住宅ローン控除を受けるには、その年の年末まで住んでいることが条件
住宅ローン控除は、控除を受ける年の年末借入残高によって、控除額が異なります。現行制度では、住宅ローンの年末借入残高4000万円(認定住宅は5000万円)が上限で、その1%、最高40万円(認定住宅は50万円)が所得税から、毎年控除されます。適用期間は10年(または13年※)で、ローンの返済期間が10年(または13年)を切るとその時点で、住宅ローン控除は終了となります。住宅ローン控除の適用を受けるには、取得後6カ月以内に居住を開始し、さらに、その年の12月31日まで引き続き住んでいることが条件となっています。
※消費税率10%が適用される住宅を取得して、令和元年10月1日から令和2年12月末までの間に入居した場合には、控除期間が10年から13年と3年間延長されます。
この「12月31日まで引き続き住んでいること」というのが重要で、住宅ローン控除を受けるための最低限の条件のひとつになっています。では、マイホームを取得したばかりなのに、転勤によって転居せざるを得なくなった場合は、どうしたらいいのでしょうか。転勤といっても、単身赴任の場合もあれば、家族全員で転居する場合もあります。単身赴任の場合は、家族(生計を一にする家族)がそのまま住み続け、所有者が転勤終了後、戻ってくると認定されれば、住宅ローン控除を受けることができます。しかし、家族全員で転居の場合は、住宅ローン控除を受けることはできなくなります。
転居から戻ってきたら、再度受けることができる
もうこの家に住むことはない、という転居の場合は、住宅ローン控除を受けられませんが、転勤から戻ってきた場合は、再び、住宅ローン控除を受けることができます。以下のケースで説明しましょう。 まず、2016年6月に住宅を取得し、7月に入居しています。その年と翌年2017年12月年末まで引き続き居住していますので、住宅ローン控除は受けられます。2016年の入居なので、最長10年間、2025年まで控除が受けられることになっていました。しかし、2018年3月に転勤で家族全員が転居。転居後は住宅ローン控除が受けられません。このあと2020年4月に再入居したとすると、その年の年末まで、それ以降も居住していれば、当初からの残り、6年間、2025年まで再度、住宅ローン控除が受けられます。2018年、2019年の2年間は控除を受けられませんが、その分の延長はなく、2016年の適用開始から10年ということになります。
ただし、再度の適用を受けるには、あらかじめ手続きをしておく必要があります。転居する前に、「転任の命令等により居住しないこととなる旨の届出書」と、税務署から交付された「年末調整のための住宅借入金等特別控除証明書」、「給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書」の未使用分を税務署に提出しなければなりません。再入居して、再度住宅ローン控除を受ける最初の年は、あらためて自分で確定申告が必要です。
転居以外で、住宅ローン控除が受けられなくなる場合
ここまで、転勤などで転居し、住宅ローン控除を受けられなくなるケースを紹介しましたが、この他にも、控除が受けられないケースがあります。- 取得後、一度も本人、家族が居住していない場合
- ローン借入をしている本人が死亡した場合
ローン借入をした本人が死亡した場合は、その日まで引き続き居住していたのなら、その年の控除を受けることができますが、翌年以降は控除を受けることができません。ローン借入をした本人が死亡のケースでは、ほとんどの場合、団体信用生命保険によってローンは相殺され、控除すべきローンがなくなるので、その時点で住宅ローン控除の適用から外れるからです。
災害で住めなくなった場合は、住宅ローン控除を受け続けられるようになった
地震などの災害によって、住居が焼失、居住できなくなった場合、従来は住宅ローン控除を受け続けることができませんでした。住宅ローンは残っているのに、住宅ローン控除を受けられない、そんな悲惨なことになるのも、「12月31日まで引き続き住んでいること」という条件があるためです。東日本大震災によって、被災した方々は、まさにこのケースにあたり、非情にも家はなくなり、住宅ローンは残り、住宅ローン控除を受けることすらできなくなる。そんな状況に陥っていました。この時は、被災後、約1カ月後に特例が制定され、激甚災害の場合は、住宅ローン控除を継続して受けられることになり救済されました。
こうしたことを受け、平成28年度の税制改正で、災害によって居住できなくなっても、住宅ローン控除を引き続き受けられることが恒久化されました。また、再建支援法適用者が家屋の再取得をした場合には、災害前の住宅にかかる住宅ローン控除と、新たに取得した住宅にかかる
住宅ローン控除を重複して受けられるようにもなっています。
税金の取り扱いについては、さまざまな手続き、特例措置、重複して利用できるもの、できないものがあり、複雑化していますので、迷ったりわからないことは、税務署に相談するとよいでしょう。
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