(なお、女性の場合は、現在の平均寿命が86.44歳です。1950年に60歳を超えるまでは男性とあまり変わらなかったものの、1960年に70歳、1984年に80歳を超え、男性より長寿化が進みました)
こうした平均寿命の伸びに対して、会社員の「働ける年齢」はあまり伸びませんでした。会社員の定年年齢は戦後長らく55歳であり、ようやく60歳定年に切り替わり始めたのは実は1980年からなのです(完全に60歳定年が義務づけられたのは、実は1998年とつい最近のことだったりします!)。
1980年の男性の平均寿命はすでに73.3歳ですから、ここに13年以上の「老後」が誕生することになりました。老後の生活を10年以上考えるようになったのは実は戦後のことなのです。
今のところ定年年齢が65歳へ義務化されてはいません。60歳の定年年齢と、現在の私たちの平均寿命を比較すると、実に約20年の「老後」を考えなければいけなくなっています。
定年と寿命の差を「老後」の時間と言いましたが、この「老後」というのは「給料のない期間」であり、その経済的準備は定年までに考えなければなりません。
とはいえ、20年の生活の経済的準備を60歳になるまでに考えるわけですから、これはなかなか大変なことです。しかも20歳以降になって就職することを考えれば老後の20年間の生活費の準備を、社会人生活を送る40年でやらなければいけないわけです。極端な話、「2年間の年収から将来の1年分の年収を貯めておく」くらいのペースが必要です。これはかなり大変なことです。
これが「老後」のことを真剣に考えなければならなくなった第1の理由なのです。
国の年金だけではやりくりできなくなったのも最近のこと
国の年金が大変になったのも、実は最近のことです。戦後、国の年金制度は一貫して年金水準の充実に取り組んできたからです。年金額が減る、という取り組みが動き始めたのも1990年になってからのことです(65歳年金受取開始への切り替えも1985年くらいから)。実際、統計を見ると、「老後は国の年金だけで暮らしています」というお年寄りが5人に3人(60%)もいます。80%~100%に広げると4人に3人です(73%)。
要するに、上の世代は「老後の準備」を個人的にはしていなかったということです。私たちだけが準備がおろそかだったのではなく、みんな十分ではなかった、ということなのです。
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