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2010年ドラマベスト5は「普通の人が一生懸命生きる」(2ページ目)

いよいよ押し迫ってきました。恒例企画、2010年のテレビドラマ・ベスト5です。今年のドラマを通して2010年を振り返ってみましょう。

黒田 昭彦

執筆者:黒田 昭彦

ドラマガイド

3位『火の魚/その街のこども』

両方とも渡辺あや脚本でNHKの地方局制作(広島と大阪)、どちらがいいかというのも選べないし『火の魚』は最初の放送が中国地方限定で昨年7月、今年か?というのがやや微妙なのでセットで。

魚拓

魚拓

『火の魚』は室生犀星が自身をモデルにした小説が原作。創作意欲がなくなり瀬戸内海の島に引っ込んで官能小説を書いている村田省三(原田芳雄)に新しい担当編集の折見とち子(尾野真千子)がやってくる、と偏屈な老人と若い女性のやりとりが中心。金魚を新作の表紙にするため魚拓にして殺してしまったり、とち子がガンを再発したりで、最終的には「死」がテーマであることがわかります。

おもしろいのがとち子の言葉が「僭越ながら」「滅相もない」「お言葉を返すようですが」などものすごく古風なこと。携帯電話は使っているので現代のはなしなのに。時代にういているヒロインのキャラを象徴しているんでしょうか。

『その街のこども』は神戸出身の森山未來と阪神・淡路大震災当時は神戸の中学生だった佐藤江梨子演じる男女が、深夜に震災15年の神戸を歩き、その中でそれぞれ秘めた記憶をさらけだしていくというストーリー。
事実を受け入れることは時間がかかるということがよくわかります。制作のNHK大阪自体もこれまで何度かドラマの題材にしていますが、あまりいい出来ではありませんでした。フィクションとして消化するにも時間がかかります。

『火の魚』はモンテカルロ・テレビ祭・ゴールドニンフ賞、イタリア賞・単発ドラマ部門・最優秀賞など国内外で授賞多数。『その街のこども』は映像を追加した劇場版が2011年1月15日から全国で順次公開と放送後の評価も高いものがあります。

両作の脚本を担当した渡辺あやは島根県在住、映画『ジョゼと虎と魚たち』『天然コケッコー』などを手がけ、どれもセリフの切れがすばらしい。今後も期待したいと思います。


2位『Mother』

『Mother』は初回が映画かスペシャルドラマみたいなクオリティでした。もうすぐ大学に戻れる小学校教師・鈴原奈緒(松雪泰子)が虐待されている道木怜南(芦田愛菜)を連れて逃げるという冷静に考えると無茶なストーリーを、やむにやまれないことだった思わせる説得力があり見事。

その後も逃避行を続ける二人に毎回号泣させられます。メインの疑似母娘だけじゃなく、奈緒と実の母(田中裕子)、育ての母(高畑淳子)、できちゃった結婚の予定が胎児に心臓の障害があることがわかり悩む奈緒の妹・芽衣(酒井若菜)、そして怜南と実の母(尾野真千子)とさまざまな母子の姿を描き、それぞれに共感できます。

「泣ける」度では近来まれにみる名作です。そして4~6月に放送された時には、よっぽどことがなければこれで今年のベストは決まりだ、と思っていました。しかし……

1位はこれだ

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