいいい香りが漂っている。
「毎年、年間3万人ほどの見学者がいらっしゃいます」と山本さん。
すごい。昨日開催された蔵開放試飲イベント「第2回梅酒BAR」は700名以上の来場者だったとか。

巨大タンクでも、昔ながらの梅酒作り

梅酒蔵2

巨大タンクの3つのガラス窓を覗くと……

梅酒蔵に入り、山本さんが指差すのは23,000リットルという巨大なタンクに開けられた3つのガラス窓。

 

梅酒蔵3

小窓から仕込まれたばかりの梅が見える

ここから漬け込んだ梅を見ることができるのだ。グッドアイディア。見学者が多いだけあって、よく考えられた「サービス」だと思う。この巨大タンクが42本。20,000リットルが14本。ものすごい量だ(としか想像ができない)。

 

梅酒蔵1

巨大タンクが並ぶ梅酒蔵

ここに梅を漬け込んで約6カ月抽出し、その後、液と実を分離してさらに6~9カ月熟成させる。最低でも1年かかるわけだ。ベースは甲類焼酎(もちろん蔵内で造ったもの)。

 

梅酒蔵4

梅を選りすぐり、

最近、清酒に漬け込む梅酒が発売されているけれど、ここ中野BCは清酒蔵でもある。なのに、梅酒は100%焼酎ベースだという。

 

梅酒蔵5

焼酎に入れる

「やはり焼酎のアルコール度数が、梅の成分をしっかり抽出してくれ、南高梅らしい味わいを表現できるから」と。

 

梅酒蔵6

漬け込んだ後の梅はピュレやゼリーとして楽しむこともできる

「昔ながらの梅酒造り基本レシピは、酒(アルコール35%)1.8リットル:砂糖1kg:梅1kgです」
プロ秘伝のさじ加減はあるだろうが、規模は巨大だとしてもあくまで昔ながらのバランスをそのままに梅酒造りが行われているようだ。

「梅の良し悪しで梅酒の味もかなり変わります。今年は収穫時期が遅いんですよ」と梅酒杜氏らしい山本さんの説明。

後述する梅農家さんの言葉でもわかるが、梅という「果実を使う酒」はその年の出来不出来がある。これ、ヴィンテージの違いを楽しめる酒と言い換えることもできる。これができる和酒は意外に少ない。今年の味は昨年の味はと語りながら飲める楽しみがある。これからはヴィンテージ付きの梅酒に人気が出るかもしれない。