私たちはたぶん、老後準備を初めて真剣に考えた世代だ?
老後のことに関心が高まっています。公的年金は下がるし、景気はぱっとしないままだし、若い人も老後に不安を覚えているようです。もしかすると、「今までの先達は、きちんと老後のことを考えていたのに、私たちは考えていなかったんだろうな」と思っている人もいるかもしれません。
しかし、それはほとんど誤りです。信じられないかもしれませんが、実は老後のことをきちんと考えたのは私たちの世代が初めてなのです。
実は今までの世代は「考える必要があまりなかった」か「考えなくても、まあなんとかなった」のです。
ですから、自分たちを卑下する必要はまったくありません。某映画のキャッチフレーズを借りれば「私たちはたぶん、老後準備を初めて真剣に考えた世代」なのです。
将来設計への意識付けを考えるヒントとして、運用や制度論とは違う、少し角度の違う話をしてみたいと思います。
上の世代はちゃんと計画しなくてもなんとかなった世代?
まず、江戸時代以前については、まともに老後の準備をしている人はなかったといってもいいでしょう。なんといっても寿命は短かったのです。「人生50年」といいますが、平均寿命でいえば50歳程度と言われています(乳幼児死亡率が高いことも平均寿命が低い理由のひとつで、2人に1人は60歳に達していたと考えられています)。また、働ける限り働くことが基本でしたので、何十年もの老後を無職で過ごすという想定がまったくありませんでした。
老後を計画的に準備する必要が生まれたのは、定年のある会社員という働き方が定着してきたことと、定年後の年数が飛躍的に長くなったことによります。
会社員という働き方は大正時代の頃にポピュラーなものになり始めました。それまでは勤め人といっても、個人商店に丁稚奉公するような形、住み込みで働くような形が多く、これも働ける限り働く(あるいは独立して働く)ことになるので、老後のことをあまり考える必要がなかったのです。
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