高級車に課された“性能と効率の両立”
昨年11月に開催されたロサンゼルスモーターショーで初披露された、2代目となる4ドアクーペCLSのハイパフォーマンスモデル。AMGが新開発した5.5リッター直噴ツインターボエンジンに7速スピードシフトを組み合わせる。サイズは全長4996×全幅1881×全高1406mm
ただ、高級セグメントにおいては、エコ対策の成果よりも、さらなる高性能化をアピールしなければならないというジレンマもまだある。走らないフェラーリは要らない、は極論だとしても、ユーザーは、たとえばフルモデルチェンジにあたって、性能のわずかな縮小を許すほどにはまだ成熟しきれていない。
一定のエコ化以上に、パフォーマンスの向上を訴える必要も残っているのだ。そこには地球環境保護に対して自動車そのものがもつ究極的なジレンマが顔をのぞかせているわけだが、それはともかくとして、右手に花束/左手にピストルといった“二重人格”を、もうしばらくは性能と効率の両立を技術的なチャレンジで克服したとして、積極的に謳っていかなければならない。
今、高級車に限らずその手段としてもてはやされているのが、直噴化して過給したダウンサイジング・エンジンと、効率的な多段ミッションをペアで採用する方法だ。VW・アウディがその先鞭を付けたが、メルセデスやBMWも追従の姿勢をみせている。好対照にあるのが、ハイブリッド化を推し進める日本のレクサスということになろうか。
AMGパフォーマンスパッケージは過給圧を1.0から1.3へアップ、カーボン製エンジンカバーなどを備える
この新型CLS63AMG PPと自然吸気6.2リッター(M156)エンジンを積む旧型CLS63とを比べれば、+36psのパワーアップを果たしながらも、燃費は32%も向上しているというのがAMGメルセデスの主張で、なるほどそれならパフォーマンス重視のユーザーから不満の声も上がりそうにない。ちなみに、CO2排出量を2012年までに3割減らすというのがAMGメルセデスの公約だ。
来年以降は(ひょっとして)違うのかも知れないが、今年は全くもって“わざわざ見に行く”価値のなかったデトロイトショー。ここでも主題はやはり“効率と性能の両立”であったが、そんなヒートテックが必要な極寒の地から、陽光のもとならばTシャツでも過ごせそうなサンディエゴに場所を移しての、新型CLS63AMGのテストドライブとなった。