壊してしまいたい、新しくつくるしかない
ダダイスムもシュルレアリスムも戦争を経験し、それまでの価値観が大きく揺らいだからこそ生まれたムーヴメントでしょう。第一次世界大戦最中の1916年にキャバレ・ヴォルテールで始まった既存の価値観を破壊しようという「ダダイスム」が起こります。その後、ダダイスムをはじめたツァラとブルトンの対立が起こりました。破壊のあとの時代に何を価値と見出すか模索する「シュルレアリスム」が、ブルトンの1924年の「シュルレアリスム宣言」により口火を切りました。
花や裸婦などのモチーフに溢れているわけでもなく、見たままの世界を描こうとされているわけでもないために、その作品の価値は分かりづらく、画家のごく個人的な内面を表現したものだと思うかもしれません。
しかしこれらは、「アートとは何か?」「生きることは何か?」を問いかけるアーティストたちの表現でした。シュルレアリスムは、自分の意識や目の前の現実のように直接手を下せない、夢や無意識の世界から、それを見つけようとしていました。
ポンピドゥから国立新美術館に来ている作品で「シュルレアリスム」は分かる?
パリの中心部に位置する国立ポンピドゥセンターは、総合文化施設として1977年に開館しました。特にシュルレアリスムに関する広範で多様なコレクションで有名。国立新美術館の「シュルレアリスム展」では、その膨大なコレクションの中から、絵画、彫刻、オブジェ、素描、写真、映画などの作品約170点に、書籍や雑誌などの資料を加えて展示されています。シュルレアリスムの画家としてまっさきに名の挙がるエルンストやマグリット、デ・キリコ。ピカソの恋人としても有名なドラ・マールの写真。そして、当時のシュルレアリストたちに絶賛されたブニュエルの『アンダルシアの犬』などの映像作品も上映されています。
シュルレアリスムという運動が、どんな作品を生み出したのかイメージを掴むには十分な構成になっています。
因みに、この展覧会の内容をHP上ではリサとガスパールが案内していますが、これは主人公のリサがポンピドゥー・センターに住んでいるという設定のため。かわいらしい演出ですね。
リサとガスパールのしゅるれありすむ入門
シュルレアリスムは20世紀のみならず、21世紀の文化にも大きな影響を及ぼしています(画像は、編集部作成イメージ)
展覧会詳細
シュルレアリスム展会場:国立新美術館 東京都港区六本木7-22-2
会期:2011年2月9日(水)~2011年5月9日(土)
開館時間:10:00-18:00(金曜のみ20:00まで。3月26日(土)は「六本木アートナイト2011」開催に伴い22:00まで)
※入館は閉館時間の30分前まで
休館日:※毎週火曜日休館(ただし5月3日は開館)