梅酒/梅酒関連情報

本場「紀州梅酒」(中野BC)と梅農園、見学リポート(3ページ目)

梅の本場、和歌山県。同県海南市に本拠地を置く「中野BC株式会社」は、バリエーション豊富な梅酒で今大注目のメーカー。梅の季節真っ盛りの6月にお蔵を訪問した。また、極上の梅を栽培している梅農園「月向農園」も見学に。完熟上のおいしさを体験。おすすめの「買える店」「飲める店」もあわせてご紹介。

友田 晶子

執筆者:友田 晶子

日本酒・焼酎ガイド

「男なんですけど、梅酒作ってるって、ヘンですか?」

月向山

月向山からの美しい眺め。太平洋からの潮風がおいしい梅を作る

月向1

この日収穫した梅の選別中

翌日は、和歌山県みなべ町の「月向(げっこう)農園」にうかがった。むかしはこのみなべ町、「南部」と書いていたような。読めないからひらがな表記になったのかな。ここは日本一の梅の里だ。

 

月向2

園主の月向雅彦さん。ご説明がわかりやすい!

月向家は350年の歴史をもち、梅農園をはじめて100年ほど。園主の月向雅彦氏は8代目だ。ご先祖がこの地「月向山」に住んでいたところから「月向」というステキな苗字になったとか。海から内陸に4km、標高100mの月向山は青々とした太平洋が見渡せる気持ちのいい場所だ。十分な日照量があり、土地の水はけがよく、ミネラルを含んだ潮風とやはりミネラル豊富な大地から梅の名品「南高梅」が生まれる。

 

月向3

収穫した梅は通販に

所有する梅園面積は2.7ha。毎年の収穫量は40~50t。ご家族3人と他スタッフ6名ほどで、梅の栽培と梅干や梅加工食品などを生産販売している。梅そのものの販売も行っているが、最近は梅酒を作る人が増えたそうで人気らしい。

「男なんですけど、梅酒作ってるって、ヘンですか?」という問い合わせもあるのだと笑う月向さん。

「収穫は6月ひと月です。でも、農園の管理は7月以降からがスタート。花を咲かせるため、夏にも作業があるし、秋から冬は木枝を整えたりします」
梅の収穫後は梅干も作る。健康な梅干はどんなにおいしいだろうか。


梅の樹の下で、生の完熟梅をかじる!

月向4

梅の樹林へ。心地いい風が園内を駆け巡る

梅の樹林に入る。
「今年は例年より1週間ほど遅いんです」とここでもこの話。今年は冬が長かった。

 

月向5

少し色づいてきた南高梅

でも、青々と茂る葉っぱの間からはむっちりと大きく丸く実った青梅があっちにもこっちにも見ることができる。梅の実ってこんなに大きかったっけ。

 

月向6

青いシートに熟した完熟梅が落ちる

「このあたりの樹は樹齢15年。樹齢25年ものは完熟したいい実になります。1つの樹から100kgほどとれますよ」とよく熟した実を手渡してくれる。

香りはまるで杏や黄桃のように甘酸っぱくて、おいしいそう。

 

月向7

完熟梅は、思いのほかおいしい!

「食べてもいいですよ」の言葉と同時にカプリッ。
お、おいしい!

甘酸っぱくて、おいしい。きめの細かい果肉の繊維は柔らかく、強烈な酸味があるけど、柔らかい甘みもある。種の近くはもっとも酸っぱい。こんなにおいしいのになぜ生食にしないのかと聞けば、
「梅はアシが非常に早い果実で新鮮なうちに食べるのが難しい。もちろん、酸も強いしね」

なるほど、この農園でかぶりつくのがやはり最高のようだ。すごい贅沢な気分。

ちなみに、梅酒には黄色味がかった青梅で樹になっている状態のものがいい。梅干には熟して自然に落ちたものがいいのだとか。和歌山名産の南高梅はどちらにも向く梅。南高梅、エライのである。

除草剤はなし、梅の種から作る有機肥料で育つ元気梅

月向さんの農園では除草剤を使わない。また、農薬も最低限。使用するものは有機認定を受けたものがほとんどだ。「農薬は、子供が予防注射をしたり、虫除けスプレーを使うような感覚」という考え。さらに肥料は、堆肥となんと梅の種(!)で作られた有機肥料。さすが梅農園。ホームページでは、農薬と肥料の種類や使用回数が明確に公表されている。自然のままにたっぷりの愛情と手間をかけて育てられている梅たち。まるで娘のよう。そうだ、月向さんご夫婦には本当にお嬢さんがお二人いらっしゃる。

「うまくいく年は4年に1回程度2009年は恵まれた年だった。06年は雹にやられ、07年は霜、08年は病気……」
なんと大変な作業だろう。ただの飲んだくれの私には想像もできない。しかし、やはり梅酒はワインと同様、出来不出来がある果実という農作物の酒。ヴィンテージの個性を語れる和酒である。100年やっても、梅の実を収穫するのはたった100回なのだ。年に何回もできるわけではない、その年唯一の梅と梅酒。これからは、梅の良し悪しを語りながら飲めるようになりたいものだと、月向さんの梅の木々を見つめる優しい横顔を見ながら思った次第。
gekko

季節限定の『月向』。味わいも特別だ


月向農園ホームページ

中野BCでは、月向農園の梅を使った毎年限定の『月向』が秋に発売される。量が限られるため、ほんの短期間しか発売されない。ご興味あるかたはHPを要チェックだ。

 

まるで貴腐ワインのような濃密梅酒「紀州梅酒 紅南高」

紅南高

濃密な味わいを楽しめる『紀州梅酒 紅南高』

今飲めるおすすめは「紀州梅酒 紅南高」。日光がたっぷりあたると表面が紅色になる。これを「紅南高」といい、この実だけで作られたのがこの商品。紅色に熟した実は、糖度6~8度にもなり、水分もたっぷりできれいな酸が梅らしいバランスをかもし出してくれる。

出来上がった梅酒は、ピンクがかった淡い琥珀色で、とろりと舌に重い濃密なタイプ。氷を入れてオンザロックやソーダ割りでもこの濃厚さが楽しめるが、友田おすすめはそのままストレートで。まるで貴腐ワインのような印象で、ボリュームのある料理をいただいた後の食後酒としてフルーツタルトやベイクドチーズケーキと一緒にどうぞ。業務展開している商品なので、お酒屋さんや料飲店で見つけたらぜひ。

★月光農園園主月光雅彦さんと山本佳昭梅酒杜氏の「梅酒造りの裏技」が対談形式で公開されている。梅酒を作ろうという方、必見!
ココ


■中野BCの梅酒・清酒が買える、おすすめの酒販店@和歌山
寅一1

大きな街道に面した目立つエントランス


業務展開をする銘柄を含め、中野BCの商品を購入するなら、和歌山市内の「株式会社吉田 寅一商店」さん。

 

寅一3

必ず試飲をさせてくれるところもうれしい

幅広い品揃えはもちろん、すべて試飲させてくれる。

 

寅一4

今のおすすめはこちらの完熟みかん梅酒だ

ただいまのイチオシ商品は「完熟みかん梅酒」だ。 通販も可能。要チェック!

 

■中野BCの梅酒・清酒が飲める、おすすめの飲める店@海南市
さとう2

インテリアはかなりモダン。料理も洗練されているけれど、どこか懐かしい味

海南市で、おいしい梅酒と「紀伊国屋文左衛門」「長久」のお燗酒を飲むならば、おすすめ店は「地魚 さとう」だ。

 

さとう4

お刺身がもう驚きの新鮮さ。隣のいちゃついていた若いカップル、このおいしさ、わかっておるのか……

辰ケ浜から直送される超新鮮なお刺身は腰が抜けるおいしさ(ホント!)。こりっこりの獲れたて魚たちの味わいに感動すること間違いなし。ここでお燗、何本空けただろう……。

 

さとう5

鱧も最高。淡い旨味を堪能できる

「辰ケ浜 地魚 さとう」
和歌山県海南市船尾200番地
電話:073-483-3680
営業時間:17時~23時半
(HPなし)

 


さとう7

ビールに梅シロップを入れる「初恋ビール」。まねしてみて。おいしい。この店は日本酒もワイングラスで飲ませる

梅の本場で見た梅と梅酒は、梅の名産地ということに胡坐をかかず、つねに「本気」「真剣」「生真面目」に取り組む造り手さんたちの情熱で生み出されていた。梅や梅酒はかなりポテンシャルの高い食材ということもわかった。全国的に、また、海外でもますます人気は右肩上がりになるだろう。

 

さとう8

お酒を注いでいるのは河嶋清酒杜氏と山本梅酒杜氏。普段はおりませんのであしからず

日本が誇る日本の果実酒。飲むほうもしっかりプライドを持っていたい。また、梅酒のグラスを手にしたときには、造り手のことを思い出してほしい。きっと一味も二味も味わいが深くなるはずだから。
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