金沢の観光・旅行/金沢の観光スポット

金沢で金箔の美を満喫

金沢は「金の沢」という、金がどんどん湧いてくるような富気に満ちた名前ですが、実際に日本の金箔はそのほとんどが金沢で作られているのです。金箔の本場で本物の金箔が放つ重厚な輝き、そして美しさに隠された職人の技のすごさを感じてみてはいかがでしょうか。

執筆者:小林 万希子

金箔の美しさを満喫しよう

金箔

金箔

金沢の金箔生産のシェアは全国の98パーセント以上を占めているといわれています。そんな金箔大国金沢で、長年金箔の魅力を伝えてきた美術館「金沢市立安江金箔工芸館」が2010年の秋に移転し、リニューアルオープンしました。新しくなった金箔工芸館にはより一層金箔と親しくなれる仕掛けがいっぱいです。

金箔との出会い

展示室の入り口

展示室の入り口。左側に見えるのが、金箔のスクリーン

展示コーナーに足を踏み入れると、まずは光と映像が金箔の世界にいざなってくれます。イメージ映像が映し出されるスクリーンは金箔を貼ったもので、金ならではの重厚な光を放ちます。

 

金箔と金沢の歴史

年表

この年表で金沢と金箔との歴史がわかる

金沢で金箔の生産が始まったのは、戦国時代の武将で加賀藩の藩祖・前田利家が命じてからだといわれています(1593年)。その後、徳川幕府により金などの取り扱いが規制されます(1696年)。金を使って作られていた貨幣の質が悪くなるのを防ぐのが目的でした。

でも実はこっそりと金箔が生産され、やがて町民の運動によって「加賀藩でも金箔を作ってもよい」という許可が出ました(1864年)。仏壇や蒔絵など他の伝統工芸にも支えられ、その技術は脈々と受け継がれて現在の金箔大国の地位を築いたのです。

しかし、伝統工芸の世界によくある後継者不足は金箔の分野も例外ではなく、生産に携わる職人の数は多い時では1500人くらいだったのに現在では組合に入っている人でおよそ80人だということです。

職人の技

箔打ち作業

ハンマーでたたいている和紙の間に金箔が一枚一枚入っている。枚数は1600枚から1800枚で、金箔を間に挟むのも技がいる。現在はハンマーは機械化されている

安江金箔工芸館はもともと安江孝明さんという金箔の職人さんが作った美術館でした。このため、金箔を作る道具などが詳しい説明とともに展示されています。

金箔の製造工程を紹介

金箔の製造工程を紹介

金箔の製造工程は17段階に分かれていて「上澄み職人」が厚さおよそ千分の1ミリまでにし、その後「金箔職人」が引き継ぎます。

金箔職人の仕事に「箔打ち」の工程があり、和紙の間に金を挟んでハンマーでたたいてのばし、ある程度の薄さになったら、また切り分けて別の紙に挟んでたたいていくという作業で、目指す厚さはおよそ1万分の1ミリ。現代では機械のハンマーですが、打つ場所は職人が手で動かして調節しなければなりません。職人の勘がものを言います。

箔うつし作業

箔を和紙に移す時は竹ばしで行う。しわになったり、くっついたりしやすいので、とても神経を使う

一方箔を打つのに欠かせない和紙ですが、こちらも職人さんの手で作られていきます。金箔の出来は紙にも影響されます。気温や湿度の変化にも、紙職人、箔打ち職人双方が気を配らなければならず、ひとつとして同じものはできません。



金箔のオドロキの薄さを実感!

思わず「そんなに薄いんですか」と口をついてしまうコーナーがあります。金箔の厚さは1万分の1ミリ。めちゃくちゃ薄いのはわかりますが、ピンと来ない人が多いのでは? そんなもやもやを解消してくれるコーナーです。

金箔の薄さを髪や新聞紙などと比較

金箔の薄さを実感! 右から金箔、髪の毛、朝顔の花弁、新聞

金箔を1000倍した厚さを基準に、新聞や髪の毛、ラップフィルムなども同じ倍率に拡大して、薄さを比較しています。

新聞は広辞苑、髪の毛などは細めのロールカステラ、ラップフィルムにいたってはところてんか寒天か、ほんとに思わず笑ってしまうほど分厚いのです。金箔がいかに薄いか、瞬時に理解することができます。

 


金の重さを銀や銅などと比較

金の重さは? ちなみに負荷をかけたレプリカなので、心おきなく触れます

さて、この筋金入りの薄さとはうって変わって、金自体はほかの金属と比べて非常に密度が高いのです。つまり同じ大きさでも重みがかなりあるのです。

いかに金が銀や銅、アルミなどほかの金属より重いのか実際に持って体感することができるコーナーもあるのです。






息をのむ金箔工芸の美しさ

金糸を使った能装束

金糸を使った能装束

安江金箔工芸館の所蔵品は美術工芸品、道具類を合わせておよそ500点。企画展ではさまざまな金箔の使い方をした工芸品を公開します。

企画展示室

企画展示室では貴重な美術工芸品を紹介

例えば、屏風や観音像、蒔絵、象嵌、焼き物など、技術的に優れているものや保存すべきもの、また金沢にゆかりのある人の作品など、テーマに合わせて紹介していきます。

企画展の展示替えは年に4、5回行われる予定です。

ところで、この建物には金箔の研究所・金沢箔技術振興研究所が併設されています。金箔の可能性や販路をいかに広げていくかなど、いろいろな角度から研究を行っています。世界的に中国産の金箔が手に入りやすくヨーロッパなどでも需要が多いということですが、金沢ブランドの箔は質も高く、長い年月にも耐えられるということで、改めて世界に向けての発信が期待されるところです。



金沢市立安江金箔工芸館

金沢市立安江金箔工芸館。橋場町交差点から浅野川を渡った大通り沿い右手にあります

金沢市立安江金箔工芸館
住所:金沢市東山1--3-10
TEL:076-251-8950
観覧料:300円
開館時間:9:30~17:00(入館は16:30まで) 
休館日:年末年始(12月29日~1月3日)、展示替期間
アクセス:金沢駅から路線バスで約8分「橋場町(はしばちょう)」下車徒歩約5分
地図:Yahoo!地図情報

☆市内の15の文化施設で利用できる共通観覧券もあり(有効期間が1日500円、3日間800円、1年間2000円)
利用できる施設の窓口で購入できます


安江金箔工芸館は金沢の人気観光スポット「ひがしやま茶屋街」のすぐそばにあります。金箔は重要な金沢の伝統工芸のひとつ。文化形成の根っこを押さえてから周辺を散策してみると、より一層金沢を楽しめると思いますよ。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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