アルファロメオ/アルファロメオ

このミトから新しいアルファロメオがはじまる(2ページ目)

アルファミトの大本命、TCTを搭載したモデルが日本デビューを果たしました。マルチエアエンジンと共にオールブランニュー“パワートレイン”のミト。今、ミトでこれを選ばない理由はありません。

西川 淳

執筆者:西川 淳

車ガイド

 

冷静と情熱を併せ持つ、実用車のひとつの極みである

アルファミト

新型のマルチエア・エンジンは電子制御式油圧バルブコントロールにより、吸気バルブで直接空気量を調節する技術を採用。低回転域でのトルクを15%向上、燃費消費量とCO2排出量を10%低減するという。最高出力は135ps、最大トルクは通常190Nmだがダイナミックモード使用時には230Nmまでアップする


あらためて日本に上陸した右ハンドル仕様のマルチエア+6速TCTに乗ってみての感想はというと、エンジンとミッションの相性の良さにミッションそのもののデキの良さが加わって、ライドフィールが一段と洗練されたと言っておく。初期型に比べて、シャシー周りから受ける印象は、人がいうほど違うとは思わない。ミトはそもそもがつがつしたスポーティな走りのクルマではなかったし、足回りのしなやかさはプントアバルトなどに比べても随分、オトナな味つけだった。

そこに、洗練されたミッションが加わり、ミッションに似合ったトルクバンドの広い最新エンジンが組み合わさったわけだから、必然的に走りの質感レベルはいっそう上がった。そういう意味では、ミトの性格は変わることなく新しいシステムによってその質だけが向上したといえるだろう。

とにかく、ミッションのデキは素晴らしい。積極的にスポーティな変速を試みる場面などでは、ことによるとVWのそれよりもツナギの心地よさで勝っている。アイドリングストップもごく自然で、再始動時のストレスもなく、特に(アイドルストップすることを)気にせず街中を転がすことができた。

特にDNAをダイナミックモードにして、エンジンパワーを存分に引き出し、しなやかなアシ回りをグッと引き締めて走らせるような場面では、ステアリングホイール(とその先のインフォメーション)に集中できる2ペダルMTの恩恵を十二分に感じることができる。指先だけで可能なスムースかつ電光石火の変速は、ドライバーの自由度を相当に広げてくれるからだ。

ドライビングファンのあるアルファロメオだからこそ、デキのいい2ペダルの恩恵は大きかったといえそうだ。3ペダルで機械と繋がることの楽しさと、さて、どちらを取ったものか。とても悩ましいが、現時点では2ペダルに軍配が上がる。

その理由のひとつとして、エンジンの特性を挙げることができるだろう。最近の高性能かつ燃費重視の直噴エンジンは、決してブン回して楽しむタイプではない。トルクバンドの広さを利用し、できるだけトルク落ちをさせずに変速タイミングを考えながら走らせる必要がある。手動式のミッションをもってしても、そこから官能的なエンジンフィールを取り出すことはできないのだ。端的に言って、回して甲斐のないエンジンをMTで操っても、そう面白くない。特にスポーティな走りの場面ではそうである。

となれば、ペダル操作をする面白みは半減し、むしろ面倒なものになってくる。だったらむしろ気持ちよくラクに確実に燃費良く変速してくれる2ペダルのTCTでいいじゃないか、となるわけだ。

だから、新しいマルチエアにアルファロメオらしいエンジンフィール(と一般的に思われているもの)を期待してはいけない。低回転域からきっちり力を出していて、それを上まできっちりレスポンスよく持続する様は、従来のエンジン性能を大きく上回っている。

その代わり、エンジンを回してさえいれば乗り手がゾクゾクするような官能的な説得力はないのだ。格好とエンジンだけで勝負する時代は終わった。こんどは総合力というクルマ本来の方法によって、ミトはアルファらしい“愉快な走り”を提供してくれる。それは新型ジュリエッタにも繋がる、新しいアルファの走りでもある。

熱いだけが能じゃない。オッサン向きのクルマが、時に熱く変身する。実用車の、ひとつの極みとしてのアルファ。昔からアルファロメオはそういうクルマだったのだ、実は。

アルファミト

ボディサイズは全長4070×全幅1720×全高1475mm。ラゲッジ容量は270~950リッターを確保。カラーはレッド、ホワイト、グレー、ブラックを用意する

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