神の島、久高島(くだかじま)
船から眺める久高島の姿。晴れていると海の色が美しいのは離島ならでは
世界遺産に登録されている斎場御嶽(せーふぁうたき)の拝所からは久高島の姿を眺めることができますし、琉球王国時代、国際的な祭事には神の島である久高島の白砂を御嶽全体に敷き詰めたと言われています。沖縄を訪れている旅行者の口からその存在を聞くことも多いでしょう。また、しばしばうちなんちゅうと話していると、ふとしたことから久高島に話が触れることも。今回はそんな沖縄の神の島、久高島についてお話しましょう。
久高島とは?
遠くから眺めていてもどこか神々しい雰囲気に包まれる久高島
久高島が神の島と呼ばれる所以はたくさんあるのですが、まず一番わかりやすいのが琉球を造った祖神アマミキヨが最初に降り立ち国造りを始めた地と伝えられていることでしょう。沖縄において五穀発祥の地でもあり、歴代の琉球国王も久高島参詣を欠かさなかったとのこと。琉球神話の聖地として今も昔も沖縄の人々の心の中にしっかりと存在し、崇められている島なのです。
また、久高島を一躍有名にしたのが12年ごとの午年(ウマトシ)に行われる秘儀イザイホー。イザイホーとは島で生まれ育った30歳から41歳までの女性がセジ(霊力)を受け継ぐために行われる成巫式のこと(残念ながら1978年以降、該当者がいないためイザイホーは行われていません)。このイザイホーをはじめとし、久高島には年間で今もなお約30もの神秘的な祭事が執り行われ、人々は神様と寄り添うように暮らしています。
集落の中には昔ながらの沖縄家屋が残ります (C)OCVB
興味深いのは、この島の土地制度。久高島は総有制という独自の土地制度を持ち、ここでは土地は個人の所有するものという概念がありません。この土地制度によって外部の資本乱入を防ぐことで、島の存在自体を強く守り続けているのです。男は漁へ出、女は畑をつくり、島の自然や土地、この地に眠る祖先へ祈りを捧げる。この島の人々は今もずっと静かに島を守り続けているのです。もともと本土と比べると格段に日々の生活の中に祭事が残る沖縄の人々にとって、久高島は歴史的に文化的に、また精神的にも非常に重要な役割を持った島なのです。
久高島の楽しみ方 聖域や史跡をじっくり味わう
安座真港から久高島へ向かう船の上から眺める海
沖縄の離島といえば海遊びをいっぱい楽しむ!というイメージが強いものですが、ここ久高島には小さな島のあちらこちらに聖域が点在しているので、様々な歴史やストーリーを持つ久高島ならではの場所を訪ねることが島観光のメインとなります。もちろん小さな島なのでビーチはたくさんあるのですが、聖域となっている場所もあるので泳ぐときは注意が必要。また、久高島には背の高い建物はひとつもなく、小さな集落を除いて島のほとんどが自然のままという昔の沖縄の姿を見ることができます。本島からたったの20分船に乗っただけで流れる時間のスピードがまるで違うことに、都会からの旅行者にとっては新鮮に映るかもしれません。
カベールへ続く道にある大きな大きな木。存在感と生命力に圧倒されます
聖域や史跡が多いと書きましたが、この島では特に目立つような看板や目印がないことが多いので、気をつけて見ていないと気がつかずに通りすぎてしまうこともしばしば。看板があったとしてもごく簡単な説明文が添えられている程度、もしくは手書きといった具合です。なので、聖域や史跡に興味がある人はあらかじめ自分で少し調べておくとよいでしょう。まったく何も知らないで訪れると、単なるのどかな田舎の島の風景とも見える久高島ですが、そういったなんでもない風景の中に深い意味合いを持った聖域が点在するのが久高島の魅力です。
この島では、なんでもない風景がフォトジェニックに映ります。ゆっくりと島散策を楽しんで! (C)OCVB
ガイドはそういった専門家ではありませんが、沖縄を旅していると時々土地そのものに漲るパワーを感じたり、そこが何かすごく特別なものである感じを受けることがあるのですが、久高島もそういったパワーを感じる場所のひとつです。事実、最近はパワースポットや癒しスポットとしてもずいぶん注目が集まっているので、きっと敏感な人は何かもっと大きなものを感じるのかもしれませんね。ぜひ気の向くまま、足の向くまま、その時の気持ちにまかせて島散策をしてみてください。
久高島の見所 実際に見ることの出来る聖域は?
久高島は島中が聖地とも言えるほど、あちらこちらに聖域が点在しています。中にはまったく外部の人間が入れないようになっているものや、アクセス自体遮断されているものもあるので、ここでは実際に行くことができる場所、または内部までは立ち入れなくても見ることができる場所をご紹介します。■カベール岬
北の先にあるカベール岬。ここに立って見渡すと、この海の向こうにニラーカナーがあると信じる琉球の人の気持ちがわかります (C)OCVB
久高島の最北端にある岬。久高島でもっとも気持ちのいい場所とも言えるかもしれません。アマミキヨが降り立ったのがこのカベール岬の小浜だと伝えられています。また、海の神竜宮神が鎮まる場所でもあり、毎年1月に大漁祈願のヒータチが行われています。岬から下に眺める珊瑚の海はとても美しく、遠くにうっすらと津堅島を眺めることができます。港からカベール岬へ続く道はカベールムイと呼ばれ、希少植物が多く群生していることでも有名。
地図:Yahoo!地図情報
■フボー(クボー)御嶽
沖縄七御嶽のうちのひとつなので、久高島だけでなく沖縄全土でみてもトップレベルの聖域。古来から男子禁制となっています。現在は全面的に立ち入り禁止ですが、近くに行くだけでも特別に神聖な雰囲気に包まれた場所であることがわかりますよ。
地図:Yahoo!地図情報
■ウドゥンミャー(久高殿)・ウフグイ(外間殿)
琉球王朝時代、久高島におかれた祭祀を取り仕切る女性司祭者(ノロ)のそれぞれの主祭場。東の久高ノロをウドゥンミャー(久高殿)、西の外間ノロをウフグイ(外間殿)と呼び、久高島の2大祭場となっています。イザイホーの舞台となったことでよく知られていますが、他にもマッティ(麦の収穫祭)、ウブマーミキ(大漁祭)、ハティグァッティ(お払い、健康祈願)などの祭祀も執り行われているとても神聖な場所。
地図:Yahoo!地図情報
■イシキ浜
ただずっとここで静かに海を眺めていたい、そんな気持ちになるのがイシキ浜 (C)OCVB
島の南側にある自然そのままの白砂の美しいビーチです。ビーチといっても泳ぐというよりか、眺めて過ごすのによさそうな感じ。その昔、五穀の壷が流れついた場所だと伝えられています。また斎場御嶽での祭事の際、このイシキ浜の白砂を運び敷き詰めたとも言われています。古来より島の人たちはこの海の向こうにニラーハラー(ニライカナイのこと。久高島ではこう表現します)があると信じ祈りを捧げてきた場所でもあります。
地図:Yahoo!地図情報
■メーギ浜
海水浴場にもなっている久高島の夕陽ポイント。
地図:Yahoo!地図情報
■ウパーマ
カベールへ行く途中にある大きなビーチ、ウパーマ。人影も少なくのんびりと過ごせます
地図:Yahoo!地図情報
■ロマンスロード
久高島散策は自転車で風を切りながらが最高に気持ちよい! (C)OCVB
島の北西の海沿いにあるきれいに舗装された道路。晴れている日のここからの海の眺めはなかなかに素敵です。小さな島ならではの素晴らしい海の色を楽しむことができます。
地図:Yahoo!地図情報
久高島を訪れる時の注意
島の自然やそこで暮らす人々に心からの敬意を持って、観光者はお邪魔させていただいているという気持ちを持ってほしいのはどこの島を訪れるときも同じ訪れる側の基本のマナーですが、ここ久高島では他の島にも増して神聖な場所が多いため、さらなる理解と注意が必要です。島の人々は自然に祈りを捧げ、彼らの聖域を守っています。御嶽に足を踏み入れないのはもちろんのこと、むやみやたらに道から外れて歩くのは島中が聖域とも言える久高島ではとっても危険。気がつかないうちに、神聖な場所に入り込んでいる可能性が大ですからね。お邪魔させていただいているという謙虚な気持ちを持って、ゆったりと静かな気持ちで島散策を楽しんでください。また、珊瑚や石、植物など、自然のものをむやみに島から持ち出すことも厳禁。島のものを勝手に持ち出すと、神様のお怒りに触れると言われているので要注意です。久高島のHPには島を訪れる観光者への注意事項が載っているので、久高島行きを考えている人は行く前に一度読んでみることをオススメします。
久高島の行き方
久高島までのアクセスは、沖縄本島南部、知念の安座真港から久高海運の運行する船路となります。所要時間は高速船で15分、フェリーで20分。また、他にも不定期高速海上タクシー海峡があり、こちらは約10分。久高海運 安座真連絡所 098-948-7785
久高島連絡所 098-948-2873
不定期高速海上タクシー予約先 ジュピター観光098-947-3296
神の島と言われる久高島をざっと紹介しましたが、いかがでしたか? 沖縄を何回か訪れていてまだ久高島に行ったことがないという人は、ぜひ次回の沖縄旅行のプランに久高島を入れてみてください。本島では見ることのできない違った沖縄の姿に出会えます。
久高島には猫たちがいっぱい! のんびりとひなたぼっこを楽しむ様子に思わずほっこり
そして、なんとなく久高島に深い興味を覚えたという人は、ぜひ日帰りではなく泊まりで訪ねてみてください。これはどの島にも言えることですが、ガイドは夜を過ごしてみて初めて少しだけその島のことがわかるような気がします。もちろんたったの一夜や数夜過ごしただけでその島の何がわかるというわけではないのですが、少なくとも昼間太陽の下だけでは感じられない何かもっと根本に近い空気をうっすらながら感じることができると。
みなさんと久高島との出会いが素晴らしいものでありますように。