食欲がなく絶食した場合、体重はどれくらい減る?
単純計算で、体重60kgの人は1日(24時間)に60×24=1440kcal消費します。脂肪酸は9kcal/g、糖は4kcal/gで計算すると脂肪酸だけ燃やしたら1440/9=160g、蛋白質を糖に変えて燃やしたら1440 /4=360g。寝込んで絶食して筋肉量が減ると消費熱量も減ります。一方、体は蛋白分解量を減らして中性脂肪の分解量を増やします。実際は、この間の数字となり、1日に約200gずつ体重が減っていくことになります。筋肉が落ちてしまう仕組み
少し専門的になりますが、筋肉が落ちてしまう仕組みを解説しておきます。食事を数日抜いた場合、最初に痩せるのは肝臓で、2番目に痩せるのは筋肉です。体で熱量となるのはブドウ糖と脂肪酸。ブドウ糖になる化合物を保存していてブドウ糖を血中に放出するのが肝臓です。目には見えませんが、絶食して最初に痩せるのはこの肝臓。肝臓の重さは約1kg、その約10%がブドウ糖になるグリコーゲンですが、絶食している時はブドウ糖を筋肉は取り込まないのでブドウ糖を使うのは主に脳です。概算であらかじめ肝臓に蓄えていたブドウ糖(グリコーゲン)は絶食1日目でなくなってしまいます。逆にいうと1日程度の絶食は大きな影響はありません。
肝臓はブドウ糖がなくなると「糖新生」といって糖以外からブドウ糖の合成を始めます。主な材料はアミノ酸とグリセロールです。アミノ酸は筋肉由来でグリセロールは脂肪細胞の中性脂肪由来です。グリセリンは中性脂肪のうち10%程度なので実際は筋肉からのアミノ酸が主な材料となります。絶食すると2番目に痩せるのは筋肉ということになります。
「糖新生」以外にも蛋白質は必要です。消化管の場合、胃や小腸の細胞は消化管内に落ちていった場合、消化吸収されてある程度再利用できます。大腸は水分しか吸収しないので大腸から落ちた分は排泄されてしまいます。主成分が蛋白質で再利用できないのが皮膚です。量的には少ないのですが皮膚の分の蛋白質も必要です。蛋白質を蓄えているのは筋肉なので皮膚の分に相当する蛋白質分も筋肉が減っていきます。
なぜ人体には糖質の蓄えが少ないのか、疑問に思う人がいそうですね。脳が必要なのは糖質。蓄えで使えるのは肝臓の分の100g程度。もっと蓄えがあれば良いのにと思うところです。植物が蓄えている澱粉もブドウ糖からできています。米粒を見ればわかるように、蓄えるのに水分をあまり必要としません。その代わり、すぐにはブドウ糖にはなりません。ヒトが蓄えているグリコーゲンはすぐにブドウ糖に変える事ができます。その代わり、蓄えるための水分が必要です。ヒトは大量にはブドウ糖を蓄えずに水分を節約して糖新生を利用しています。言い換えると筋肉はアミノ酸の形で糖を蓄えているのです。
また、蛋白質を積極的に薦めない理由もあります。絶食で減少するのは蛋白質をためこんでいる筋肉。脚を動かす筋肉は、1~2日動かさないだけで減少してしまいます。この脚の筋肉は起き上がって歩かないとは戻らないので蛋白質摂取を積極的にはお薦めしません。
寝込んだときに備えて室温保存できる非常食の準備を
一人暮らしの場合、急な体調不良に備えた「非常食」を備えておくことも大切でしょう。食欲がない場合や、全く何も食べられない絶食状態から回復のための非常食として考えると、室温保存できて入手が簡単で普段も食べることができるものが良いでしょう。筋肉の減少を予防するために1日に必要な糖は、120gから180gです。例えば室温保存可能な果物ジュースの場合100g(100mL)で10g相当の糖質ですので、200g(200mL)を 1パックとすると6パック分で120gから180gの間になります。糖質ならば砂糖から取るという考えも成り立ちます。砂糖だけでは飲みにくいのでお湯を使う元気があるならば砂糖入りの紅茶やジャム入りの紅茶がお手軽です。ミネラルを考えるならば蜂蜜入りという手もあります。もっと手軽に、果物の缶詰を何個かストックしておくのもよさそうですね。ドライフルーツ(砂糖漬けも含む)のレーズン、プルーン、干し柿、干し杏、パイナップル砂糖漬け、乾燥マンゴなどをストックしておくのもお薦めです。
少しぐらいなら食べられそうな場合は、トーストにジャムや蜂蜜をお薦めします。細かいことを言うと、トランス脂肪酸を含むことやアミノ酸の組成に多少問題があったりもするのですが、この方法なら糖質だけでなくて蛋白質も摂取できます。トーストを数枚食べれば、筋肉を減らさないための最低限の糖質を摂取できるでしょう。
室温保存できる手作りジャムレシピ
糖分豊富な手作りジャムを作りましょう!
用意するのは
- 冷凍のブルーベリー 200g
- 黒砂糖(白砂糖でも可) 200g
それぞれ無理のない方法で工夫して、上手に体調不良を乗り切りましょう。
なお、ノロウイルスの対処法については、「ノロウイルス撃退! 消毒液の作り方」に詳述していますのであわせてご覧下さい。