雑貨/インテリア雑貨関連情報

刺繍作家・小林モー子さんの世界

Crochet de luneville (クロッシェ・ド・リュネビル)と呼ばれるかぎ針を使用した本格的オートクチュール刺繍で作品を生み出し、刺繍の新しい領域を模索しているアーティスト、maison des perles(メゾン・デ・ペルル)の小林モー子さん。彼女の作品は、繊細で可愛いらしくありながらどこかとぼけていてユーモラス、そしてエレガントなモード感を併せ持つ、不思議な魅力を持っています。

江澤 香織

執筆者:江澤 香織

雑貨ガイド


ユーモラスでドッキリ、そしてどこか愛おしい作品たち。

ユーモラスでドッキリ、そしてどこか愛おしい作品たち。


小林モー子さんの最近の展示は、恵比寿のgallery deux poissons(ギャラリー・ドゥ・ポワソン)にて、12月25日まで開催されました。こちらでは主に1930年代のアンティークビーズを使用した様々なアクセサリーを発表。

電球、マンボウ、矢印など、お茶目なモチーフのプチピンブローチ。

電球、マンボウ、矢印など、お茶目なモチーフのプチアクセサリー。


動物や植物は種類も多く、他にグラスやキャンドル、タバコなどの道具、そしてクリスマスやお正月など季節感を添えたもの、さらにオバケや宇宙人などややシュールな生きものたち。子供の頃から絵を描くことが好きだったという、モー子さんならではの自由で個性的な落書きワールドが広がっています。
犬、ネコ、ウサギなど動物モチーフは特に人気。

犬、ネコ、ウサギなど動物モチーフは特に人気。


上の写真は人気の犬シリーズ。左の犬は足がブラブラ、右はくわえた光りものがブラブラするところがポイント。ちょっとした小粋なディティールに味わいがあります。愛犬家から注文が殺到してしまい、制作が追いつかないことも多いとか。敷き詰められたビーズは、一針一針全て丁寧に手刺繍されたものです。フランスのアンティークビーズは日本で見かける一般的なビーズより、さらに細かく小さく、まるでパンに乗っているケシの実みたいにちっちゃな粒々です。モー子さんほどの技術者であれば、楽しく仕上げてしまいそうですが、普通の人が見たら気が遠くなるような、繊細で緻密な作業です。

大月雄二郎氏とのコラボ作品。全て刺繍です。

大月雄二郎氏とのコラボ作品。全てビーズ刺繍です。


モー子さんはアパレルのパタンナーを経て2004年に渡仏。Ecole Lesage broderie d'artにてオートクチュール刺繍を学びディプロムを取得しました。その後、画家の大月雄二郎氏とコラボレーションして世界各国で作品を発表したり、ウエディングドレスをEmmanuel Martyとコラボレーション制作。ウエディングやアクセサリーの個人受注も受け、各地で作品を展示するなど様々な経験を積んだ後、2010年の春に帰国しました。
日本では見ることのない、珍しいビーズやスパンコール。

日本では見ることのない、珍しいアンティークビーズやスパンコール。


そんなわけでさっそくモー子さんのアトリエへ伺ってみると、東京中が見渡せる気持ちのよい高層ビル!眺め最高です。そして部屋にはアンティークビーズやスパンコール、刺繍糸がどっさり。手作り好きなら、きっとワクワク興奮してしまうでしょう。昔のビーズは色が繊細で、時を経たからこその独特の質感があります。例えば白といってもひと言では表現できない、真珠のような控えめなきらめきや、ガラスならではの素朴な透明感、優雅でどこか温かみのある、なんとも心惹かれる心地良い色をしています。

さて、こちらのアトリエでは自身の作品制作や、刺繍教室を開催しています。刺繍の制作作業をちらりと見せていただきました。
オートクチュール刺繍に欠かせないかぎ針を使った特殊テクニック。

オートクチュール刺繍に欠かせない、かぎ針を使った特殊テクニック。

写真では分かりにくいかもしれませんが、先端に引っかかりのある細いかぎ針で、布の裏から刺していきます。ビーズの場合は最初から全て糸に通してあり、それを一粒一粒裏から糸で細かくかがっていきます。教室では最初は薄いオーガンジー布を使うので、裏の様子が透けて見えますが、本来の刺繍は様々な布を使うため、裏は見えず手の感触で様子を確認しつつの作業。まさにプロの領域です。

「教室では一からしっかり技術を学べるように、順を追ってカリキュラムを組んでいます。日本で本場フランスのオートクチュール刺繍を学べるところはそうそうないので、楽しみながらじっくりと着実に、本格的な技法を習得していただけたら嬉しいです」。

教室は今ならまだ生徒募集中だそう!刺繍テクニックを本気で身に付けたい人にとっては、またとない機会なのでは。眺めの良い部屋で、フランスアンティークに囲まれて刺繍を学べる、とても素敵な環境です。

細い針の先端が、糸に引っかかるように僅かに曲がっています。

右が使用する針。細い針の先端が、糸に引っかかるように僅かにかぎのように曲がって凹んでいます。左は教室で完成させる刺繍の一部。スパンコールやモールなどを使い、様々な技法を習得していきます。


刺繍のテクニックは多様で、たくさんの技法があるけれど、自身の作品は技術を見せたいわけではないから、とモー子さん。

「手芸というとどうしても伝統工芸に縛られて、やや古くさい雰囲気を持ってしまうことがあるのですが、技術を身に付けることは大切で楽しいことだけれど、もっとアートとしての見せ方や新しいスタイルを表現したくて、自分なりに現在も試行錯誤を続けています」。

モー子さんの作品や活動は、これからもっと大きく広がっていきそうな予感です。2月には、以前紹介した「tmh.」の古田智彦氏とコラボレーションして、新宿伊勢丹での展示を予定しているとか(2月16日~22日)。

やや混沌とした感じが面白くて見入ってしまう、アトリエの一角。

やや混沌とした感じが面白くて見入ってしまう、アトリエの一角。大月雄二郎氏の作品もちらりと飾ってあります。


最後にモー子さんは何でモー子さん??日本人だとどうしても「ウシ?」と思われてしまうことも多いそうです。

「子供の頃、『モットさん』というピエロを描いて遊んでいたんですよ。それからモーちゃんとか、モー子とか言われるようになって。パリでも友人からそう呼ばれていたので、そのまま名乗るようにしちゃったんです。印象的な名前なので、みんなすぐ覚えてくれるんですよ」。

一度聞いたらとても忘れられない名前です。


小林モー子HP「maison des perles」
http://www.maisondesperles.com/
※教室のお問い合わせもこちらへ
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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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