敷金は本当に必要か
今年の3月、最高裁で敷引き有効の判決が出ました。
最高裁判所での判決は「敷き引き有効」
訴訟の対象となったのは、京都市内の賃貸住宅。家賃9万6000円、入居時に保証金を40万円支払っていましたが、1年9ヵ月後の退去時には21万円の敷引きをされた残りの19万円が返ってきました。この金額に不服であった入居者が裁判を起こしましたが、契約時の特約で退去時の原状回復についての取り決め(居住年数に応じて敷引きされる金額が変わるもの。その金額も明確に定められていた)がありましたので、この金額は不当に高すぎるものではないとの判決により、敷引き有効となりました。
ここ数年、敷金をめぐる裁判はかなりあります。判決は、借主の勝訴だったり貸主の勝訴だったり、様々。最初にどのような契約を結んでいて、その契約内容が不当なものではないかどうかが判決のポイントですが、貸主にも考え方はいろいろあります。
今回のように、貸主にとって有利な「敷引き有効」判決が出たからといって、両手を上げて喜んでばかりはいられないのかもしれません。実際この判決に対し、冷静な見方をしている貸主も多いようです。
礼金は、部屋を貸してくれる大家さんに対して「ありがとう」というお礼の意味を込めて支払うお金。これがいつの間にか慣習となって、定着してきたものです。ですから、支払う借主ももらう貸主も「返金する」という概念はありません。逆に、礼金をもらわなくてもいい、という貸主もたくさんいて、「礼金ゼロ」物件はかなり増えています。
ところが、敷金は性質がちょっと違います。「保証金」である以上、担保として預けなくてはなりません。借主が「払いたくない!」と言っても、それは通用しないでしょう。
こういった状況を考えると、敷金制度が「なくなる」ことはないでしょう。
問題なのは、借主は「預けたお金=退去時に返ってくるお金」であると認識していますが、貸主は「預かったお金=原状回復費用として必要な分を差し引いて、残りを返金するお金」と思っています。そこに微妙な思い違いがあるために、トラブルが起こったり、裁判をすることになったりしてしまうのです。
では、「敷金」をどのように考えたら、トラブルにはならないのでしょうか。
次回、敷金の考え方や現状についてまとめてみます。