クロノグラフのパイオニアとなった腕時計ブランド「TAG HEUER」

タグ・ホイヤー

1916年に発表された、100分の1秒が計測可能な世界初の機械式ストップウォッチ「マイクログラフ」

現在の腕時計にもしばしば組み込まれる「クロノグラフ」とは、簡単に言えばストップウォッチ機能を指し、1秒以下の微細な単位で経過時間を計ることができる。

このような機能を搭載した懐中時計がスイスで盛んに作られるようになったのは、1880年代だという。科学や産業、スポーツ競技などで精密な時間計測が求められたことが一因だったと伝えられている。

1860年、スイス、ジュラ山脈のサンティミエにエドワード・ホイヤーが工房を創設して以来、タグ・ホイヤーは150年以上にわたりクロノグラフのスペシャリストとして名声を築いてきた。

1887年に今日でも主要時計メーカーの機械式クロノグラフに採用されているカップリング機構の「振動ピニオン」を発明して特許を取得したことも、タグ・ホイヤーの重要な業績に数えられる。

タグ・ホイヤーの伝統「マイクログラフ」

20世紀初頭に社を引き継いだ2代目シャルル-オーギュスト・ホイヤーも専門技術を生かした時計製造に情熱を注ぎ、1916年には100分の1秒単位で計測できる世界初の機械式ストップウォッチ「マイクログラフ」を発表した。

その技術が絶賛されたタグ・ホイヤーは、1920年のアントワープを皮切りに、1924年のパリ、1928年のアムステルダムと3大会連続してオリンピック競技の公式サプライヤーを務めるという栄誉を手に入れた。

オリンピックの計器にハイテク電子機器が駆使され、公式記録が100分の1秒単位で残されるようになったのは、1972年のミュンヘン大会以降だが、「マイクログラフ」は、はるか以前に機械的な機構のみでミクロの時間を正確に描き出していたのだった。

モータースポーツとともに語り継がれる人気モデル「CARRERA」

タグ・ホイヤー

1964年発表の傑作クロノグラフ「カレラ」。ムーブメントは手巻き

タグ・ホイヤーは、腕時計が主流になってからも、同社を象徴するクロノグラフ機構を主役にしたモデルに力を注ぎ、1940年代から50年代にかけては実にバリエーション豊かな製品を発表した。

同時にまた、モータースポーツとの関わりも深く、1911年に車載用ダッシュボード・クロノグラフの開発に始まり、現代のF1レースにおけるパートナーシップに至るまで、カーレースにちなむ数々の傑作腕時計を誕生させた点は見逃せない。

とりわけ有名なのが、1950年代の伝説のカーレース「ラ・カレラ・パンアメリカーナ・メキシコ」に触発されて作られた「カレラ」である。この傑作クロノグラフは、1964年に発表され、現在に続く同コレクションの礎になった。

革新的な腕時計デザインこそカレラ人気の理由

「カレラ」の特徴は、伝統の優れたクロノグラフ機構のみならず、それまでにない洗練されたモダン・デザインにあった。ケースから長く伸びるラグや、立体的なバー・インデックスを配したシンプルで見やすい文字盤は、現代建築のような機能美を湛え、非常に斬新な印象をもたらした。

この腕時計の発案者で当時の社長ジャック・ホイヤーは、時計のデザインは保守的で、他の分野の製品に大きく後れを取っていると考えていた。

タグ・ホイヤーは、やはりカーレースに関連するクロノグラフとして有名な1969年の「モナコ」や1974年の「シルバーストーン」においても、「カレラ」で試みたのと同様に、デザインの革新に挑んで、時代を超えるクラシックを後世に残した。

「カレラ」が、過去の遺産を受け継ぎながら、未来への出発点になったという意味で、重要なマイルストーンを演じたのは間違いないだろう。

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