不妊症/妊活・妊娠したい人のための生活のコツ

歯科治療での妊娠例? 不妊治療と口内環境の関係

私はこれまで様々な病院、クリニックに不妊治療取材を続けてきて、虫歯や口内の炎症が不妊状態に多少なりとも影響しているのではないかという仮説を持っていました。今回、歯科医院に妊娠と口内環境の関係についてインタビューしてきました。

執筆者:池上 文尋

今まで様々なクリニックや病院の不妊治療取材をしてきて、ずっと気になっていたことがあります。それは虫歯や口内の炎症が、不妊状態に多少なりとも影響しているのではないかという仮説です。

口内は食べ物の咀嚼を行なう場所なので、非常に細菌の繁殖しやすいという特徴があります。虫歯や歯周病で、炎症や出血を起こしやすい場所でもあるのです。これらが、全身に及ぼす作用があるのではないかと思っています。そこで今回は、モウリデンタルクリニック毛利院長にその疑問をぶつけてみました。

口内環境の悪化は不妊の原因になるのか

― 口内環境の悪化は、不妊の原因の一つとして考えられると思うのですが、いかがでしょう?

はい、口腔内環境の悪化には大きく分けて2つの問題があります。1つは、細菌感染の問題であり、口の中に存在する細菌の悪影響です。細菌の産生する毒素が全身の健康に関連していることはすでに証明されています。

歯科

歯のトラブルは健康に大きく影響します。

2つめは、かみ合わせの問題です。かみ合わせの不調によって、引き起こされる問題はたくさんあります。

ただし、各個人それぞれの傾向がありますので、一概に原因を決めつけることはできません。歯科医師によっても見解が異なるところがあります。しかしながら、口腔内環境が不潔であり、かみ合わせの悪い状態が身体にとってなんの影響もないとは思えません。

少しでも健康な状態を獲得することが大切であると考えるならば、不妊治療の初期治療として、口腔内環境の改善はとても有効であると考えます。

歯の治療と妊娠の関係

― 歯の治療後、妊娠された症例はありますか?

はい、勤務医時代に経験しました。その時の院長先生が、不妊治療を目的とした咬合治療を行った結果、ご懐妊された症例が2つあります。

身体の歪みをかみ合わせによって改善したことによるものと認識しています。当時の私にとっては驚くべき結果でしたが、今となっては理解できます。

かみ合わせの改善後に、他の疾患も改善された症例を幾つか経験したからです。ただし、その因果関係を全て明らかにすることは難しいところです。

歯の不調が原因の疾患・不妊との関係

― 歯の不調が原因の疾患で代表的なものを教えて下さい。また、その二次的な原因で不妊になることはありますか?

歯の疾患で代表的なものは、齲蝕(虫歯)、歯周病、根尖性歯周組織炎です。これらは全て細菌感染。細菌の産生する酸や毒素が影響する疾患です。

また、下顎の運動障害として顎関節症があります。下顎の関節部が痛む、口を開けるのが困難である、口を開けるときや閉じるときに音が鳴る、などの症状があります。顎関節症の原因は様々で、1つとは限りません。

歯科

定期的な歯科検診は健康維持のため有用です。

また、かみ合わせの不具合(不正咬合)による、偏頭痛、肩こり、腰痛などがあります。不正咬合がもたらす疾患はいろいろあると言われています。

歯科疾患が不妊症の2次的原因になるかについては、正確に答えるなら、なる場合もあれば、ならない場合もあるということです。

理屈で考えてみても、細菌の毒素、下顎の運動障害、不正咬合が、全身に対して何かしら影響するということは疑いようがありません。

ただ残念ながら現在、不妊症とこれらの相関関係を証明することはできていません。例えば、口腔内を清潔にし、かみ合わせの改善を図ることで、身体が本来の健康を取り戻し、妊娠に至る場合があれば、口腔内が不潔で、かみ合わせに問題があっても妊娠する場合もあります。

つまり、一般的には、歯科疾患と不妊症の相関関係は認められていません。あくまでも医師、歯科医師の個人的な見解に委ねられているのが現状だと思います。

妊娠と歯科についての関連文献

― 妊娠と歯科についての関連文献はありますか?

はい、妊娠中の歯科治療に対する配慮や、歯周病が早産を誘発するという文献があります。ほとんどが論文ですから、一般の書籍では少ないようです。インターネット上においては、妊娠と歯科の関連情報が多くあるので、そちらを調べたほうが良いでしょう。

歯科医師向けではこのような文献もありますので、参考にしてみてください。
www.sunashobo.com/bookd/shin_ninpu.html

妊娠を望む場合に気をつけるべきこと

― 妊娠を望む方はどんな事に気を配れば良いですか?

キーワードは “自然な生活と身体” だと思います。規則的な生活を心がけ、適切な食事をとり、毎食後にきちんとブラッシングを行う。身体に害のあるものは避け、体に良いものを取り入れていくこと。

特に現代人は運動不足になりがちです。適切な運動を習慣化するべきでしょう
自然でいることは、現代社会では少し難しいことかもしれませんが、生活習慣が不規則であったり、食習慣が偏ってしまえば、できるものもできないというのは普通に考えられることではないでしょうか?

歯科

きちんと解説をしてくれる歯科医師が良いですね。

歯科的観点でいえば、とにかく口腔内を清潔にすることです。毎食後のブラッシングはもちろんですが、不規則な間食は大敵ですね!間食も時間を決め、その後のブラッシングをきちんと行うことが大切です。

また、不妊で悩む方には、口腔内の古い金属の除去や、かみ合わせの不具合を診査することも有効だと思います。(金属は溶け出して、免疫に影響を与えることがあります。悪いかみ合わせは、体の姿勢に影響します。)

普段の生活や、見落としがちな問題に目を向けることから始めてみるのが良いと考えます。

妊娠中の歯のトラブル

― 妊娠中には歯のトラブルが増えると聞いたことがありますが、本当ですか?

はい、その通りです。妊娠5か月頃までは歯の中の神経が充血することで、歯が痛むことがあります。そして、妊娠中は歯がぐらぐらすることがあります。妊娠中は出産準備のために骨盤周囲のじん帯が緩みます。同様のことが歯の周囲に起こるからです

つわりで一度にたくさん食べることができなくなることで食事の回数が増えたり歯ブラシを口の中に入れると気持ち悪くなることで、ブラッシングがおろかになります。また、唾液の分泌量が低下し、さらに緩衝能力(虫歯菌の産生する酸を中和する力)が低下します。これらのことから虫歯になりやすくなります。

また、妊娠中はホルモンの分泌が盛んになり、このホルモンを好む細菌が増えやすくなります。これにより、妊娠5週目あたりから歯肉が腫れたり、出血することがあります。

さらに、正常な分娩時においてはプロスタグランジンが適度に分泌され、子宮筋を収縮させますが、歯周病菌が血管内に侵入することで、このプロスタグランジンが予定外に多量分泌されてしまい、早産を引き起こすことがあります。

妊娠中のトラブルを防ぐためには、適切な食生活とブラッシングの習慣が必要不可欠です。歯ブラシができない時は、うがいだけでも行うと良いでしょう。また、不安であれば、定期的に歯科医院でクリーニングするのもお勧めです。

モウリデンタルクリニックについて

― モウリデンタルクリニックについて詳しく教えて下さい。

モウリデンタルクリニックでは、まず患者さんに知ってもらうべき情報を提供します。現在の口腔内状況だけではなく、過去の推測(今日まで至った経緯)と未来の予測(将来起こり得る問題)をお伝えします。そしてその情報をもとに、治療方針を患者さんと共に決めていきます。

患者さん一人一人に合う治療と管理方法を提供することで、治療後の長期的な安定と、口腔内を適切な自己管理に導くことができるからです。これは少し難しく感じられるかもしれませんが、簡単に言えば、一生涯を快適な歯で過ごすためのやり方だと考えてください。

また、当院では日本歯科TC協会認定のトリートメントコーディネータが在中しています。患者さんの細かい要望や、忙しい方のためのスケジューリング、歯科医師には伝えづらい内容等を検討しながら、治療計画を第三者の立場で立案していきます。歯科医師の一方的な主観で治療を行わないためのシステムです。治療時間は一人30分を基本としており、他の患者様との並行診療は行いません。もちろん保険診療も行っております。

当院は良質丁寧な治療を提供するために完全予約制とさせていただいております。また、歯科相談は随時受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせください。

院長先生から妊娠希望の患者さんに伝えたいこと

― 院長先生から何かこれだけは伝えたいことはありますか?

妊娠を希望している方、これから出産を控えている方、どちらにも伝えたいことが2つあります。まず、お口の健康について、広く正しく知ってほしいのです。

一般の方にとって、歯医者と聞くと、虫歯と歯周病の話くらいしかないような気がします。実際、口腔内には様々な問題が存在します。

歯科

毛利院長です。イケメンですが、歯科診療に情熱を燃やす生真面目な先生です。

口腔内の様々な問題を知れば、自然と意識が高まり、上手に自己管理できる方が多いはずなのに、現状ではなかなか情報が伝わらず、また、本人の自覚症状が遅れることで、本来避けられるはずの問題(疾患)を抱えてしまう患者さんがとても多いのです。本当にもったいないと思います。

そして、とにかく身体を自然な状態に導くことです。虫歯や歯周病、古い金属、顎関節やかみ合わせに問題がある状態が自然な状態だと言えるでしょうか?

親不知(おやしらず)を抜くことで妊娠できたという興味深い話もあります。本当に関係しているかどうかは推測の領域です。しかしまた、不自然な状態で生えている親不知が「自然」だとは思えません。

また、僕の経験では、かみ合わせを改善することで、医師から回復の見込みはないと言われた患者さんの聴覚が回復した症例もあります。これも本当に関係しているかどうかは推測の領域です。しかし何もしなければ何も起こらなかったかもしれません。

どんなに医療が発達しても、そこにあるいろいろな問題を複雑に考える前に、人間の「自然」な状態をまず獲得することが何より大切であることを今一度確認して頂きたいと思います。

皆様にこれからも幸せが訪れますように。ありがとうございました。

インタビューを終えて

オールアバウト不妊症を10年近く行ってきて、初めての歯科取材でしたが、非常に興味深い内容でした。口内の状態が健康状態に大きく影響していることから、よい状態でキープしておく事が妊娠への近道である事は間違いありません。

赤ちゃん待ちの方、不妊治療されている方で口内について意識があまりなかったと思われる方はぜひこの機会に口の健康を見直してみるのもよいかと思います。

<協力> モウリデンタルクリニック

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※当サイトにおける医師・医療従事者等による情報の提供は、診断・治療行為ではありません。診断・治療を必要とする方は、適切な医療機関での受診をおすすめいたします。記事内容は執筆者個人の見解によるものであり、全ての方への有効性を保証するものではありません。当サイトで提供する情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社、各ガイド、その他当社と契約した情報提供者は一切の責任を負いかねます。
免責事項

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます