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相互厭人的読書生活1(3ページ目)

読んだ本についての記録です。タイトルの「相互厭人的」は、ヨシフ・ブロツキイ『私人』の〈小説や詩は独り言ではなく、作者と読者の会話〉であり、〈他のすべての人を締め出す極めて私的な〉〈「相互厭人的」な会話なのです〉という文章にちなみました。

石井 千湖

執筆者:石井 千湖

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やっと読んだKAGEROU

似顔絵

上海在住のイラストレーター、ワタナベマキコさんに描いていただいた似顔絵。「相互厭人的読書生活」のアイコンにします。よろしくお願いします。

2日はあと、書評を書くために伊藤計劃『ハーモニー』を再読。主人公の少女時代のカリスマ、ミァハが本についていうことが、ブロツキイの『私人』とつながる気がした。読んだ本同士が自分のなかでリンクするとうれしい。

良いこと、善、っていうのは、突き詰めれば「ある何かの価値観を持続させる」ための意志なんだよ。

という言葉も、至言。

3日、やっと齋藤智裕『KAGEROU』を読む。発売されたのが仕事量がピークだった時期で、素早いレビューをいくつか目にしてしまったこともあり、もうかなり出遅れたんだから少し時間をおいて読もうと。

俳優・水嶋ヒロの顔がどうしても脳裏を過り、虚心坦懐に小説に向き合うことができなかった。が、バカボンのパパについての他愛ない会話など、えもいわれぬ味わいが。はじめはあの美青年がなぜ40歳の冴えないおじさんの話を? と思ったのだが、最終ページに至って、美青年のなかにダジャレ好きのおっさんを棲まわせている人なのだなと納得。

Twitterでポプラ社小説大賞の受賞者の名前が水嶋ヒロの本名と同じという情報が流れ、初版43万部で単行本が発売され、ワイドショーは大騒ぎ、Amazonレビューは大荒れ、週刊誌には舞台裏のゴシップが載り……。考えてみれば、この本をめぐる状況も『醜聞の作法』みたい。
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